大弛峠から国師ヶ岳・北奥千丈岳 (2016.8.14)


☆期日/天気/山行形式: 2016年8月14日(曇) 単独日帰り山行
☆地形図(2万5千分1): 川浦(甲府6号-1)、金峰山(甲府5号-2)
☆まえがき
    胃手術の影響はある程度克服できましたが加齢による身体機能の低下は免れず、大登りに筋肉が耐えられず痙攣が頻発するとか、高所に泊まると酸欠で頭が痛くなるとか、いろいろな制限が顕になっていますが、夏は熱中症にやられるリスクを避けるため、できるだけ高い山に行きたいものです。

  そうかと言って、富士山や立山のようにポピュラーな山は、海外から来る人達が増えて混雑がひどいので敬遠したいです。
あれこれ探しまわっているうちに、6月はじめから11月下旬までの間の週末に、塩山駅から大弛峠へ予約制バスが運行されているのに気付きました。

  大弛峠から国師ヶ岳、金峰山のあたりは、昔親しんだ山域です。
どちらかと言えば晩秋から早春の間に行く事が多かったのですが、標高が 2300m ~ 2600m 程あるので真夏でも涼しく、快適な山上散策ができるのでは、思いました。

  この夏は小笠原近海の高気圧が発達せず、好天が長続きしません。
この週末の天気予報も芳しくなかったのですが、バスを乗り継ぐだけで大弛峠まで行き着けるのだから、とにかく現地まで行ってみよう。
もし天気が良くなかったら、大垂水小屋で油を売って帰ればいいさ、と割り切って出かけてみたところ、予想外の好天と巡り合わせる幸運に恵まれました。
昔馴染みの尾根筋を楽しく歩き、奥秩父と佐久の山並みの展望を楽しみました。

北奥千丈岳頂上から小川山、佐久の山並み    (画像をクリックすると拡大)
☆行動時間
    宮崎台[6:44]=長津田=八王子[7:53]=高尾[8:07]=(JR中央線)=[9:15]塩山駅/北口[9:30]=(栄和交通予約バス)=[10:11/13]柳平[10:20]=(栄和交通予約バス)=[10:45]大弛峠(10:50)-夢の庭園下の分岐(11:05)-上の分岐(11:13)-五丈岩展望点(11:24)-前国師(11:35)-北奥千丈岳分岐(11:40)-国師ヶ岳(11:48/12:10)-北奥千丈岳分岐(12:17)-北奥千丈岳(12:25/40)-分岐(12:45)-前国師(12:51/54)-夢の庭園分岐(13:08)-夢の庭園(13:14/25)-登山道出合(13:29)-大弛小屋(13:36/14:05)-大弛峠[14:20]=(栄和交通予約バス)=[14:45]柳平[15:25]=(栄和交通予約バス)=[16:02]花かげの湯入口-花かげの湯(16:04/17:05)-花かげの湯入口[17:50]=(タクシー)=[18:04]塩山駅[18:33]=(JR中央線)=[19:44]高尾=[20:02]八王子=長津田=[21:16]宮崎台

☆ルートの概況
   大弛峠方面行きバスは、柳平の先の峰越林道のゲートが開く6月初めから11月下旬までの週末・休日に運行されています。
起点は、塩山駅北口タクシー乗り場の一角に立っている茶色いポストで、通常は塩山から柳平を経て焼山峠までは普通のサイズのバスが運行され、その先は林道を安全に走行できる9人乗りマイクロバスに変わります。

  この日は乗客が少ないとかで、塩山駅前の始発からイクロバスで出発しました。(乗客は7人でした)
町外れにある恵林寺の脇を通過したあと、牧丘の町を通って金桜神社入口を過ぎると琴川ダムを建設する時に整備されたクリスタルラインと呼ばれる山岳道路を走りますが、この道路は昇仙峡の方までつながっているそうです。

  杣口の手前から急カーブを繰り返しながら高度を上げ、谷の左岸の山腹を横断してゆく所は巨木の多い山林で、サワラの学術参考林や「姥のトチ」と呼ばれる大木などがあります。

  琴川ダムの堰堤が見えてきた所からひと走りすると左下に乙女湖の水面が見え、まもなく柳平に着きました。
柳平はかつて金峰山参詣道の中継地だったばかりでなく、水晶やタングステンを産出する鉱山で栄えた歴史がある山上集落です。
  廃校になった小学校の跡に残っている門柱の前で大弛峠行きのマイクロバスに乗継いで走り出すとまもなく峰越林道入口のゲートを通過しました。
  さらにもうひと走りして六本楢峠を越すとその先は荒川の長大な谷の上流部となり、左岸の斜面を横切って曲がり登ってゆくようになりました。
  昔このあたりは、車高の高い四輪駆動車でないと走れない悪路でしたがいまは綺麗に舗装されて快適な山岳ドライブウエーになっています。

柳平から30分あまりで大弛峠に着きました。
峠の近くにはマイカー登山の車がザッと30台ほど停まっていました。
  峠頂上の広場は左の写真のように賑やかで、夏山最盛期の華やいだ雰囲気が漂っていました。

  峠の広場から僅か入った所に大弛小屋がありました。
屋根の上に太陽電池パネルが乗ったほかは昔と同じです。
1980年台のままのレトロな建物で営業を続けている山小屋は今時めずらしいと思いました。

  停めてあった車の数からルートが混雑しているのでは、と心配していましたが、この峠に来る人達のほとんどは金峰山の方に向かうようで、国師ヶ岳へのルートは意外に閑散でした。

  静かなシラベの森の中のルートは木階段が連続し、ひと登りした所で夢の庭園への分岐を通過しました。

金峰山五丈岩遠望    (画像をクリックすると拡大)

  さらにもうひと登りして上の夢の庭園道分岐を過ぎた先から左手に斜上して行くようになると背後が開け、金峰山方面が見えてきました。

ときどき後ろを振り返りながら尾根の背を登っていたら、僅かな時間のあいだ荒川谷の上空を覆っていた雲が吹き寄せられ、金峰山五丈岩が姿を現しました。

  最後にこのあたりに来たのは 1997年でした。
黒平の奥から長い笹藪ルートを道を突破して御室小屋に到達し、片手回しの険を乗り越えて五丈岩に登り上げたのはなかなか達成感のある山行でした。
19年ぶりに五丈岩と再会したことになります。

  花崗岩の塊がゴロゴロしている道を進んでゆくと右手の林の先に北奥千丈岳が見えてきました。

前国師岳    (画像をクリックすると拡大)

  さらにひと登りで小高く開けた前国師の頂上に上がりました。
行く手に国師ヶ岳がこんもり盛り上がっているのが見えています。

  天気予報が芳しくなくて、うまく行っても雲の中。悪くすれば雨に降られるかも、と思って来た山でしたが意外な好天で、上空には青空が広がっています。

  前国師から僅か下って行った三繋平で北奥千丈岳への道を見送って進みました。
シラベの密林に覆われた広々した鞍部は奥秩父の重厚な雰囲気を凝縮したような所です。

  ゆるやかに登って国師ヶ岳の頂上に登りつきました。
大岩がゴロゴロしている高みに立つとすぐ隣にゆったり盛り上がっている北奥千丈岳が見えました。

  甲武信岳の方から縦走してくる者はごく少ないのか奥秩父で三番目の高峰の頂上は至って閑散でした。
  頂上の南側は笛吹川の源流地帯です。
向かい側には黒金山などの山並みが連なっている筈ですが、雲がいっぱい詰まっていて何も見えません。

静かな天辺でノンビリ休憩を楽しみました。

国師ヶ岳の展望    (画像をクリックすると拡大)

  近頃は低山ばかり歩いていて 2000m 超の高山は久し振りでしたが、思ったより順調に登れ、ほぼ標準タイムで登頂することができました。

  時間の余裕がたっぷりあったので長い時間ノンビリ休んだあと、一等三角点標石に別れの挨拶をしました。

  登ってきた道を戻って三繋平の分岐点で左折。
北奥千丈岳に向かうと濃密な針葉樹林の中をまっすぐ、ゆるやかに登って行く道になりました。

  登りついた北奥千丈岳頂上は標高 2601m あって奥秩父の最高点です。

  大岩の天辺に上がると奥千丈岳への尾根が続いている南の方角を除いて広大な視界が得られました。

  金峰山五丈岩は雲の蔭に入ったままでしたが佐久方面はところどころに青空が見えるくらいの好天気でした。
小川山、男山と天狗山、御座山、三国峠付近の県境尾根もあらかた見えました。

北奥千丈岳頂上の展望    (画像をクリックすると拡大スクロール)

  時間の余裕は十分あったのでここでもノンビリ長休みしました。
  下山路の始めの部分の両側は石楠花の密林です。
大弛小屋で聞いた所では花期は7月中旬前とのことでした。
その時期の週末にバスを利用してここまで上がって来れば大した労力もなく豪華な花見ができるでしょう。

  三繋平の分岐で左折するとすぐに前国師頂上に上がりました。
来し方を振り返ると国師ヶ岳と北奥千丈岳が黒黒と並び立っています。 

前国師から国師ヶ岳と北奥千丈岳    (画像をクリックすると拡大スクロール)

  前国師からひと下りで上の夢の庭園分岐に着きました。
時間はまだたっぷり余裕があるので庭園に立ち寄ってゆくことにしました。
分岐点を左折するとすぐ、見晴らしの良い所に出て、木製桟道と階段が連続するようになります。

  急斜面に大岩が積み重なった所は、まバラに生えている立木の高さが低く、広大な視界が得られます。

  金峰山と正対する展望所には野外ベンチが設置されていましたが、あいにくの雲行きで朝日岳までしか見えません。
岩頭に座って雲が切れるのを待ちましたが埒が明きません。

夢の庭園から峰越林道    (画像をクリックすると拡大)

  荒川谷を埋めていた雲が高い所へ上がって中空から上の方が曇ってきたらそれと引き換えに荒川谷の中を見渡せるようになってきました。
大きな谷の左岸の緩やかな斜面を覆う黒木の森の中を峰越林道がうねっているのが見えます。

  積み上がった大岩の裾に「夢の庭園」の看板が取り付けてありました。
  この展望スポットは、大垂水小屋の管理人をしていた小林さんが昭和35年(1960年) に開いたのだそうです。
  右下の方へ繋がっている木製階段を降りてゆくと元の登山道に出合いました。
  「庭園内」もそうですが、このあたりは木製階段と桟道が連続している人工の歩道で、いささか「歩かされている」気分になります。

  様々な人々に安全に歩いてもらうために登山道が整備されていることは理解できるのですが、オフトレイルの藪尾根歩きが好きになっている偏屈年寄りには違和感があります。

  久し振りの山歩きで老化した足腰の筋肉に負荷がかかり、あちこちにマイクロ痙攣が起こりそうな気配になってきました。

  痛みが出てきた筋肉の負担を軽くするため、ストックの使い方と歩き方を工夫しながら下降を続け、大垂水小屋に着きました。
  小屋の中に入って見ると、建物の真ん中を貫通している土間の両側に床が張ってある昔のスタイルはそのままでした。

  甘味系の行動食しか用意して来なかったのでカップ麺を買って食べ、塩分を補給しました。
  近頃は車できて日帰りする者が多く、宿泊するものはあまりいないようですから何時きてもゆっくり泊まることができそうです。

  温かいソバが腹に収まり、休憩も十分にできたので外に出ようとしたところへバスドライバーが 「お客さんが集まったので早目にバスを出しますよ」、と言いにきたので、急いで峠の広場に戻りました。

  峰越林道を走っているのは小型の9人乗りマイクロバスなので、客が集まり次第適時運行し、柳平から先に運行されているフルサイズバスとの辻褄を合わせているようです。
  定刻より30分早い時間に柳平に着きましたが、塩山行のバスは定時運行なので40分ほどの待ち合わせとなりました。

  高燥な山でしたが盛夏の好天日に歩いたのでそれなりに汗をかきました。
塩山行バスを途中下車し、牧丘の町中にある 「はなかげの湯」 に立ち寄りました。
客の大部分は地元の人達だったせいか落ち着いた雰囲気で、温泉の質もよく、とてもよい汗流しが出来たのは良かったのですが、そのあとでトラブりました。

  予約をしていた筈の 「はなかげの湯入口」 を 17:10 に通過する最終便バスが来ません!
いつまで待っても埒が明かないのでバス会社に電話をしたらバスではなくタクシーが来ました。
300円で済む筈の所を 1500円 程もの運賃がかかっただけでなく帰りの中央線列車も1時間ほど遅くなってしまいました。
<ルートの詳細>




 
ヤマレコの山行報告



  ルートマップ



  GPX ダウンロード

  
ページ先頭へ    

☆おわりに

   かなり場当たりな計画で出掛けた山でしたが、予約制バスと、想定外の好天とのお蔭で、奥秩父最奥部の最高点ピークに日帰りで登ることができました。
  軽装でもスローペースでしか歩けなってしまったものの、思っていたより楽に懐かしい山の頂きに登り、思い出がいっぱい詰まった山並みの展望を楽しみました。

  もみじの季節に大弛峠に上がり、甲武信岳まで縦走したあと、千曲川水源の訪ねて梓山へ下山する山行を計画して見たいと思っています。