西上州 高井戸、大沢峠から牛伏山 (2016.9.25)


☆期日/天気/山行形式: 2016年9月25日(曇) 市中ホテル2泊3日単独山行初日の藪ルート探訪
☆地形図(2万5千分1): 藤岡(宇都宮15号-4)、上野吉井(長野3号-2)
☆まえがき
    去年から今年の春までの間に行った数次の山行により、西上州 吉井・甘楽南山稜線の焙烙峠から大沢峠までの全区間トレースを達成できました。

  今後の楽しみは、季節を選んで南山の要所を訪ねるのと、周辺の地域を探訪することですが、その手始めとして、大沢峠から牛伏山へ連なる尾根筋を訪ねてみることにしました。

  地形図を見ると、東西に延びている南山の尾根筋が東端に近い所で反時計回りに湾曲して北に向かい、大沢峠の先で牛伏山の頂稜と "T字形" に繋がっているのが分かります。

  この不思議な尾根の繋がり様の "現物" を確かめてみたいと思いました。
また、大沢峠の南寄りにある山上集落 高井戸は、弘法清水と呼ばれる霊水の里として有名なようです。
こちらも、この機会を活かして訪ね、名水を味わってみたいと思いました。

  9月も下旬に入って残暑も和らいできたので、これらの願いを果たすため、高井戸、大沢峠から牛伏山への尾根を伝いにゆくことにしました。
牛伏山では、南面の下部を横断している八束林道から頂上へ直上するマイクロ・バリエーション・ルートを試みることになります。

  結果的には狙っていた牛伏山南尾根ではなく、その西側の谷窪を登る事となったのですが、 GPS ツールの助けと山勘のお陰で、無事に登頂できました。
小さな低山の細やかなオフトレイル山行でしたが傘寿を過ぎた老いぼれハイカーには過分の山歩きとなり、存分な達成感が得られました。

牛伏山展望台から妙義。浅間山方面    (画像をクリックすると拡大)
☆行動時間
   宮崎台[5:47]=大手町=東京[6:52]=(アサマ601号)=[7:45]高崎[7:54]=(八高線)=[8:08+3]群馬藤岡[8:36]=(上信観光バス上平行)=[9:04-2]黒石手前高井戸入口(9:03)-高井戸下T字路(9:35)-弘法清水(9:37/51)-観音像(9:53/54)-地蔵堂(10:00)-天王社(10:05/10)-ゴルフ場縁のT字路(10:10)-前回山行取付点(10:16)-大沢道出合(10:23/25)-八束林道Y字路(10:41)-牛伏山南尾根取付き点(10:45)-牛臥林道(11:26)-牛伏山肩T字路(11:34)-琴平社殿前(11:35/12:00)-牛伏山頂上(12:04)-見晴台(12:36)-赤谷谷(12:50)-赤谷水流徒渉点(13:02)-(13:20)牛臥ドリームセンター=(Taxi)=吉井駅=(上信電鉄=[16:12]高崎[16:36]=(JR八高線)=[16:50]群馬藤岡{藤岡第一ホテル}

☆ルートの概況  

  現地に2泊する山行の初日でしたが下山しあとに墓参をすることにしていたので十分な時間を確保するため、早朝の新幹線で出発しました。

  高崎で八高線に乗り継いで早い時間に群馬藤岡駅に到着。
駅前を8時半過ぎに出る上平行バスで日野谷に向いました。

  奥日野から流れ出している鮎川の谷に入ったばかりの所にある黒石集落の手前から西側の山に上がってゆく舗装路が分岐している所が高井戸の入口です。

  角の電柱の脇に 「霊水 弘法清水」と記した看板が立っています。

  弘法清水はこの地方では知られた名水のようで、「高井戸」と言う地名もこの湧水に由来していると思われます。


  谷沿いの舗装路を登ってゆくと右上に人家が見えてきました。

  山に突き当たった所が左のようにT字路になっていていましたが左へ行く道は草生し、廃道になっているようです。
右折して緩やかに登ってゆくと先刻見えた人家の入口を通り過ぎ、高井戸の集落に入りました。

  集落に入るとすぐ、左側の斜面に沢詰めの溝があり、岩場の前に井戸の覆屋らしい小屋がありました。

  軽トラックが来ていて運んできた幾つものポリタンクに水を汲んでいました。
水汲みをしている人に聞いてみたら、谷向いの椚原でも良い水が出ているのだが、こちらの方が水量が多いので汲みに来ている、と言うことでした。


  水汲みが終わったトラックが走って行ったあと、引き水のホースから出ている水を飲んでみると、なるほど思う味の水でした。

  井戸小屋の脇には弘法大師の祠、庚申塔なども並んでいて、この水がただの清水として利用されているだけでなく、信仰の対象にもなっている事が分かります。

  名水で喉を潤しながら休憩したあと、集落の中へ進んでゆくと道端に観音像が立っていました。
割と新しい等身大の石像ですが、日常的に詣でる人がいるようで、生花が供えられています。

  山畑の間に散在している人家は無住になっているのが多いようで、人気が感じられませんでしたが、一軒だけ庭先に軽トラが停まっている家があり、まだ住んでいる人がいる事が分かりました。

  集落を通り抜けて行った先で尾根の端を回り込もうとする所の道端に "天王社" と記した標識が立っていました。
小道を上がってみると見晴らしの良い小平地に左のような社殿があり、行く柱かの神様が祀られていました。
 
 
  天王社から僅か進んだところにT字路がありました。
突き当たりの向こう側はゴルフ場になっています。

 
 
  T字路を左折して右下にゴルフ場を見ながら歩いてゆくと左側の山の尾根が低くなってきて道路との高度差が4~5m ほどになります。

  今年の春にここへ来たときは、ここから尾根の背に上がって左手の急登を経て尾根に上がり、小梨山に登頂したあと小梨峠まで尾根を伝いました。

  尾根を回り込んでゆくと行く手に牛伏山の稜線が見えてきました。
牛伏山は小さな山ですが関東平野に臨んで広い視界が得られるため、お城の形をした展望台だけでなく、テレビや電話の電波塔など、いろいろな人工物が頂稜上に設置されています。

  行く手の右下にゴルフ場のクラブハウスが見えてきました。
南向きの斜面で、山に囲まれていますから上州名物の空っ風が当たらず、冬でも暖かくプレーできそうです。
 
  吉井の大沢から登ってきた道路と出合いました。
前の山行ではでコミュニティーバス終点の東谷から歩き出し、大沢の集落を通り抜けててここに上がってきました。 
 
  山の北側に回り込んでゆくと両側から茅が覆い被さって道幅が狭ばめられ、舗装路なのに山道のようになりました。

  牛伏山が正面に見えるようになってきました。
電波塔が立っている天辺からこちら側へ派生している尾根を直登する所がこの山行のポイントです。
 

  一応舗装路なのですが、ふた筋の轍のほかは舗装を突き抜けて草が伸びています。

  牛伏山頂上から派生している尾根の端に突き当たった所で八束林道と出合いました。

  Y字路を左手に入って僅か進むと右上に尾根の鞍部が見えてきました。
予め地形図を精査したところでは、この鞍部から頂上向かって尾根の背を直登すれば、最悪でも頂上直下を横断している林道に上がれる、という目論見を立てていました。
地元の少数の物好きが歩き回っている山域だから踏み跡やコースマークくらいはある筈と予想していたので山側を観察しながら進んでゆくとしっかりした道が見つかりました。
コースマークはないのにとてもしっかりした道なのはちょって不自然かなぁ、と感じましたが、シメシメと言う気分で、ひとまず踏み込んでみました。

  山に入って僅か進んだ所に水が滲みだした窪地がありました。
山に住んでいる動物がときどき訪れるヌタ場に違いありません。

  明瞭な道形が続いているのは良いのですが、右手の尾根の方には向かわず、左手の沢窪の方に向かってまっすぐ進んで行くののはちょっと不味いかなぁ、と思うようになりましたが、とにかく行ける所まで行ってみようと前進しました。
 

  やがて、谷窪の中の崩れ気味の斜面にコンクリートの治山擁壁が段々に築かれている所に入りました。
  コンクリート段の間は湿ったグズグズの急斜面でしたが、まばらに灌木が生えていて人(か動物?)が登り降りしている形跡もあり、なんとか登って行けないこともなさそう、と思いました。



  足場が悪くグズグズなのに苦労しましたが騙し騙し高度を上げて行き、どうにか林道の擁壁の裾に登り着きました。
すぐ上にガードレールがあって、あと3~4m かで林道に上がれる所まで漕ぎ着けたのですが路肩のコンクリートの壁が簡単に登れないのに困りました。

    石垣に見せかける格子状の浅い溝があるだけで、単独の年寄りが登るには少々難しすぎます。

  確実に登れる所を求めて右手にある尾根の背へ向かってトラバースして行ったら水抜き穴に枯れ枝が差し込んでありました。
これを手がかりにせり上がれば路肩に手が届いてなんとかできるかも、と思いましたが枝がとても古くなっていて体重を掛けるとポキント折れてしまう可能性がああります。
  もうすこし安全に登れる所がないものかと、更に右手へトラバースしてゆくと、トレースし損ねた尾根の上端部と思われる所に大岩が露出していました。
すぐ脇に灌木が生えていたのでそれも利用して露岩を攀じ、あっけなく林道に上がることができました。
 

  松の枝の向こうに荒船山  (クリックすると拡大)

  林道のすぐ上に頂稜が見えたのでこちら側も直登できる所はないかと見て回りました。

  少し西に寄ると松の木の先の方に荒船山が見える所があったりする林道を 100m ほど行ったり来たりしましたが、この一帯は高さ10m 超のコンクリート吹付け壁になっていてどうもなりません。

  仕方なく林道を右手へ進んでゆくとすぐ、頂上東肩の頂稜に上がり、北面から登ってきた舗装車道とT字に出合いました。 

  関東平野と榛名山  (クリックすると拡大)
 
  左折して頂上に向かう所では左右に視界が開け、良い眺めです。
右手は関東平野で、奥の方に榛名山などの山並みが見えています。

  大沢峠から小梨峠の連なり  (クリックすると拡大)

  左手は、谷向に並行する小梨山の尾根が高く見えます。
前回、大沢峠からこの尾根を辿ったとき、終りに近い所で突き当たった小梨峠東側の小岩峰も指摘することができました。

  頂上の琴平神社に着きました。
藪ルートを無事に突破して登頂できたことを感謝したあと、神殿入口の石垣の上にザックを下ろしました。

  考えてみれば海なし県の群馬の山の上に瀬戸内の海運の神様が祀られているのは不思議です。
山の形が舟に似ているからなんでしょうか?


  神社の向かい側に鐘楼があります。
1回だけなら撞いて良いという掲示があるので撞いてみたら思いがけない大きな音で鳴り、長い余韻が残りました。 

  神社のすぐ後ろに大きな電波塔があります。
機器棟入り口の脇に取り付けてあるプレートに、NHK テレビと放送大学の中継所である書いてありました。

  電波塔に後ろに回り込んで行った所にこの山の真の頂上がありました。
「牛伏山 490.5m」と刻んだ黒御影の石碑が大石の上に立てあります。

  頂上から西に延びている頂稜を伝わって下山しました。
東尾根は、地元小学校の遠足で、北面の一般ルートは現役を退いたあとでもう一度登った時に通りました。

  西尾根ルートはよく手入れされて歩きやすく、要所に道標や「牛伏山登山道」と記した標識板がありました。

左前方の林の隙間を通して八束山が見えるようになりました。
大きな露岩を乗越すとすぐ林道を横断。
更にもうひと下りしたところにふたつ目の林道交差点がありました。
 

  林道向かい側の入口に木の幹に「熊に注意」と記したポスターが取り付けてありました。

  小梨峠北面あたりたりからこの辺にかけての谷間は自然林が広がっていて、山の動物にとっては居心地が良さそうです。
可成の数の熊や猪が住んでいるに違いありません。

  左手から回り込んでゆくとコブに着きました。
「見晴台」 と記した古い標識板があります。

  大沢峠から小梨峠の連なり  (クリックすると拡大)

  周りに灌木が茂って視界を妨げていますが妙義、浅間と上信国境の稜線が見えます。

  展望台の先で右手にまわり、尾根を乗越して下ってゆくと赤谷の谷の上部に入りました。
ヤブの中に「牛伏山自然歩道」と記した看板が立っています。

  沢を下って行って道が水っぽくなって来た所に歩道の交差点があり、頂上の西から下ってきた登山道と合流しました。
行く手の道は、左手の赤谷林道乗越に登ってゆく道と、右手の沢沿いに下ってゆく道と、ふた手に分かれています。

  沢沿いの道を選び、右岸の非舗装林道を進んで行くと左のような橋があって左岸に渡りました。

道の左側は山畑で、前に来たときにはミョウガ畑だったような記憶がありますが、今は耕作が放棄され、道端に彼岸花が咲いていました。

  にわかに幅が広がり歩き易くなった道を進んでゆくと行く手に牛臥ドリームセンターが見えてきました。

  ドリームセンターから見た牛伏山  (クリックすると拡大)

  谷間の園地の先を僅か登り返してドリームセンタの脇に上がったところで振り返ると、いま越えてきた牛臥山が大きく横たわっていましは。

  牛臥ドリームセンターはゴミ焼却場の排熱を利用した入浴・宿泊施設です。
30年ほど昔の建物ですが、見晴しのよい浴場と、手頃な値段で美味しい田舎料理が食べられる食堂とがあり、なかなか居心地の良い所です。
  7路線運行されている町営コミュニティーバスの車庫が同じ敷地内にあって、すべての便がドリームセンター前から始発するのが便利です。 

<ルートの詳細>




  ヤマレコの山行報告





  ルートマップ



  GPX ダウンロード

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☆おわりに

   名水の里高井戸を訪ねたあと、大沢峠を経て牛伏山へ向かい、頂上南面直下の沢窪を直登して登頂。
吉井南山東端部のトレースを完結しました。
  登山者もめったに立ち入らず、たまに林道ライダーが通るくらいと思われるごく地味系の無名低山域ですが、登り上げた山の頂稜から、少年時代を過ごした懐かしい町と、その周りの山並みの展望を楽しみました。

  下は、昨年から今年にかけて探訪した吉井・甘楽南山の全体ルートマップです。



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