榛名山 掃部ヶ岳-杏が岳-味噌玉岩 (2014.5.10)


☆期日/天気/山行形式: 2014年5月10日 市中ホテル前夜泊日帰り
☆地形図(2万5千分1): 榛名湖(長野2号-3)
☆まえがき
    以前から気になっていた榛名山外輪山 掃部ヶ岳から南へ派生している尾根筋 杖の神峠-杏が岳-味噌玉岩のトレースに行きました。
掃部ヶ岳から杏が岳までは一般ルートですが、そから先の尾根筋: 1098m峰-味噌玉岩-974.7m三角点-杏が岳林道はガイドマップに破線も書き込まれていない 「外野ルート」 です。
最近のハイキング誌に掲載された山行記録でも、974.7m 三角点以南の尾根末端部で廃林道に入り込んで難渋した記述がありました。
この部分をスムースに歩き抜けるルート・ファインディングができるかどうかがこの山行最大の課題でした。

榛名掃部ヶ岳頂上肩の展望    (画像をクリックすると拡大スクロールします)
 

  時間的な余裕を確保するため、前夜高崎駅前ホテルに泊まり、翌朝早い時間のバスで榛名湖畔(1080)にアプローチしました。
掃部ヶ岳の頂上を越えて南尾根を下降し、杖の神峠(1215)に降り着くまでは眺めのよい尾根ルートでした。
杖の神峠で休んだあと辿った鷲の巣山から杏が岳(1292.3)まで尾根筋も良く整備され、気持ちよく歩ける好ルートでした。

  杏が岳から先は踏み跡も定かでないバリエーション・ルートとなりましたが藪は薄くて地形も分かりやすく、読図力さえあれば割りと容易にトレースできるのではないか、と思われました。

少々頭をひねる必要があったのは、林道に降り立つ手前 500m ほどの部分の始まりでどちらに進むか、方向の選択でした。
尾根の幅が広がった所から小尾根が三方向に分岐しているので、どちらに進むのが正解か、判断しなければなりませんでした。
ここでは GPS も役立たず、山勘を頼りしなければなりませんでしたが、味噌玉岩から歩いて来る間に設定したルールに従い、檜林と自然林の境界を追跡することにしました。
このためにはほぼ直角に右折して進行しなければなりませんでしたが、少し進んだ所で古い石祠の脇を通ると間もなく林道に到達しました。

  杏が岳林道に出た所で左折、2Km ほど歩いて箕輪髙崎道に出たので右折すると、 1Km 足らずの所に一の坊バス停がありました。
一の坊から髙崎へのバスは毎時1本運行されています。
室田ターミナルで10分あまり休憩する時間時間を含んで所要1時間あまり。
高崎からは毎時一本運行されている湘南新宿ライン快速電車に乗って帰りました。
 

☆行動時間
    高崎[8:30]=(群馬バス)=[9:55]榛名湖(9:58)-登山口(10:13/20)-硯岩鞍部(10:36)-掃部ヶ岳(11:15/28)-地蔵岩(11:35)-西峰(11:47)-送電線巡視路分岐(12:04)-耳岩(12:07)-倉渕村鳴石分岐(12:12)-倉渕村鳴石・権田分岐(12:24)-杖の神峠(12:28/55)-鷲の巣山(13:19)-杏が岳石祠峰(13:51/53)-杏が岳山名柱峰(14:00/15)-1098m峰(14:43/46)-榛名神社門前町望見(14:50)-味噌玉岩(15:10)-味噌玉岩南裾(15:13/18)-974.7三角点(15:25/35)-820m圏のコブ(15:45)-石祠(16:05)-杏が岳林道(16:05)-(16:50)下の坊バス停[16:52]=(群馬バス)=[18:06]高崎[18:14]=(湘南新宿ライン)=渋谷=[20:43]宮崎台

☆ルートの概況

  前夜高崎駅前に泊まれば、朝ゆっくり食事をしたあと駅前から出るバスに乗れば程よい時間に榛名湖畔に着きます。

昨年春から榛名湖は頻繁に訪れるようになっていますがこの日はかつてない最高の天気に恵まれました。 

  湖畔道路を歩いて吾妻荘の下を通過するとすぐ掃部ヶ岳登山口があります。
左手に折り返すように土手を登って山道に入りました。
 
  尾根が近づくとまわりが明るくなり、丸太階段が出てきました。

  左折して斜面を斜上、尾根の背に向かって登ってゆくと木製の階段が断続する急登になりました。

  5月連休明けの週末は、新人歓迎山行や学校遠足の時期なのか、県内・近県高校の山岳部と地元中学校の生徒とで大賑わいになっていました。

  お揃いの革登山靴を履いた30人ほどの女子パーティが目立っていました。
どこの学校?、と尋ねてみたら県立髙崎女子高校です、という答で、通称高エスの山岳部ということが分かりました。

  はるか60年ほどもの昔、おなじ町の男子高校の生徒だった少年にとって、高エスの生徒達がとても眩しく見えていたのを思い出し、数秒の間、甘酸っぱい気分に浸りました。



  中高生達の元気に引っ張られるような形で階段の急登を登り上げて行くうちに、なんとなく調子が出てきました。
頂上の肩に上がるとパッと視界が開け、左下を見ると榛名湖が一望でした。

榛名掃部ヶ岳頂上肩の展望    (画像をクリックすると拡大します)
 

  掃部ヶ岳頂上はまだ早春で漸く木の芽が膨らんできたところでした。

  登りついた時はまだ人が少なく、十分なスペースがありましたが、あと数分も経てば大勢の中高生達が登ってきて混雑することが分かっていたので、ひと息入れただけで早々に退散し、杖の神峠へ向かう尾根ルートに入りました。

  掃部ヶ岳頂上南側の急斜面を下り切って尾根に乗ると、ルートは右の方に回ってゆき、西南西に向かうようになります。
尾根は左右非対称で左側が切れ落ちていて、榛名湖、榛名川谷がよく見えます。 

  地蔵岩、西峰を通過して行った先に耳岩の特長ある岩峰がありました。

  耳岩の先に少々トリッキィーな曲がり角がありました。
左のような案内板が立っている所で鋭角に左へ折り返さなければなりません。
素直に尾根の背を進んでゆくと倉渕村の方に下山するルートに入ってしまいます。

  さらにその先で送電線巡視路を見送って笹原の中を下ってゆくと昔盛んだった信仰登山の跡を思わせる不動像と石祠があります。

  石祠を通り過ぎると間もなく、杖の神峠の舗装路に出ました。 

  峠の道端で休みながら喉を潤し、甘い物を食べて糖分を補給したあと峠切通し向かい側から尾根に上がり、杏が岳を目指しました。

  穏やかな尾根の背を30分ほど登って鷹ノ巣山に着きましたが、赤塗の境界標石と樹木に取り付けられた山名板があるだけの至極さっぱりした頂上でした。

  穏やかな尾根の背を進んでいったあとひと登りで杏が岳の北峰に着きました。
石祠がある北峰は南峰より高いから本来の頂上はこちらと思われますが登山道はまだ終わらず、南峰まで続いています。

  ゆるやかに下って浅い鞍部から僅か登り返して南峰頂上に着きました。
ガイドマップに杏が岳と記されているピークはこちらの方で、三角点標石、山名標、石祠、野外ベンチがあります。

  この先は久し振りの藪ルートになるのでゆっくり休憩して英気を養いました。

  杏が岳南面の下り口は藪の隙間があって明瞭で、その先も踏み跡が認められました。
ひと下りした所から傾斜が強まり、急降下になると踏跡がはっきりしなくなりました。
斜面が急になって歩き難くなり、手近の灌木を伝って下り続けるようになりました。

  しばらくの我慢と思いながら灌木渡りを続けていると徐々に傾斜が緩み、やがて広々した鞍部に降り立ちました。
穏やかな春の陽が芽吹きの林を通して射し込んでいて、ムラサキヤシオが綺麗でした。


  最低鞍部から登り気味に僅か進むと急斜面で谷に落ち込んで入り尾根の縁に達し、否応なしに右折しました。
明瞭な尾根の背に乗って進んで行く左下は榛名川谷で、木の間に榛名神社門前の社家町と思われる家並が見えました。

  社家町から山に入るルートが見つかれば短時間でここまで登って来れるかも、と思いました。

  尾根の背を外さないように進んで行き、 1098m の標石を確認しました。

  この頃はタブレット機の GPS が良くなってきているので、画面に大スケールの国土地理院地形図を表示させ、その上で現在位置を正確にチェックすることが可能です。
ただ、サイズが大きくて手塞ぎになるので、ごく安易に歩ける遊歩道や林道以外では画面表示を OFF にした状態でザックに入れて持ち歩き、要所で引っ張りだして直近のトラックと現在位置をチェックする、と言う使い方になります。

  ここでは、間違いなく 1098mに到達していることを確認した上で味噌玉岩までの距離を見積もりました。
  尾根の右側に緩斜面が広がってきて尾根の背の踏跡と平行する別の道形が現れました。
そちらはもと、幅広の作業道だったようで藪もなく歩きやすかったのですが、暫らく進んだ所から右手の方に曲がってゆくような感じになってきました。
尾根の背から離れてしまうと味噌玉岩に行けなくなるので、藪が多くて歩き難いのを承知の上で尾根の背を行く踏跡に戻りました。
  やがて行く手を遮る大岩に行き当たりました。
諸々から判断して味噌玉岩に間違いなしと判断しましたが、少々疲れが出てきていたので岩頭に登るのは止め、大岩の右裾をトラバースして行くて巻き道を選びました。
  味噌玉岩を巻き終えて南側の鞍部に上がった所で長目の休憩をし、疲れを癒やしました。
  この頃、行動食として大福餅を食べる事が多くなっています。
糖分が多いのですぐ血糖値が上がったあと餅の澱粉部分の効き目が出て持続するのが良いと思うのですが 「貧血胃弱は食べ過ぎに要注意」 ということも分かってきました。
  行動中はなけなしの血液が足腰に集中して「動力」を生み出している訳ですが、そこへ大福餅を受け入れた消化器から血液をこっちに回せ、と言う要求が発信されると、両者の間で血液の奪い合いが起こります。
消化器が負けるとダンピング症のような感じになって気分が悪くなるし、足腰が負けると足の筋肉の痙攣が起こりやすくなるようです。
  年を取ると身体機能が低下し、それに伴って起きる小トラブルが増えるのが困りものですが、それと裏腹に山歩きの知恵は増えてきます。
この辺りまで歩いてきて、檜林と自然林の境界を辿ってゆけば良さそう、ということが分かってきたので、踏み跡の有無にかかわらずこの境目を進むようになっていました。 何故か分かりませんがこの境目には沢山のコースマークが取り付けられています。

  もうそろそろ、というタイミングでふと左手を見たら地面に立っている白杭が見え、その横にごく目立たない金属製三角点標識があるのを見つけました。
  ザックから引っ張りだしたタブレットで味噌玉岩南南西約 500m の尾根上にある 974.7m 三角点に相違ないことを確認。

  標識の脇にビニールテープを巻きつけた2m あまりの鉄パイプが倒れていたのを立て直したのですがこの辺りはとても地面が柔らかくズブズブと入ってゆきました。
思い切り体重をかけ、できるだけ深く差し込んだのですが、何ヶ月倒れないでいられるか?
 
  三角点の先をひと下りすると幅広く平らな尾根の背になりました。

  山腹を横切っている杏が岳林道まであと3、400m まで降りてきた所でかすかな高みに上がると前方に自然林が広がり、藪さえ押し分ければどちらへも下って行けそう、と言う状況になりました

  とにも角にもここまで歩いてきたルールに従い、檜林と自然林の境を進んで見ようと、ほぼ直角に右折。
 
 
  檜林の境を進んで行くと踏み跡はほとんど分からなくなりましたがそれに入れ代わるかのように沢山のコースマークが見られるようになりました。
 
  やがて明瞭な尾根の背に乗り、踏み跡も明瞭になってきました。
「いよいよ終わりかなぁ」と思いながら進んで行った所にヒョッコリ石祠がありました。

  檜林の中のなんにもない所でしたがよく見ると軒の下に人面のレリーフが刻まれていて、珍しいなぁ、と思いました。

  石祠から100m も進まない所で杏が岳林道に出会いました。

  林道を横断してまっすぐ下ってゆく道があり、その入り口に「らんず花の里」と墨書きした道標が立っていました。
地形図を照合すると、2Km ほど下っていった所に「蘭津」という地名が見え、幾つか人家のマークが書き込まれています。

  少し疲れましたが程々の時間で藪尾根を歩き通す事ができたので、満ち足りた気分で林道歩きに移りました。
途中で沢溝上部の土手を通るところがあり、谷の下手に妙義山の横顔が見れました。

 
 
  30分あまりで榛名川にかかっている橋に着きました。

  橋を渡るとすぐ、路線バスが通っている箕輪髙崎道に突き当りました。
出口の角に「榛名湖 4.5Km、榛名神社 0.8Km」 と記した道路標識が立っています。
  道路に出た所を右折して1Km も進まない所に下の坊バス停ポストが立っていました。
田舎料理を出す茅葺きの食堂があるので蕎麦かなにか食べたいと思ったのですが、あと2~3分も擦ればバスが来るタイミングだったので急いでスパッツを脱ぎ、仕舞いこんでいた所へバスが来ました。

  高崎行のバスは山麓の室田ターミナルで10分ほど休憩します。
待合室の後ろにあるトイレ/洗面所には山の水が出る水道があるので汗だらけの顔を洗えます。
建物の前にはジュースの自販機があり、飲み物を補給することもできます。

☆ルートの詳細


  GPS スライドショー



  Flickr の元画像スライドショー



  ルートマップ


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☆おわりに

   長年の懸案だった杏が岳-味噌玉岩ルートのトレースをしたところ、思った以上にうまく歩き抜けることができました。
掃部ヶ岳から杖の神峠への尾根筋は眺めがよく、ここまで歩いて下山するだけでも満足できる好ルートではないか、と思いました。