新潟の低山[3]、ドンデン山-金北山-白雲台(2008.6.16-17)


☆まえがき
    大佐渡山脈は雪融けのあとに咲く花が素晴らしいと言う。
ドンデン山から金北山への縦走は昨年来の宿題で、5月のうちに行きたかったのだが、あいにく悪い風邪につかまって出かけられなくなった。
6月も半ばとなり、花は期待できない時季になってしまったが、足腰が立つうちに、めぼしい山はひとつでも多く歩いておきたいと言うことで、敢えて出かけることにした。

  実際に歩いてみた大佐渡山脈は素晴らしかった。
最高峰の金北山が1172.1m、 大部分が900m 台の低山縦走ルートだったのだが、まわりを海に囲まれて高度感は十分。
風衝で形成された砂礫の頂稜に発生する霧が旗雲となって靡き、まるで飯豊か朝日の頂稜を歩いているかのような気分を味わった。
大佐渡銃走路の核心部    (画像クリックすると拡大)
☆行動記録とルートの状況
6月16日
<タイム記録>

    弥彦駅[12:20]=吉田[12:36]=[13:35]新潟[13:55]=(連絡バス)=[14:11]新潟港[14:55]=(ジェットフォイル船)=[15:55]両津港(16:00)=[予約Taxi \4000]=(16:30)ドンデン山荘

◆昼前、弥彦山に登ったあと新潟駅に向かい、シャトル運行バスで佐渡行きジェットフォイル船が出る港の埠頭に行った。
ジェットフォイルはボーイング社のライセンスで川崎重工が建造した水中翼船で巡航速度80Km。  新潟と佐渡を1時間で繋いでいる。
新潟港を出るあたりでは、右手に残雪を頂く朝日連峰が、そして左手には角田山と弥彦山が見えた。
  山の上にあるドンデン山荘へは5月中運行されるバスが利用できないので、山荘から手配してもらったタクシーで上がった。
協定運賃で4000円。
ひとりだと割高だが、3-4人のグループならバスと同じになる。

  走りながらドライバーに色々と山や島の様子を話を聞かせて貰った。


  30分ほどで登り着いた山荘は2004年5月に新装オープンしたものでまだ新しい。
2段ベッドの4人部屋が少々狭苦しいので何日も滞在するには向かないだろうが、食事はよく、入浴もできる。

まわりは高原状のもと放牧地で、展望が素晴らしく、沢山の花が咲いていた。
  前の道路の少し先まで行くと手前のマトネから頂にレーダドームがある金北山までの縦走ルートの起伏が良く見えた。

この夜は、ほかに客がなく、至って静かな泊まりだった。
暗くなったあと、両津のあたりと、海上のイカ釣り舟と思われる明かりと、綺麗な夜景を楽しみ、早い時間に寝た。

6月17日
<タイム記録>

    ドンデン山荘(7:15)-尻立山(7:41)-ドンデン池(7:55)-県道佐渡縦貫線(8:10)-縦走路入口(8:05/10)-青ネバ十字路(8:25)-マトネ(9:05/15)-石花越(9:35?)-イモリ平(10:35)-天狗の休場(11:05/10)-役ノ行者跡(11:50)-カガミ池(12:00/10)-金北山(12:45/13:15)-水場(14:20/25)-白雲台(14:35/40)=[予約Taxi \5000]=(15:10)両津港[15:30]=(ジェットフォイル船)=[16:30]新潟港[16:40]=(連絡バス)=[16:54]新潟駅[17:13]=(Maxトキ#340)=[19:20]東京=大手町=宮崎台

  天気予報は晴れだったが朝霧が出て一見曇り空になっていた。
ロングルートではないが、ノンビリユックリ歩きたいと思ったので朝食を早め出してもらい、早発ちした。

  山荘のすぐ先から左手の山に上がる登山道は泥濘対策のためかコンクリート舗装になっていた。

  稜線に上がるとシャクナゲが咲いていた。
一年おき周期の外れ年か、蕾をつけていない木が多いようだった。

  金北山に背を向けて歩き、潅木の間から草原の尾根に出ると視界が広がった。
朝霧が流れる中に雪畑山、金剛山方面の連なりが見え隠れしていた。


  標柱の立つ尻高山に登りつくあたりで霧が晴れてきて頭の上に青空が広がった。

  頂上を越して行くと左下にドンデン池とキャンプ場の小屋が見えてきた。

  池の脇まで進んだ所で鋭角に折り返し、池の対岸をもとに戻るような形で歩いた。
池は水が枯れ湿地状になっていた。

  ドンデン池の排水路を渡って対岸に上がると林道の末端に出た。

  すぐ先は県道佐渡縦貫線だが、早朝から登ってくる車はなく、時折、鳥の鳴き声が聞こえてくるだけだった。

  県道に出ると右前方にマトネ(937.5)が見えてきた。
空は晴れ上がったがマトネの頂上付近には霧がまつわりついていて付近の尾根の様子は良く分からなかった。

  車道を5分ほどで縦走路入口に着いた。
出発してちょうど1時間経っていたので道端にザックを下ろして休憩した。


  休憩を終わって縦走路に入ったところは林道で、青ネバ十字路に向かって大きくうねりながらごく緩やかに下ってゆく。

  崩壊地か何かを迂回する所を過ぎるとすぐに青ネバ十字路に着いた。

  十字路から先は徐々に登りとなった。
新緑の自然林が綺麗だった。

  かなりの急登を抜け、潅木の間を進んで行くとマトネ頂上の切り開きに出た。



  西方の金北山に向かって開けた芝生に腰を下ろして休憩した。


  右手に日本海の海原が広がっていた。

  1000m を下回っている稜線だが高木がなく、笹と低潅木に覆われているため広い視界が得られる。
  ただ、海から吹き上げてくる風が尾根筋に霧を発生させ、それが旗雲のように懸かっているため遠くが見えず、金北山の在り処もよく分からなかった。

  マトネから20分ほど緩く下っていったところが石花(イシゲ)分岐で、右下の沢窪に下って行く道が分かれていた。
石花ルートは雪融けあとの花がとても綺麗なようだ。
次に来たときにはぜひ歩いてみたい、と思った。
 

  石花分岐の先には一部高木の中を歩く所がある。
山の高さから言ってこの程度の林になっている方が普通ではないかと思った。

  イモリ頭(縦走路中間点)と記した道標の立つ所を通った。

道標から5分ほど先で潅木の間から出ると前方の視界が広がった。
日本海から吹き付ける風による風衝か、頂稜の右側が裸地になり、高山的な景観を呈し、とても1000m 内の稜線とは思えなかった。
(画像クリックすると拡大)

  相変わらず霧が出ているがときどき隙間ができるようになって金北山頂上が見え隠れし始めた。

携帯トイレ用の囲いがあるイモリ平での小休止を挟んで小刻みに登り続けて行くと天狗の休場と記した標識の立つ小ピークがあった。
中年の男がひとり休んでいた。
(画像クリックすると拡大)
  小屋を出て以来はじめて出遭った人だったので、少し離れたところにザックを下ろして暫く話をした。
  佐渡の人だが金北山は始めてで、シャクナゲを見に来たのだと言った。

  ドンデン山の方はどうでした、と聞かれたので、外れ年みたいで花をつけている木は少ないけれど、いくらかは咲いましたよ、と話した。

  休み終えて歩き出し、登りに掛かるところで振り返ると男はまだポツンと座っていた。  
  天狗の休み場からひと登りで樹木の間に入った。
このあたりから頂上に達するまで、緩急を繰り返しながら約200m 登る。

  ひと登りしたところに直登ルートと役ノ行者ルートの分岐があった。
険路は避けたかったし役ノ行者がどんな所か興味もあったので左手の一般ルートを進んだ。

  暫く山腹をトラバースして行ったあとで尾根を乗越したところに役の行者を象った石像が立つ小広場があった。

  あとで下山のタクシードライバーに聞いた話だが、かつて金北山は女人禁制だったという。
また、男の子が7歳になると父親に連れられて金北山に登り、登頂の証として石楠花の枝を持ち帰るのが習わしだったという。

  役ノ行者から暫くは平坦な地形が続き、所々に池塘がある。
林の上に頂上のレーダードームが近付いてきた。





  下は鏡池だが、まわりが開けて明るい雰囲気の池塘だった。
ただ、ワタスゲが生い茂って "鏡" とは言いがたい状態になっている。

  ふたつ目のあやめ池を過ぎると本峰への登りになる。
肩のピークの右肩に向けてかなり急な斜面をジグザグに登り上げ、稜線に上がるとすぐに横山登山口から上がってきた道が合わさる。

  少しの間緩やかな尾根を進んで頂上直下に達したところから最後の登りに掛かると左手に妙見山方面の稜線が見えてきた。

  レーダードームを囲む柵の下の道端にはミヤマオダマキの大群落があった。
茶紫色で地味だが味わいのある花だった。


  レーダードームの後ろ側にヒッソリと金北神社の社殿があった。
佐渡島の守りの象徴なのに、頂上から脇に押し出されているのが痛々しい。

  佐渡の神を拝んだあと、社殿の脇で休もうと思ったがレーダーの音が煩るさくてどうも落ち着かないので先に行ってみた。

  レーダー基地の柵に沿って参道が設けられ、その入口近くには一対の狛犬が据えられていた。
両津港を覆う雲を見下ろして、雲上の狛犬だった。
(画像クリックすると拡大)

   あと僅かで夏至が来る時期の強烈な日差しを避けたかったが、手近な所には木蔭がない。
仕方なく、参道入口に立つ石灯籠の蔭に入って飲み食いをした。

  前方にこれから歩く妙見山から白雲台への尾根が見えている。
自衛隊が管理する車道が通っているのでどうという事もなさそうだが画面左下隅近くに見える白雲台までは結構な道のりがある。
金北山から白雲台(左端)への尾根    (画像クリックすると拡大)

  金北山から白雲台までは1時間15分くらい見ればよいと聞いていたので時間を見積り、3時15分に頼んである迎えのタクシーの時間をかなり繰り上げた方が良さそうだと思った。

  レーダードームの近くでは携帯が繋がらなかったのでもう少し行ってからにしようと、歩き出したが少し歩いた所から振り返って見ると、このレーダ基地の規模が意外に大きいことがわかった。

  北ヶ岳の名がある1064m 峰の先には小規模なブナ林があった。

  金北山から1時間ほど歩いてレーダーアンテナが立つピークをまわり込んで行ったところにある広い鞍部はマツムシ平と呼ばれているようだが、大分遠くなった金北山が高く見えた。

  道路の補修をしている人が携帯を弄っていたので聞いてみたらこのあたりまで来れば大抵繋がるというので、近くの日陰に入ってタクシー会社に連絡した。  
  そこから少し歩いた所にレーダ基地隊員の宿舎と思われる建物があったが、そのすぐ先にある給水施設で過剰水の引き水がパイプから流れ出ていた。
喉を潤し、顔や腕を漱いだあと飲んでみたらとても美味しかった。
家に持ち帰るのと帰りの乗り物で飲むのとのため、テルモスとPET瓶に汲んだ。
  まもなくゲートを通り、戸締めになっている白雲台に着いた。
時間の見積もりはドンピシャだったようで、待つ暇もなく同時にタクシーが上がってきた。
両津港までのタクシーは協定運賃で5000円だから、3、4人で利用すれば十分にリーズナブルだ。

  早い時間に山を降りられたお蔭で予定より1時間早いジェットフォイルで新潟に渡り、程よい時間に家に帰りついた。
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☆あとがき
    花季の過ぎた金北山はどうかと思ったが、山自体が素晴らしく、大いに満足した。
ドンデン山の山荘も良い小屋だった。
来年の春の花盛りには、ぜひ再訪したいと思っている。
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