雁ガ腹摺山-吹切峰-野分ノ頭-桑西
(2004.5.12)



☆期日/山行形式:
七保(甲府号2-2)、大月(甲府3号-1)

☆地形図(2万5千分1): 七保(甲府号2-2)、大月(甲府3号-1)

☆まえがき
    昨秋、楢ノ木尾根トレースした事で小金沢周辺の藪ルート歩きも一段落した形となったが、ひとつだけ、雁ガ腹摺山の頂上から南に派生している尾根が残っていた。
1874m の頂上から250m ほど高度を下げた所から、1516m 無名峰、吹切峰(1522)、野分ノ頭(1498.6) と緩やかな起伏を連ね、東の奈良子川谷から真木川谷へ乗越している林道を跨いで、1180m 圏無名峰、鳥屋ノ丸(1205)をへて桑西集落で終わる藪尾根だ。
吹切尾根と呼ばれる事もあるようだが、金山峠越えで雁ガ腹摺山に登る途中、頂稜近くを通っている林道の上に広がっている林が、所々に白樺の群れをちりばめて魅惑的だった。

   目立ったピークもない地味な藪尾根ゆえ、歩く者も希なようで、 "甲斐の山々(小林経雄)" の一般的な記述以外、僅かな情報資料しか手に入らなかったが、藪潜りの労苦がかなり大きいらしいが別に危険な場所はなさそうだということが分かった。

  楢ノ木尾根より里に近い分いくらか気楽に歩けるという面もある。
木の葉が開いて見通しを妨げる様になる前、遅くとも5月初旬のうちにトレースしようと準備をしたのだが、今年の春先の激しい気候変動に身体が随いて行けず、風邪気味となって延期。
適期より半月近く遅くなった。


  このため尾根の下部の葉が茂り、視界が悪くなってしまった事がひとつの要因となって、1180m圏無名峰で進路の判断がつかなくなり、やむなく反転して林道にエスケープ。
桑西まで長ーい車道歩きをして下山する結果に終わった。
上は雁ガ腹摺山の頂上。 旧500円札の裏面を飾った富士山の写真撮影地だった

吹切尾根ルートサムネイル



  左は2万5千分1地形図画像に今回歩いたルートを記入した詳細図のサムネイルで、クリックすると拡大して詳しい情報が読み取れる。

  実際に歩いた部分は暗赤色で、歩き損ねた部分は淡赤色で示してある。

  この図で分かる通り、計画したルート全長のほぼ3分の2をトレースし、吹切尾根の主要部は歩いたのだが、鳥屋ノ丸を越えて桑西集落に下山する最後の部分の下降ルートをミスった。

  踏跡が笹薮に埋もれていたところへ低い所で木の葉が開いて見通しが妨げられて、進路の判断が立たなくなったため、反転して林道へエスケープした。

  少々残念な山行に終わったが、図らずも長距離の林道歩きをする事となり、足腰のトレーニングには効果があった。

<タイムレコード>
宮崎台[6:27]=長津田=[7:23]八王子[7:29 特急アズサ]=[7:55]大月[8:00]=(Taxi \6730)=[8:35]大峠-御硯水(8:40/50)-吹切分岐(9:15)-雁ガ腹摺山(9:45/10:00)-吹切尾根分岐(10:20)-吹切峰(10:50/11:05)-野分ノ頭(11:15)-林道(11:25)-南尾根入口(11:40)-pk1180(12:00/20反転)-林道(12:45)-真木橋(13:25)-大峠車道(13:30/40)-休憩(14:50/15:00)-ハマイバ旅館前(15:20/25)-(15:35)桑西[15:54]=(バス \460)=[16:18+]大月[16:44 特急カイジ]=[17:15]八王子=長津田=[18:24]宮崎台


☆要所の写真
    途中から林道にエスケープして計画を完遂できていない点で不満足な記録なのだが、情報の乏しいルートなので、"藪好き" の向きへの参考情報として、いくらかは役立につかもと考え、以下に要所の写真とその周辺の状況の記述を並べる。
ひとことで言えば、笹薮の密度とルート ファインディングの困難さの点で、楢ノ木尾根よりワンランク上だったと思う。

  大月駅からタクシーで大峠に上がった。
7000円弱だから三、四人のパーティだったら大した負担にならないだろう。
週日だったが、湯ノ沢峠入口と大峠にそれぞれ2台ずつ車が停めてあった。
大峠の水場、御硯水
  大峠から雁ガ腹摺山に向う登り口から僅か100m ほどの所に水場があって、非常に味の良い水が流れている
脇に、"御硯水" と記した立札が立っていたが、前に通り掛ったときにはなかった様に思う。

  まず、雁ガ腹摺山に登った。
1年振りの頂上だ。
奥手に "大樺の頭" と記した大月市の金属製道標が立ち、楢ノ木尾根への入口を示している。

  京都から来てこの一週間、一帯を登り歩いているという老夫婦に遭って大峰の話を聞いた。
雁ガ腹摺山南尾根
  雁ガ腹摺山の頂上から降りてくると真木川谷を見下ろす展望点がある。
晴れていれば、富士山が奇麗に見える所だが、これから歩こうとしている吹切尾根が足許から延びているのを縦観できる。

  手前に盛り上がっているのは1516m 無名峰、その先の方に少し霞んいる高みが吹切峰だ。
  奈良子谷から上がってきた林道が吹切峰の東肩を捲いてその裏に隠れている野分ノ峰の先へ回りこんで行っているのが分かる。
南尾根への入口
  大峠から25分、雁ガ腹摺山頂上から20分ほどの曲がり角に腕木のない道標が立っている(左)。

  この柱の脇が吹切尾根への入口だ。
入口から100m も行かないうちに踏跡が途絶える。
尾根の背まで進んだ所で右下の密な笹薮の中に入り、10分程強引に押し分けてゆくと、右下に明瞭な踏跡が見えてくる。
野分峰付近の芽萌きの林と明瞭な踏跡
  踏跡沿いの笹薮が最近伐り払われたようで至極歩きやすく、一般登山道といってもおかしくないほどの状態だった。

  あたりに人の気配はないが動物の気配は濃厚だ。
  周りの樹木は芽萌きの時期に当っていて非常に美しい。


  1516m 無名峰はすぐ手前の尾根の右斜面に細く長い崩壊があるので容易く確認できる。

吹切峰は緩やかな盛り上がりで、特に目印もないため、この辺かなぁという感じで通り過ぎた。

左は、野脇ノ峰のふたつ手前のピーク付近の様子である。
野分峰の恩賜林標石
  少し登って降り掛かるところで、踏跡の右横に左の写真のような恩賜林標石があった。

  この標石を過ぎた所でやや左に方向を変え、ひと下りして奈良子林道に出た。

  三角点のある野分ノ峰の本峰の東肩をほぼ水平に捲いて行くと5分余りでミラーの立つカーブあって、そこからルートの続きが始まる。

林道から見た南尾根の下部
  ガードレールの後ろ側が密生した笹薮になっていてどこから入ればよいのか分かり難い。

  様子を探りながら真木川谷の方に少し行って見たら、アメダスと思われる電柱が立っていてその付近から続きの尾根の上の部分が良く見えた(左)。

  あらためてミラーの立つカーブまで戻り、入口を捜す。
南尾根下部への入り口
  ミラーの右5m 程の笹薮に僅かな隙間があったので入ってみたら極く薄い踏跡に乗った。  シメシメと下っていったが間もなく様子がおかしくなった。  どうも獣道らしい。

  東側の尾根の背を目指して足場の悪い笹の斜面を横切り、ようやく正しいと思われる尾根の背の踏跡を探り当てた。
  このあと、登り返して戻ったときに分かったのは、このミラーの左脇の笹薮の中に飛び込めば僅か数m で、正しい尾根ルートの踏跡に乗れるという事だった。
南尾根下部のルート状態
  林道の下は稀にしか人が入っていないようで踏跡はごく薄く、笹薮漕ぎと倒木跨ぎの連続になる(左)。

  所どころの樹に熊の爪痕と思われる傷がついている。  彼らの領分で遊ばせて貰っているのだから挨拶代わりに時々声を上げ、余所者が入り込んでいることを知らせる。

  雑木がかなり濃密で、高度が下がるにつれて葉の開きも大きくなり、パッとしない天気による霞も掛かって視界が得られない。
1180m 無名峰と思われるところまで進んだ所で笹薮の隙間にザックを下ろし、飲み食いをしながらあたりの様子を窺ったがどちらに下れば正解なのかもうひとつ判然としない。
  コピーして持ってきた参考資料もお互いに食い違っている感じで紛らわしい。
左手の踏跡と、右手の尾根を覗き込んだあと、暫く考えた末、思い切って反転をした。
 無理に頑張ってリスクを犯すより絶対確実な林道にエスケープし、その途中から尾根の様子をよく観察すれば次のトライアルの役に立つだろうと考えたからだった。
奈良子林道の出口
  大ケヤキ沢の源流部を回り込み、吹切峰尾根の西にある中双里尾根を乗越して行った所でわらび採りのお年寄りに出遭った。
「林道だと桑西まで20Km もあるよ、中双里尾根には桑西まで道があってずっと近いよ」、と薦められたが、そのまま林道を歩いてもせいぜい10Km あまりと分かっていたから、「まぁ、慣れていますからこのままブラブラ歩いてゆきますよ」、と言って先に進む。

  大峠から発している真木川に掛かる真木橋を渡るとすぐに真木小金沢道だった。
出口には左のようなゲートがあり、お年よりのらしい軽トラックが置いてあった。
真木小金沢林道から見上げた雁ガ腹摺山
  藪尾根で反転してから、ここへ下ってくるまでほとんど休まなかったので疲れた。
トラックの横手の石に腰を下ろし、林檎やチーズを食べながら休憩。

  この先は時間だけの勝負なので、代わる代わる痛みを訴えてくる足腰の筋肉をダマシダマシしながら歩く。

  時々視界が広がり、下り損ねた尾根の様子が見えたり、朝方登った雁ガ腹摺山の頂上部が見えたりした(左)。

  桑西バス停の周りではまだ数軒が民宿の看板を出していて、人を泊めているらしい風だった。
バスを待つ間、通りかかった人に尋ね、桑西集落の奥手から右手の尾根に上がれば鳥屋ノ丸、送電線鉄塔、1180m無名峰へ行けるらしいことを確かめた。


☆おわりに

    大月へのバスは、ほかに誰も乗っていないのを幸い、視界の広い最前部座席から沿線の山の様子を詳しく観察した。
吹切尾根は鳥屋ノ丸から南へ、途中に幾つかのピークを起伏させながら真木温泉近くまで長々と延びている。 さらに南端には梅久保山がある。
  今回歩き損ねた部分を含め、尾根の末端までのトレース、地形図上に小さな山に似合わぬ複雑な起伏を示している梅久保山、さらには金山峠から野分ノ峰に登って中双里尾根を下るなど、まだ少なくとも二、三回は、この一帯で藪ルート探検を楽しめそうだと思った。

  また、吹切尾根から林道を経て桑西に下るルートは、雁ガ腹摺山からの下山ルートとして、金山峠越しに次ぐ利用価値があると思った。
特に、中双里尾根が使えればかなりの捷路で、毎時一本のバスの便と併せ、利用価値は一段と高くなる。