古部-徳並沢ノ頭-945m三角点峰
-柏尾大善寺
(2003.12.21)
|
☆期日/山行形式: 2003.12.21 単独日帰り
☆
地形図(2万5千分1): 笹子
(甲府3号-3)、石和(甲府7号-1)、
塩山(甲府6号-2)、大菩薩峠(甲府2号-4)
☆まえがき
源次郎岳から恩若峰、棚横手山から甲州高尾山と、日川尾根から西へ派生している二本の尾根を歩いたら、三本目が俄然気になって来た。
甲斐大和駅の裏手にある古部集落の背後に立つ徳並沢ノ頭から四等三角点のある945m峰を経て甲州高尾山麓にある柏尾に降りる尾根ルートだ。 |
(クリックで拡大します) |
一般的な案内地図やガイドブックの類には出ていないが、数年前の山雑誌に出た紹介記事のページを切り取ったのが地形図の間に挟まっていた(左)。
このあたりで藪ルート歩きをする時の手引にしている「甲斐の山々(小林経雄)」は素っ気なく、ほんの4行で片付けていて役に立たなかったが、10年ほど前に出た「中央本線各駅登山(山村正光)」には写真入の詳しい紹介があった。
雑誌の記事はグレードCとランクを示しているから、一応 "ハイグレード ハイキング"
級だと思われた。 また降雪直後の岩場通過のため軽アイゼンを用意するよう勧めていた。
|
計画のあらましは、甲斐大和(640)から古部集落奥の車道分岐(825)を経て徳並沢ノ頭(1116.7)に登り、945m
三角点(944.7)を通って柏尾(470)に下山。 甲州高尾山麓にある大善寺を経て勝沼ぶどう郷駅(475)まで歩き、JR線で帰るというものだった。
実際に歩いた結果、ここは一般ルートとしての整備は行なわれていなくて、道標の類はほとんど皆無だということが分かった。
前半は数箇所に岩場があったりして 気が抜けなかったが後半は地形が穏和になり、美しい濶葉樹林に覆われた幅広の尾根をノンビリ歩く事ができた。
大善寺から勝沼駅までの "ぶどう郷遊歩道" からの素晴らしい展望とあわわせ、なかなか好ましい所のある藪ルートだと思った。
<タイムレコード>
宮崎台=長津田=八王子=高尾[8:00]=[9:04]甲斐大和(9:20)-車道終点(10:
10/20)-徳並沢ノ頭(11:30/40)-大岩のピーク(12:30/40)-1050m
台ピーク(12:50)-三角点のある945mピーク(13:10)-推定740m
地点(13:40/55)-柏尾の車道(14:25)-大善寺(14:40/50)-(15:25)勝沼ぶどう郷駅[15:53]=[17:09]八王子
=長津田=宮崎台
☆詳しい記録
冬になると日帰り山行の早起きが辛い。 何とか寝床から這い出して窓を開けてみる。 一年で最も夜の長い時期で、真っ暗だったが東の空に鋭い形をした三日月が浮かんでいた。
年の瀬だが好天気の日曜日ゆえ、大勢のハイカーが出てきて列車は賑やかだった。
大部分は上野原や大月で降りてゆき、甲斐大和駅で降りたのはせいぜい10人ほどだった。
車中でカレーパンとゆで卵を食べたのがまだ眠りから覚めていない胃腸にダメージを与えたようで腹具合がおかしくなった。
駅のトイレでかなりの下痢を排出したあとで山に向った。
|
|
里道がちょっと混み入っているようなので持ってきた古雑誌の切り抜きを参照しながら進む。
集落の入口には "古部" と刻んだ立派な石標が立っていた(下左)。
その脇を通って人家の間を登ってゆくと寺と集落センターがあった。
その付近で左の横道に入って山に向うことになっているのだが、道路が改修されて入口が分からない。
いい加減に見当をつけた道を進むとすぐに谷のほうに向い、"大志戸林道" と記した道路標識があった。
このままでは白蛇沢に入って古部山の方に行ってしまう事になるのでので反転。
|
|
少し戻った所で右に分かれている道に入り、坂を上がって行くと火の見櫓の立つ十字路に出た(左)。
下の方には寺の屋根が見えているのでこのあたりでよさそうだと思い、山の方に向って右折する。
前途を訝りながら集落の中を歩いていると横丁から初老の男が出てきた。山仕事をしているような服装だったので、「徳並沢ノ頭へはこの道で良いんです
か?」と聞いて見たら、「ぐるぐる曲がっているけれど、この太い道を外さないように終点まで行けば徳並沢ノ頭への登り口ですよ」、と親切な口調
で教えてくれた。
集落を抜けると日あたりの良い斜面に出る。 扇状地状の幅広い谷窪で一面果樹園になっている。
前日の寒波が残した物か、日陰の路面にはウッスラと雪が積もっていた。
|
|
やがて到着した車道の末端は、左の写真の谷窪の一番奥に見えている常緑樹林のすぐ下の地点だ。
僅かに幅が広げてあって2、3台の車が置けるくらいのスペースがある。
身体も程よく温まり、腹具合も持ち直してきているので景色を眺めながら身支度を整える。
山道に入って100m あまり進んだ所から藪になって道形を追って歩くより脇の桧の幼木林との境目を歩いた方が楽になる。
やがて前方に山林が近付いて来た。 このまま山腹の藪の中を登って行くより、尾根の上に乗った方が楽そうだし、現在位置の確認もしやすいだろうと考え、右横の斜面を直登する。 |
尾根に上がったらありがたいことに仕事道らしい踏跡が通っていた。
少々藪っぽいが格段に楽だ。右側の斜面が伐採されていて眺めが良い。
高度が上がるに連れて視界が広がり、古部山から田野の景徳院の方に延びている尾根と大鹿峠周辺の稜線が見えてきた(下左)。
さらにひと登りして索道の下を潜る。 ひときわ眺めの良い所で、山の裾には谷間の集落、山の上には富士山の頂上付近が一望で、この尾根ルートで最高の展望点だった
(下右)。 |
|
|
|
右手から尾根が合流すると一時的に登りが急になって藪も濃くなる。
心配していた風はほとんどない。 明るい細尾根の登りは気分がよい。 汗で発熱する繊維を織り込んだアンダーシャツがその辺のスーパーでも買えるようになった。 ためしに着て来たが、なかなか良さそうで、暑からず寒からず、快適だ。
最初の岩場に差し掛かった。
両側が崖になっているので真っ直ぐに登ってそのまま乗越すしかない。 潅木が多いので手掛りに事欠かず容易に乗り越えた。
さらにひと登りで二番目の岩場に着いた。 ちょっと錯綜しているが通り道ができている感じで、踏跡を辿れば容易に乗り越せる。
ピークを越し、浅いコルから最後の登りになる。
やがて頂上が近付くと左のようなバットレス状の大岩が現われた。
さぁどうしようかと思ったが取り付いてみたら案外簡単に抜けられた。
その上、頂上直下のザレた急斜面の方がかえって厄介だった。 |
|
岩場では良い手掛りになった潅木が疎らなため、ストックが頼りだ。 何とか騙しながら頂上へ登り上げる。
せいぜい直径5,6m の小さな頂上で、四等三角点とそれより少し小さい標石がある。
大志戸山の方からの踏跡と、これから辿る西尾根への踏跡と、登ってきた道が三又路を形成している。
駅からここまで道標はひとつも見なかったが、古びて文字がかすれてきた山名プレートが立木の枝に掛けられていた。
辺りはシンと静まり返っている。 里が近い割に山深い感じのする所だ。 |
|
胃腸の調子は大分よくなってきたが取り敢えずは少量のチーズとレモンティーだけでつなぎ、お昼を食べるのはもうひとつの三角点がある945m
峰あたりまで行ってからにする。
頂上から西に向う下降路はかなり急だ。
西隣の小ピークとの鞍部までの中ほどと、コルに近い所と、2箇所に岩場がある。
一般ルートだったらロープくらいは取り付けてあるような所だが、手近の潅木を利用して通り抜ける。
下り切ったコルから登り返していった1030m 圏のピークのあたりは左の様に明るく穏やかな尾根道になっていた。
|
|
南に顕著な尾根を派生している1050m 圏の双耳峰を越し、その次の1040m台ピークに登ってゆくと大岩に行く手を遮られた(左)。
両側が急峻で捲き難い。 一瞬どうしようかと思ったが近付いて様子を探ると左横手から取り付けそうだ。
一段上がった所でまたどっちへ行こうかという事になったが右手の岩に渡って斜上する事で簡単に抜けられた。
大岩のすぐ先のピークで小休止する。 ひと下りして次のピークに上がり、右手に折れて下りに掛かると左側が伐採跡の潅木林になる。
笹子周辺から御坂や "南" 方面への展望が開けるがちょうど写真の邪魔になるくらいの所まで枝が伸びていて中判カメラをザックから引っ張り出す気にはなれなかった。
|
|
緩やかな鞍部を過ぎて登り返してゆくと945m 三角点のあるなだらかな盛り上がりに乗る。
辺りの地形はすっかり穏やかになった(左)。
|
|
三角点標石の横を通り過ぎて緩く下ってゆくと急に尾根の幅が広がり、ノンビリ日だまりウオーキング気分になった。
赤松混じりの高木林で雰囲気がよい(左)。
樹木の隙間から北隣にある甲州高尾山の尾根が見える。
深沢の奥の方から登ってゆく林道の下の尾根上に植林作業用らしい小屋が見えている。
地形が穏やかになり、安心して余所見を志ながら歩けるようになったのは良いのだが、積もった落ち葉が深く、道筋が不明瞭な所が多くなった。
多少ルートを外しても危険がない所なので適当に見当をつ けて進んで行く。 木の枝に捲きつけたテープの目印が目に入ったら進路を修正するようにした。
ブラブラモードで歩いていると急に空腹を感じてきた。
胃腸の調子が戻ってきたのと、今日の山はもう終わりだと言う安堵感とが重なった結果のようだ。
降り積もった落ち葉の上に腰を下ろしてチーズパンやかき餅を食べ、胃袋のご機嫌を伺う。
|
左下の谷間に中央線のトンネルが見える所を過ぎ、隣の尾根の形からもうそろそろと思われる辺りで尾根が細まり、明瞭な窪みになった道筋を辿ってゆくと東京電力駒橋発電所の導水プールに着く(下左)。
プールの右脇に回りこむと導水管に沿った長い階段があった。
膝の調子が良かったので何の苦もなく降りられるがそうでなかったらちょっと辛い下りだな、と思いながら飽きるほど長い階段を下る。
中間まで下った所で振り返ると山の中に一筋の人工物が天まで伸びている不思議な景色だった(下右)。
|
|
|
左下が下り切って柏尾の車道への出口だ。
すぐに国道20号線に出て深沢川に架かる橋を渡る。 橋の途中から見上げると人家の後ろに柏尾山が穏やかな姿で立っていた(下右)。
|
|
|
橋を渡るとすぐに大善寺だった。
この前来た時から僅か2週間しか経っていないのだが、木の葉はすっかり落ちきって明るい冬枯れの景色になっている。
まず堂々とした構えの薬師堂に賽銭を上げて今日一日の楽しい山歩きへの感謝を捧げる。
そのあとで建物の脇の水道蛇口の横手にザックを下ろし、家に持ち帰る水を汲んだり喉を潤したりしながら休憩する。
大善寺から勝沼駅までの展望遊歩道は大気が濁っていてこの前ほどの絶景ではなかったが、奥秩父の尾根筋も雪に覆われて真っ白になり、はっきりと季節の進みを示
しているのが見えた。
駅に着いたのは前回より三十分ほど遅くなった。
次の登り電車まで時間がなかったので売店でNHKテレビ連続ドラマの菓子を買ったついでにコーヒをテイクアウトしたがそれは大月止まりで連絡する登りはない事が分かった。 急ぐ必要がなくなったので待合室に入り、チビリチビリとコーヒを飲みながら山支度を仕舞い、その次の立川行き電車に乗って家に
帰った。
|
☆おわりに
前回の棚横手山と今回の徳並沢ノ頭と、ふたつのピークから観察した結果、日川尾根南端一帯の込入った尾根の繋がりが概略頭に入った。
藪山歩きのフィールドとしてかなり面白そうな気がする。 人里から隔絶していないし、林道も四通しているから尾根筋を歩いている限り日帰りで帰り損ねるリスクは低いがアプローチに要する時間を考慮すれば日の長い時期に歩いた方が良さそうだ。 木の 葉が出てしまうと見通しが利かなくなるから3月から4月頃に歩き回るのがもっとも良さそうだ。
|
|
|