西伊豆歩道[2] 井田-大瀬崎-江梨 (2016.11.1)


☆期日/天気/山行形式: 2016年11月1日(雨のち晴) ホテル泊 単独トレイル・ウオークの2日目
☆地形図(2万5千分1): 達磨山(静岡3号-3)、大瀬崎(静岡2号-4)
☆まえがき
    前日に土肥から戸田まで歩いて、西伊豆歩道の現況が分かりました。
もとはかなりの費用をかけて立派に整備された歩道だったが歩きに来る者が少ないため、手入れもあまり行われないまま荒廃が進み、所々にかなり歩き難い所ができていますが、各コースの始/終点には分かりやすいイラストマップ看板が立ち、要所に分かりやすい道標が立っていてルートは明瞭です。

  2日目の朝は雨でしたが8時ころまでに止むという予報だったので大した支障もなく歩けるだろうと思っていたのですが、朝飯時になっても本降りが続いていて、一向に止んでくる気配がありません。

  戸田にはタクシー会社があるから、それを利用して大瀬崎まで行ってしまうか、あるいは行程の前半となる井田までスキップしようかなど、あれこれ考えながら朝食を食べはじめたところ、戸田から井田を経て江梨まで予約制乗合タクシーが運行されているからそれを利用すると良いのではないか、とまかないの女性が教えてくれました。

  ありがたい情報をもらえたので、すぐに 8時50分の便の予約をお願いし、前半の井田までの行程をスキップすることにしました。
  幸い、雨の方も予報より1時間あまり遅れて止んできて、井田の明神池のあたりから先は雨上がりの景色を眺めながら歩いて大瀬崎に到達できる事となりました。

  大瀬崎をひと周りしたあと江梨へ向かう最後の行程では、見る間に雲が消えていって青空が広がり、西浦江梨の富士ビュースポットからは、新雪で薄化粧した富士山が、駿河湾の向かい側の雲間に現れて来るのを見ることができました。

西浦江梨富士ビューポイントで富士山と対面    (画像をクリックすると拡大)
☆行動時間
        戸田宿舎[8:50]=(戸田-江梨乗合タクシー)=[9:05]井田バス停(9:30)-井田明神池(9:44/48)-井田富士展望所(9:55/10:13)-井田車道出合(10:25/30)-県道/井田コース終点(10:35)-井田トンネル(11:22/29)-大瀬崎入口(11:40/12:00)-東屋(12:02)-138m峰(12:07)-車道末端(12:14)-大瀬崎出口(12:39)-大瀬崎神社(12:48/57)-神池(13:00/02)-大瀬崎灯台(13:06)-ご神木ビャクシン(13:08)-与謝野鉄幹歌碑(13:13)-大瀬崎神社(13:15/30)-大瀬岬バス停(13:45)-富士見台バス停(14:00)-富士見台園地(14:04/11)-(14:45)江梨バス停[14:54]=(東海バス)=[16:06]沼津駅[17:05]=(東海道線)=[17:10]三島[17:56]=(ヒカリ474号)=[18:22]新横浜=あざみ野=宮崎台

☆ルートの概況
   乗合タクシーは各地の山間部と同じで9人乗りジャンボタクシー型の車両を利用したものでした。
戸田から井田、大瀬崎(入口)を経て江梨までの区間に毎日5便の時刻表が設定されていて、定刻1時間以上前に予約があった便のみ運行されます。
江梨と沼津の間には毎日12便の路線バスがあります。
公共交通機関的にはひどい僻地と思っていた大瀬崎、井田も、さほど不便な場所ではなかったことが分かりました。

  井田のバス停はもと学校の校庭だったのではないかと思われる広場のフェンスの脇に立てられた小屋掛けの下にありました。
向かい側に消防署の建物が立っています。

  雨の降り方が徐々に弱くなってきたので、歩き難くないくらいに小降りになるのを待ちながらゆっくり雨中行動の支度をしました。

  バスがきた左手の方には井田神社の鳥居が見えます。

  海の方に向かって歩き出してとすぐの道端に西伊豆歩道の道標が立っていました。

  田んぼの中を進んでゆくと道が二股に別れ、左手に進むと明神池、と記した道標が立っています。

  歩いてきた方を振り返ったのが左の写真で、大きな谷の出口に来ている事が分かります。
雨は上がってきたものの、雨雲はまだ山にかかっています。

  池の端に着きました。
ポンプ小屋の脇に井田コースの絵地図を描いた看板が立っていて、その横手に歩道橋が架かっています。

明神池    (画像をクリックすると拡大)

  橋に上がると左手に池の水面を見渡せ、その先には、この日にスキップしてきた戸田との境の山が並んでいます。

  池を渡った先には黒松の大木が林立している森がありました。
海と池の間の狭い土地に色々な植物が繁茂しているのが不思議でした。

  森の端に出ると防波堤があり、海の向こうに西伊豆海岸の険しい崖が見えます。

  小さな埠頭と向かい合せに公衆便所があり、その横手に「富士山ビュースポット・井田」と言うタイトルのイラストマップ看板が立っていました。

  公衆トイレの脇から僅か入った所に食堂や民宿が並んでいました。
この辺りはダイビングスポットとして有名で来る人が多いようです。

  井田の集落の中の道は美しい石畳になっていました。
江戸時代に石の産地として有名だった井田の歴史を今に伝えています。

  集落の外れに寺があり、その先で橋を渡った所に鎮守の神社がありました。
もう雨の心配はなさそうだったので、神社の石垣にザックをおろし、雨具をしまい込みました。

神社の先の坂を登ると県道17号線です。
出合いの角に井田民宿組合の看板が出ています。

  左折して県道を進んで行くと左手に井田の田んぼのが見えてきて、その先に駿河湾の海が広がっていました。

  道端に身代わり不動像がありました。
昔、石切り場に祀られていた像をこちらに移した旨の説明を記した立て札が立っています。
危険の多い石の切り出し作業の安全を祈って丁場の脇に祀られていたのだそうです。

  道路が高台の上にあがった所に丸塚古墳群の看板がありました。
海に面した険しい崖の上でなぜ?と思いましたが、海を見渡せる高みを墓所にして亡くなった先祖を葬ったと考えればよく分かります。

  思いがけない広さの平地を通りました。
内陸の山から延びてきた尾根の一部が平らになっている所、と考えれば特に不思議というほどではないのかも知れませんが、急傾斜の山ばかりのこのあたりではとても不思議な感じのする所でした。

  海側に 215m の高みがある所を通り過ぎると井田トンネルが見えてきました。
もとは、トンネルの手前から左手に入り、斜面を横切ってゆく歩道があったようですが崩落とか倒木とかで通れなくなったのか、高い金網のフェンスで塞がれ、進入できません。

  長さ 406m のトンネルは照明があり、両側に歩道が設置されているので安全に通れますが、車が通り過ぎてゆくときの騒音は尋常でありません。

  トンネルを出た所にはゴミ投棄禁止の看板とフェンスがあり、こちら側も出入りができないようになっていました。
 

  トンネルの先へ進んでゆくとカーブがあり、その中ほど道標が立っていました。 

  ガードレールの隙間から入ってみると右手に下ってゆく歩道があり、入口に大瀬崎コース起点のイラストマップを描いた看板が立っています。

  大瀬崎への下降路はやや急な丸太階段から始まりました。
左側は急な崖のため、柵やロープがあります。 

  ひと下りして傾斜が緩んだところに東屋がありました。
常緑樹林に囲まれていて展望はありませんが雨模様の日などには貴重な休み場になるでしょう。

  尾根の上部にある 138m のコブを越えた先では左側が急な崖になっていてその先に駿河の海が見えました。

  崖っぷちのヤブの向こうに山並みが見えました。
多分、薩埵山から浜石岳のあたりでしょう。 

  椿の藪が被さっているところを押し通ると突然、尾根の右下に停まっている小型トラックが見えました。
なぜこんな所に? と訝しんでいたら車の中から人が出てきました。
一見浮浪者のような風体だったので警戒しましたが、近くに仕掛けた罠を見に来ていた猟師でした。

  里山の辺鄙な所で猟師に遭うのは珍しくないのですが、こんな海のすぐ近くまで来ていたのには驚きました。

 

  車が来ていたところから舗装車道になりました。
一度折れ下って僅か進んだ所がT字路になっていて左折。
   

  すぐ先にあるカーブを右に曲がっていった所で左手の山道に入り、僅か登って尾根の背に戻ると潮騒の音が近づいてきました。

明神池    (画像をクリックすると拡大)
 

  間もなく前方が開け、先の方にに見える高みの上に神社がありました。

  右手のコンクリート階段を下って舗装路に降り立った所は大瀬崎の一角でした。
左側は大きな丸石が積み上がった磯浜になっています。



  波打ち際に出て 180°パノラマ写真を撮ったら下のようになりました。
正面は薩埵山、その左手の奥の方は久能山あたりでしょうか?

大瀬崎西岸の展望    (画像をクリックすると拡大スクロール)
 

  道なりに歩いて行ったら岬の反対側に出ました。
こちらは波静かな湾になっていて左手に大瀬崎の集落があります。

  左手は大瀬神社の参道で、石鳥居が立っています。

  参道を進んで社務所の前で折り返し、石段を上がると本殿がありました。
小振りながら重厚な作りの神殿で、堂々とした雰囲気が漂っています。 

  入口の庇を大きな木彫りの龍が支えています。

  社務所の先から左手へ進んでゆくと大きな池がありました。
海の中に突き出た細い岬の池なのに淡水を湛え、沢山の鯉が住んでいるのが不思議でした。

  池の先に "鈴木繁伴館跡" と書いた立て札が立っていました。
鈴木氏は熊野水軍の分かれで、足利氏満から船大将に任ぜられた南北朝時代の武将だそうです。
大瀬崎の港にはかつて水軍の船溜まりがあったことを知りました。
 

  磯浜に出た所に大瀬崎灯台が立っていました。
何もない灯台でしたが脇の小屋の入口に "防衛省 技術研究本部 大瀬実験所" と書いたプレートが掛けてありました。

ビャクシンのご神木    (画像をクリックすると拡大)
 

  灯台の先はビャクシンの大木林になっていました。
ひときわ大きい木の前に "ご神木" と記した立て札が立っていました。
奥山にしかなさそうな巨木が駿河湾に突き出した狭小な岬に林立しているのは不思議な景色です。 

  岬の先をグルっと回って神社の参道に戻ろうとする所に与謝野鉄幹の歌碑が立っていました。
「船を捨て 異国の磯のここちして 大樹の栢の 陰を踏むかな」 という歌が刻んであります。
 
  社務所の前で小休止したあと参道を歩いて鳥居の外に出ると西伊豆歩道大瀬崎コース終点のイラストマップ看板が立っていました。
 
 
  きれいな弧を描いている海水浴場の砂利浜に出ると対岸に葛城山から沼津アルプスへの山並みが見えました。



低くて小さな山の並びですが "アルプス" にふさわしい険しさがあります。
 

大瀬崎東岸の展望    (画像をクリックすると拡大スクロール)
 

  浜に面してならんでいるダイビングショップや食堂の奥手から坂を登った所に車止め広場があり、その片隅にバス停のポストが立っていました。

  ここのバスは朝早く到着するのと夕方遅く発車するのと2便しかないので、他所から来る者にとってはほとんど利用価値がありません。

  東へ向かって車道を 4Km 足らず歩けば江梨で、そこから沼津駅へは、毎日12便の路線バスが運行されています。

  数軒の民宿の建物を見ながら坂を登って県道17号線に出合いました。

  出合いの少し先に富士見台バス停ポストが立っていて、毎日2便しかない東海バスと、戸田の予約制乗合タクシーの時刻表が取り付けてありました。

  バス停ポストから 300m ほど進んだ所に富士展望広場がありました。
海の方を見ると雲間から富士山が出てきているところです。

西浦江梨富士ビューポイントの眺め    (クリックすると拡大)
 

  見ているうちに雲はドンドン消えて行き、富士山の姿がハッキリしてきました。
八合目あたりから上がうっすら雪化粧の富士山は、なんとなく初々しく見えます。

  天気にはあまり恵まれなかった山行でしたが最後の所できれいな富士山の姿に出遭うことができ、感激しました。

  来見バス停のあたりは谷溝状になっていて斜面がみかん畑になっています。

西浦江梨富士ビューポイントの眺め    (クリックすると拡大)

  後ろを振り返ると青空を背に富士山がスッキリ立っていました。

  地形のせいで道幅が狭められている所がありました。
カーブの後ろから飛び出してくる車を警戒しながら歩かなければなりません。

西浦江梨富士ビューポイントの眺め    (クリックすると拡大)

  道が海辺の近くまで下ってゆくと左手が開け、左前方に葛城山から沼津の方へ連なる山並みがきれいに見えました。 

  入江の奥に向かって右手へ回り込んでゆくと江梨の人家が見えてきました。





  集落の中に入って、川を渡ったところに広場があり、沼津行のバスが停まっていました。
ドライバーに聞いてみたらあと10分で発車と言う返事でした。

  この山行のフィニッシはジャストインタイムでした。
江梨から沼津駅までのバスは1時間10分余かかるロングルートです。
一番後ろのロングシートを占領し、移り変わってゆく西伊豆海岸の景色を楽しみました。

  沼津は僅か2週間前に来たばかりで駅ビルの樣子も分かっていたので2階の蕎麦屋に直行して恒例の下山そばを食べました。
腹が落ち着いたあと、東海道線で三島へ移動し、新幹線に乗りついで帰りました。

<ルートの詳細>




  ヤマレコの山行報告





  ルートマップ



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☆おわりに

   長年の宿題だった大瀬崎探訪でしたが天気が悪くてどうしようかと思ったところ、予約制乗合タクシーが利用できる事を教えてもらい、井田までのアプローチをスキップ。
井田明神池から雨上がりの景色を見ながら歩いて岬の先端に到達できました。

  沼津行路線バスが出ている江梨まで歩く最後の区間では、雲間から姿を現してきた新雪の富士山と対面しました。
初日の戸田から土肥までと、2日目の終わりの江梨から沼津までと、素晴らしい景色のおまけが付いている路線バスの旅を楽しみました。

☆参考 - この山旅全体の Google マイマップ




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