富士山 精進口登山道 (2014.8.7-8)



☆期日/天気/山行形式:
2014年8月7-8日 前夜泊日帰り単独行
☆地形図(2万5千分1): 富士山(甲府8号-3)、鳴沢(甲府8号-1)
☆まえがき
    本栖湖北岸稜線のトレースをしていたとき富士山の北西面に多数の寄生火山群があるのに気が付きました。
目立つのは大室山(1468/1447.5)ですが国土地理院の地形図でその付近を眺めてみると精進口登山道の2合目付近から精進湖畔の登山口に向かって、弓射塚(1566)、片蓋山(1468)、長尾山(1424.1)などが並んでいることが分かります。

  一番大きな大室山でも精進口登山道の入口からの登高差は200m あまりしかないので、夏バテ気味になっている年寄り山屋にとって、静かで涼しい山歩きを楽しむことができる領域かも、と思いました。
青木ヶ原を貫通している精進口登山道は問題ないものの、どのピークにも整備された登山道はなさそうで、頂上に立つには多少なりとも藪を突破する覚悟をしなければなりません。
どのくらい時間がかかるかの予測も立て難いので、前夜、大月駅前で泊まり、早朝から歩き出すことによって、十分な時間的余裕を確保する計画を立てました。





精進口登山道標高 1000m 付近に広がっている赤松林

 (画像をクリックすると拡大)

☆行動時間
(前夜大月駅前ホテル泊)
   大月[6:22]=(富士急)=[7:14]河口湖[7:20]=(スバルライン五合目行バス)=[8:55]三合目(8:02)-二合目(8:35/40)-一合/天神峠(9:10/20)-軽水林道交差点(9:50/55)-大室山分岐(10:00)-無名ピーク(11:25)-神座風穴(10:40/55)-大室山分岐(11:15)-大室風穴分岐(11:47/12:05)-富士風穴(12:10/15)-県道富士宮鳴沢線(12:21/23)-乾徳道場分岐(13:03/10)-東海自然歩道交差点(13:42)-(13:52)赤池バス停[13:50+17]=(富士急山梨バス)=[14:00+15]富士緑の休暇村/ゆらりで入浴・食事/-(16:05)樹形溶岩入口[16:01+10]=(富士急山梨バス)=[16:25]河口湖[16:39]=(富士急電車)=[17:41]大月[17:51]=(中央線立川行)=八王子=長津田=宮崎台

☆ルートの概況
   前の夜は、大月駅前の浜田屋旅館に泊まりました。
大月は久し振りでしたが、富士山が世界遺産に登録されたお蔭か、駅前が整備され、すっかり垢抜けしたニュータウンになっていました。
泊まり場の浜田屋旅館は富士講が隆盛だった時代から続いている老舗のようす新しい建物に建て替わり、客室もリゾートホテル風の造りになっていました。

  早朝の富士急電車で河口湖に行き、スバルライン五合目行きバスに乗継いで三合目まで上ったた所で下車しました。

  バス停のすぐ脇に左のような精進口登山道の図解看板が立っています。

  道路にそって後戻りする方向に50m ほど進むと左のような道路橋があってその下を潜りました。

  軽石の砂利の中の溝状の道になりましたが歩く人は少ないようで最近歩いた人の靴跡は見当たリませんでした。

  ひと下りして傾斜が緩み、まわりの景色が落ち着いてきた道端の笹薮の中に 「精進口登山道二合目のブナ林」 と記した標識が立っていました。

まわりには大木が林立。 東北の奥山のような雰囲気でした。

  前の方が開けてきたと思ったら廃屋の脇に出ました。
二合目の休憩所の跡のようでしだが半ば潰れかかっていて回りに立入禁止のテープが張り巡らされていました。
向かい側の建物はもう少し新しくて今でも使えそうな建物でしたが施錠されていて内部の様子を見ることはできませんでした。

  二合目の屋敷のすぐ下で舗装林道を横切りました。

この辺りは一時オフロードバイクが出入りしていたようで、登山道の荒廃を避けるための車止が要所に設置され、林道の出口には乗り入れ禁止の看板が立っています。

  道の様子がまた軽石の砂利の中の溝状になりました。
世界遺産になってますます混雑していると伝えられている富士山です、裏側のこちらはまったく人影を見ず、静寂が支配しています。

  天気がもうひとつで時々小雨がぱらついていましたが森が綺麗で変化に富んでいるため、視界が閉ざされている中を歩いていても単調になりません。

  右手の林の先が高くなっているのはイガドノ山かも、と思いましたが明瞭な登り口が見えないまま通り過ぎました。

  屋敷跡と思われる広場がありました。
多分、一合目の茶店があった所なのでしょう。

  天神峠の舗装路に出ました。
交差点の左下にある長尾山への登り口を求めて峠道を左手に進んでみたが坂を下ってゆく一方なので元に戻りました。

  交差点の石垣にザックを置いて飲み食いをしていたら鳴沢の方から小型四駆車が2台登ってきました。
山支度の人達が乗っていてこちらを見ながら通り過ぎてゆきましたが、車にせよ歩きにせよ今時こんな所に立ち入るのは物好きの山屋以外にありません。

  右手に下っていったルートが左へゆるやかに回り込んでいったあと右折して元の方向を回復すると間もなく軽水林道と交差しました。
交差点から少し進んて行った所で左手へ幅広の道が分岐していました。

  角に赤塗のプレートがあっただけでしたが GPS と地形図を参照し神座風穴・大室山への入り口に違いないと判断し、左折したところ50m ほど進んだ所で 「神座風穴」 と記したプレートが木に掛けてあるのを見つけました。
  小刻みにに上下しながら樹林の中を進み、山裾に突き当たった所にあったT字路で左折すると曲り角のすぐ先に 「神座風穴」 の標識がありました。

  左手に山裾を巻き上げてゆくとY字状の分岐があったのでとにかく高い方へと右手へ登って行きましたが、これは間違いだったようです。
ぐるりとひと回りしたところで小ピークの天辺に上がってしまいました。
左のように広い平坦な切り開きで、とても気分の良い場所でしたが、タブレットの GPS で確認したら大室山の東にある1280m の小ピークの頂上であることが分かりました。
 
  ひと休みしたあと来た道を戻るとすぐ、大室山の頂上を正面に見ながら斜面を下ってゆく踏み跡がありました。
ザラザラした踏跡を僅か下ると下から登ってきた道に降り立ったので右折、僅か進むと「神座風穴」の標識が木に掛けてありました。

そのすぐ先の木の根方には、左のような樹形の丸穴がありました。

  ちょっとした広場に出ると古びた説明看板が立っていて、神座風穴の説明を読むことができました。

  看板の先には左のような空洞がありました。
その穴の奥は深く、数百メートルも先まで続いているのだそうです。

  歩いてきた道を戻って精進口登山道に引き返し、幅広く平坦に整備された道を進んでゆくと道が左に折れ曲がりました。
45度くらいの角をふたつ曲がって進む方向が西向きに変わったあと、さらに少し進んだ所に左のような二重フェンスがありました。

  フェンスの出口側に回ってみると風穴見学ツアーの案内板が架けてあり、その先がちょっとした広場になっていました。
  広場の端で休憩していると若い外人カップルが歩いてきました。
 今朝歩き出してから初めて遭った人間です。
声を掛けてみたら向こうも道が不安だったようで三合目から奥庭に行くルートの様子を尋ねてきました。

  夏休みツアーで来た学生さん達で、男の子はイギリス、女の子はフィンランドからと言いましたがすっかり意気投合した様子でラブラブでした。
久しく英語を喋っていなかったせいで口の周りの筋肉が疲れましたが持っていた地形図を見せてルートの案内をしたあと、少しばかりの国際交流/世代交流を楽しみました。
  二人と別れて歩き出すとすぐに「富士風穴」と彫った石柱に着きました。

  富士風穴は、道から僅か左に入った所に開いている大きな空洞でした。
右側の壁には階段のようなものが築かれていて人が登降できるようになっていました。

  富士風穴のすぐ先で県道富士宮鳴沢線と交差しました。
出口の脇にちょっとした駐車スペースがあり、車で来た家族連れがいましたが、この人達は今朝歩き出して以来初めて見た日本人でした。
  県道を横断したあとはいわゆる青木ケ原樹海のまっただ中を貫いてゆく道になります。
地形が緩むとともに闊葉樹の多い穏やかな林が続き、和やかな気分で森林浴を楽しめるようになりました。

  道端に古い看板が立っていました。
文字がかすれてほとんど読み取れませんでしたが、上の方には「天然記念物、富士山・・・」と書いてあるようでしたが。

  まわりの雰囲気が里山っぽくなってきましたがそれと裏腹にここまでの長い下りを歩いてきた疲れが出てきて、膝まわりの筋肉が痛くなってきました。

  メンタルと、フィジカルと、老化の進み方が違ってアンバランスが生じているようで、気分に任せて無理に頑張ると、あとで局部的な痙攣や筋肉痛に悩まされることになります。
ペースを落として進んでゆくと綺麗な赤松の林に入りました。

海岸では大きな松林をよく見ますがこれらはみな人工林です。
ここのは自然林のようで、これほど広い赤松の自然林は今まで見たことがないように思いました。

  松林を抜けてひと下りすると道が左に曲がっていて、その角から右手に行く道が分岐していました。
GPS とルート地図を照合し、乾徳入口と判断しました。

  乾徳入口から精進湖畔の赤池バス停まで3Km ほどです。
13:50 にそこを通過する河口湖行のバスがありますからそれに間に合えば、鳴沢で途中下車して立ち寄り入浴して帰ることができます。
時間を逆算し、ギリギリのタイミングまで休憩して膝まわりの筋肉を休ませました。

  国道を走る車の音が聞こえてくるようになると溶岩源の縁辺に差し掛かったようでまわりの凸凹が大きくなりました。
小刻みに上下が増えるとともにまた膝まわりの疲れが出て、ピッチが落ちました。

  祠の覆屋のような小さな建物がありました。
国道の車の音はかなり近くなっていましたが思ったより時計の針の回るのが早く、バスに間に合うかどうか怪しくなってきました。

 溶岩原の末端を曲がり下り、消防署の脇で国道に出たのはバス定刻の2、3分あとでした。
田舎のバスは5分ほど遅れてくるのが普通だからまだ間に合う可能性はあると思い、100m ほど下手の赤池バス停に行きました。

  定刻を10分ほど過ぎてもバスが来ないのでやっぱり乗り遅れたのかなぁ、と思って筋向かいのレストハウスに行きかけた所へ新宿からの高速バスが走ってきました。
  このバスには乗せ貰えませんでしたが路線バスは遅延していてもう少し経ってから来る、と言うことを教えてもらえました。
  路線バスは17分も遅れてきました。
早い時間のバスに乗れたので鳴沢の富士緑の休暇村前で途中下車。
日帰り温泉 ゆらりで入浴して汗を流し、食事もしたあとでスバルラインのバス停に戻り、次の河口湖行バスに乗って帰途につきました。
 

☆ルートの詳細




  GPS アルバム


  Flickr の元画像スライドショー


  ルートマップ


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☆おわりに

   時たま小雨がぱらつくような天気だったため、藪ルートに突っ込むのを憚ったのと、大室山以外のどの山も取り付き点が確認できなかったせいで、寄生火山のいずれにも登頂せず、精進口登山道を歩いただけの偵察で今回の山行を終えることとなりました。
3合目付近のブナ林や乾徳入口上の赤松林など、中に入って歩いてみると初めて分かる裏富士 青木ヶ原樹海の森の多様性に触れることができました。

  沿道の寄生火山群の幾つかの取付きの見当がついたので今後機会を見つけて、ひとつひとつの登頂をトライして行きたいと思っています。