安針塚-大楠山-前田橋 (2004.2.6)


☆期日/山行形式:
2004.2.6

☆地 形図(2万5千分1): 鎌倉 (横須賀5号-3)、横須賀(横須賀5号- 1)、
                                        秋谷(横須賀5号-4)
、浦賀(横須賀5号 -2)
☆まえがき
三浦半島山行の三回目は大楠山だった。
三浦半島の最高点は240m あまりのこの山の頂上である。
京急安針塚駅(20)から歩き出し、三浦按針夫妻の墓がある塚山公園(75)に上がったあと、池上、阿部倉温泉下(65) を経て大楠山(241)に登頂。 下山は 頂上から南西に延びる尾根道を辿って秋谷の前田橋(10)に下山。 バスで逗子に出てJR線で帰るというのが行動計画のあらましで、三浦半島の中ほどを 東から西に横断する形と なる。

  三浦半島への山行は半月あまりの間に三回と言う、かつてない高頻度になっている。
それでも全く負担を感じないのは、程よい運動不足解消と言う程度のアルバイトで後に疲れが残らないことと、山行の準備に手間が掛からないためだ。
手入れが欠かせない革登山靴が不要で、履きっぱなしにできる布製ローカット登山で間に合ってしまうのをはじめ、諸々の装備の点 検整備が、カメラの電池のチェックのほか、ほとんど何も要らないせいだ。
楽に慣れすぎて雪山に行くのが億劫になってしまうのではないかと、チョッピリ心配になったりする。
MiuraFuji and Takeyama
大楠山頂上の見晴櫓から南方を望む。  左手前に武山と三浦冨士、画面左端の海の向うには房総の鋸山が見えた。

  大楠山はこの辺りではもっとも知名度が高い山だ。
土曜日だったせいもあってかなりの人数が歩いていた。 近在のハイカーが多かったようだが、話をした人達はみな感じが良く、山特有の、かりそめながら親みのある会話を楽しんだ。

  頂上広場の隅にある "ビューハウス" の脇に立つ展望櫓に登った。
一番上のプラットホームは風でユラリユラリ揺れて少々気持ちが悪かったが、"かながわの景勝50選" のひとつに数えられている展望は素晴らしかった。
やや雲が出ていたが大気の透明度はこれまででもっとも良く、文字通り360度の広大な展望を楽しんだ。
近くにある三浦冨士山から相模湾越しの本物の冨士山。  さらに伊豆半島と大島、箱根、丹沢、房総の鋸山に横浜のみなとみらいの建物群まで、沢山の物が見えた。

  ルートの状況は、安針塚から大楠山までの間は、交通量の多い道路や屋並みの間を縫って歩く所が多く、頂上直下もゴルフ場になっていてあまり山らしい雰囲気 ではなかった。
しかし、頂上を越して山の西側の下山ルートに入ると雰囲気が一変し、奇麗な暖地性の森林の中で快適ミニハイク気分を楽しんだ。
  山から降りた所を前田川が流れていた。
人里の脇を流れている小さな谷だが清透な水が流れ、その脇を遊歩道が通っていた。
前田橋バス停の近くまで、15分ほどの距離だったがチョッピリながら美味しいオマケをしてもらったような気分を味わった。

<タイムレコード>
宮崎台=あざみ野=横浜[8:14]=[8:54]安針塚-塚山公園(9:20/30)-阿部倉温泉下(10:30)-大楠山(11:00/30)-前田 川(12:15/20)-(12:35)前田橋[12:45+4]=[ca13:15]逗子駅[13:23]=[13:50]横浜=あざみ野=鷺沼=宮崎 台

道案内アルバム

Entrance
  京浜急行の安針塚駅を出たらすぐに左に折れて ガード下を抜け、狭い谷間に 並ぶ人家の間を歩いて行くと右側に大きな変電所がある。
  柵の前に立っている道標に従って直進するとすぐに
安針塚公園に上がって行く道が分岐する(左)。

  舗装はされているが狭くて急な坂道から丘陵に上がるとT字に車道と交わった。

Ansinduka
  角に立っている道標に従って右手の高みに上がると三浦按針夫妻の墓があった。
もとはウイリアム アダムスという名の 英国人で、オランダ東インド会社の交易船の船長になってマゼラン海峡を通り抜けてきた猛者だが日本近海で嵐に遭って難破。
しかし、徳川家康に取り立てられて帰化 し、日本女性を妻として永住したと言う。




  墓所の一段下を回っている車道からは横須賀湾と港みらいの建物群が見えた(下左)。
ViewYokohama
  大楠山方面へのルートを捜しながら進んで行くと、"大楠山 石畳道" と記した道標が立っている所から始まる道があった。  あまり人が歩いている感じがないのでさらに先に進んでみる。
  100m 程先にコンクリートで固めた道があってその入口に "大楠山" と記した道標が立っていた。
いかにもメインコースらしい道だしさっきの道まで戻るのも面倒なのでその道に入るとすぐに登ってきた熟年夫婦と出遭った。
ひと下りで横須賀インターチェンジのアプローチ道路の脇に降りついた。
道なりに歩いて行くと石畳道の出口がある。 大楠山の方から歩いてきたらしいハイカーと遭った。
間もなく、山中町集落の民家の前に出て、生垣の間の石段を上がると広い車道に出た (下左端)。
  突然場違いの所に出てきたような気がして戸惑ったが歩道の脇に下のような案内看板が立っていてルートを外していない事が分かった。
道路が左にカーブした先にトンネルがあって入口の上に "池上トンネル" と記されていた(下左から3番目)。
100m 程のトンネルを抜けた所では道路の左側に造成された宅地が売り出し中だった。
すぐに横須賀と葉山を結ぶ県道に突き当たる(下右端)。
今はT字路になっているが向かい側の山を貫通するトンネルができ掛かっていたから十字路になる日も遠くはなさそうだ。
YokosukaIC RouteMap Ikegamtunnell Kendou
OokusuyamaKuchi
  工事中の阿部倉トンネル入口の前を右に折れて5分ほど進んだ所に左に入る道があり、道標とルート図の看板が立っている(左)。
Kidergarden
  安針塚への登り口とちょっと似た感じの坂道を通って高台に上がるとこじんまりした教会がある。
道の向かい側にある海賊船を模った幼稚園の建物が面白い。
Okusuyama
  突き当たった二又を道標に従って左に入り、ゆるい坂を乗越すとようやく山里の雰囲気になる。

  斜面を横捲いてゆく道から大楠山の頂上が見えた。
モッソリした盛り上がりで、何本もの鉄塔が眺めを邪魔しているせいもあって、あまり元気が出てくるような感じの頂上ではない。
Okusuyama
  大きな水道タンクの脇の階段を上がるとゴルフ場の柵に突き当たる。
道標に従って左に向って進んで行くと ようやく山らしい雰囲気になってくるが右側にゴルフ場の金網柵が続いているのが面白くない。
金網越しに近くなって来た大楠山の頂上が見えたが頂上のすぐ下までゴルフ場のグリーンが延びている。
  衣笠城址への分岐を示す三又路を右に曲がって先に進むと金網のトンネルに入る。
打ち損じたボールに当らないようにするための配慮なのだろうが "熊扱い" されているような気分がしないでもない。


KaidanMiti
  金網トンネルが尽きるとやや急な階段道になる。 フィックスドロープがあるが大した傾斜ではなく、ちょっとサービス過剰かなと思う程度だ(左)。

  山の大きさからいっても長くはない筈だと思いながら階段を登ってゆくとやがて上の方が明るくなり、運動場のように広広した頂上広場の一角に出た。
中年女性3人組が休んでいただけで閑散としている。
広場の中程に三角点標石、向こう側の端に展望櫓とレストハウスがある。
  レストハウスには店番のお婆さんと、地元の老人が休んでいた。 テーブルと椅子はあるがスナックと缶ジュースくらいしか置いてない。
  柱に天皇、皇后と妃殿下の写真が掛けてあった。
10年程前、葉山のご用邸から登ってこられた時の写真だと言う。  これに比べると最近テレビで見るお姿は大分老けてきたように思える。 病気の影響なのだろうか?
OkusuTop
  展望櫓に登ってみた。
上部は結構風当たりが強くて櫓全体がユラリユラリと揺れている。  ちょっと気持ちがよくなかったが "鋼鉄でできているのだから大丈夫なんだよ" と自分に言い聞かせながら手摺に沿って回り、360度の大展望を眺めた。
半月ほど前に登った三浦冨士山と武山がすぐ近くに並んでいる。
その左手の海の向うには房総の鋸山の特徴のある姿が見えている。
   右手の相模湾越しには、伊豆半島と大島。 その右手には箱根の山々と、雲を纏った冨士山の仄かな姿が見え、さらに丹沢の山々が並んでいる。
  半島付け根の方には "港みらい"の特徴ある建物群が見えている。 2月初めから東急電車の乗り入れが始まり、賑わっているらしい。
KioshoRader
  櫓の上は風当たりが強かった。
景色を眺めていると熟年夫婦が登ってきた。 話をしながらデジカメと中判カメラでひと通りの写真を撮り終えたときには、愚図愚図していると風邪を引きそうな感じにまで身体が冷えて いた。  急いで下に降り、 山名看板の脇の植え込みの根方に見つかった日だまりにザックを置いて飲み食いをする。
食休みをしていると先刻の女性パーティが近付いて来てデジカメのシャッターを押してく れという。
 "いいですよ" と返事をすると渡されたのはニコンの "可愛い子ちゃんデジカメ" だった。  最近良く見かけるものだったのでひと言ふたこと言ったら時ならぬカメラ談義が始まった。
   サブに常用している初代 Coolpix と、メインのフジカ645Zi を見せたら645判機に特別な興味を示した。 代わる代わる手に持って、「これなら私達でも使えそうだわ」と言う。
女性はメカに弱いというのは過去の話で、今はカメラでもパソコンでも詳しい女性が珍しくなくなった。
  また寒くなってきた。
もう少し休んで胃袋に血液を流してやったほうが良いのだがと思いながらザックを背負い上げる。
頂上より一段下は大楠平と呼ばれる広い尾根で気象レーダの塔が立ち、そのまわりが公園になっている。
レーダは半径130Km の降雨を観測できる性能があるという。
道端に梅が咲いていた。
Yamamichi
  大楠平の先は緩やかな尾根道の下りが続く。
山のこちら側は自然が残されていて登山道のまわりが濃密な暖帯林になっている。
大楠という山名の本になった楠もこのような林のメンバーだったに違いない。
  頂上の櫓から見たところでは山頂の東側から北側に掛けては、ゴルフ場や宅地として開発され、山が露になっていた。

  "景色では腹を一杯にできないですから" とある建設業関係者に聞かされた事があるがバブル期に腹一杯どころか飽食過食で糖尿病や大腸癌が増えるほどにまで開発をやってしまった。
傷めつけた自然はちょっとやそっとでは回復できない。
我々の世代は子孫に膨大な 借財を残したことになる。
Deguchi
  緩く登って120m 圏内の尾根の盛り上がりを越すと尾根の右斜面に刻まれた階段を通って谷に下る。
暫くすると右下に水流が見えてきて、やがて車道への出口に着いた(左)。
Maedagawa
  橋の手前に遊歩道の道標があったのでそこを左に折れて沢の中に入った。
白い岩畳の間を奇麗な水が流れている。
山が深くなく、ほとんど人里なのに奇麗な水が流れている。
渡渉点には平らな飛び石が並べられ、誰でも足を濡らさず、気楽に歩けるようになっている。

  安針塚から頂上まで大楠山の東側では車道や人家の連続で少々ゲンナリしたが西側のこちらはかなり山っぽく、森も奇麗でいい感じだ。

  この山は西側から登り降りしたほうが良いと、あらためて思った。
☆おわりに
    これまでの三回で三浦半島の代表的な山のあらかたに登った事になる。
残りの目ぼしい山は葉山近くにある双子山あたりだろうか?
これも2月中旬前後に登ればそのあとに残るのは森戸川上流の所謂逗葉アルプスから乳頭山、鷹取山を経て京急六浦駅に出るロングルートの縦走ということにな る。
この程度の山ならまだ暫くは "なくならない" だろうから慌てて全部を歩ききってしまおうなどと考える必要はない。
沼津アルプスとともに次の低山シーズンのお楽しみに取っておくのも悪くない考えだ。