Mobile Athlon XP-M 搭載、冷静パソコン 2号 (2005.7.12)



◆ 2台目の冷静パソコン

    昨年末、AMD社のノート用 CPU を使ってミッドタワー機を組んでみたら、予想以上に性能が良かった。
日常使用するワークステーションに昇格させるとともに、万一の故障に備えて CPU やメモリーの予備品を確保してあったのだが、今度は梅雨どきの雨続きの退屈凌ぎに、 それらを使って2台目のミッドタワー機を作ってしまった。

  チョコッと手を出した遊びの積りだったのだが、意外な(と言うよりむしろ当然の)トラブルに引っ掛かってひと騒ぎ、やっぱりこの CPU は一筋縄では行かないなぁ、と思いながら何とか完成に漕ぎ付た結果は、頑張った甲斐があったと、納得の好結果。
PentiumV 時代の安物ケースのバックパネルファンの音が気になって静粛タイプに交換したほどの "冷静PC" ができ上がった。(下の写真)     以下はその顛末である。

Front Panel of TestPC
◆ 昨年末、AMD社の Mobile Athlon XP-M 2600+ を使って自作機を組み立て、CPU クロックとコア電圧を動的に制御するソフトを組み込んだところ、 非常に "冷静安定な" システムができた。

  ひと月ほど慎重に様子見をしたあと、常時使用するメインワークステーションに昇格させ、以降半年余りの間、ノートラブルで使用している。

  一方、 Socket A タイプの CPU はそろそろフェーズアウトという情報が聞こえてきた。
万一故障した時に、交換部品の入手難のため、即廃棄と言う憂き目に遭わぬよう、予備の CPU とメモリーを確保した。
秋葉原のショップで購入して持ち帰り、棚の上にあげたまま忘れていたのを、梅雨になって暇ができたときにフィッと思い出した。

  件の自作機は全く安定していて補修部品などまるで必要なさそうだ。
マザーボードも、それらしいのを安く入手して持っているし、 PCケースも初代自作機の安物ミッドタワーが、ハードディスク、オプチカルドライブ、電源が付いたまま遊んでいる。(下左)

  OS をどうするかという問題はあったが、ハードは別にこれと言って買い足さなければならないものはない。
この際、暇つぶしに一台作ってしまおうと考えた。

  でき上がったPCはテスト専用機として使う積りなので、まず近所の日曜大工ショップで買ってきたキャスターを、クッション脚の穴に押し込み、キャスター付きケースに仕立てた。(下右)
このようにすれば、常時は部屋の片隅に押し込んでおき、随時必要なときに引っ張り出して動かすのが容易になって、非常に便利だ。


  マザーボートは GIGABYTE の 7VT600P-RZ だった。
お作法に従って CPU、クーラファン、メモリーカードを取り付けたが、いきなりこれをケースに組み込むことはせず、ビデオアダプターカードを追加しただけの最小構成で起動するかどうかを確認した。

  電源はケースのを使うが、タワーケースは電源が天井側にあるためデスクに置いたマザーに給電線がとどき難い。
思いつきでケースを逆立ちにしたら左のように、非常にやりやすくなった。(実用新案になるかも?)
テスト用のスイッチ、表示LED、ブザーは、左下のようなセットが300円くらいで手に入る。

  マザーボードのマニュアルをよく見て極性を間違えないよう、フロントパネル接続ピンヘッダーにこれらを差し込む。
さらにケースの電源ユニットのケーブルを100V コンセントに差込み、期待を込めて "Power On" スイッチを押したのだが、一瞬電源が入って CPU ファンが回ったあと "ビーポービーポー" と音がしただけで "落ちて" しまった。
何度繰り返しても同じ現象の繰り返しで一向に BIOS が立ち上がらない、
曲がりなりにも BIOS が立ち上がってくれなければどうにも手の出しようがない。

  サテどうしたことか?、といろいろ考えた末に思い当たったのは、マザーボードが CPU より半年余り(?)早く発売された物だと言うことだった。
存在していない CPU を認識するのに必要な情報が入っていない可能性がある。
これを検証するいちばん簡単な方法は、現在の Athlon (Barton コア) よりひと世代前の Throughbred コア Athlon XP で起動するかどう確かめて見る事だ。
  急いで秋葉原に行って Athlon XP 2400+ を入手して帰り、CPU を積み変えたらアッサリ起動した。
   ノーマルタイプの CPU を使用し、それが正しく認識されて BIOS が正常に立ち上がれば、そのあとの自作プロセスはかなり容易で、半ばできたも同然だ。
  ケースの中にボードをシッカリ取り付け、フロントパネルケーブルの接続と、各種ディスクドライブのチャンネルとマスター/スレーブの設定を間違わないように行い、電源ラインを接続すればまず正常に起動する。(上)

ハードの組付けが終わった所であらためて100V 電源につなぎフロントパネルのスイッチを押したあとすぐにキーボードの "del" を押すと BIOS メニューが表示された。
CPU を買い換えると言う、思わぬ手間と出費はあったが Athlon 2400+ システムなら各種ソフトの味見などのテスト機としては十分な性能がある。

 昔のままになっていたハードディスクから Windows 98SE が立ち上がるまで確認したが、さまざまなソフトのテストを行うプラットフォームとしては古すぎるので最新バージョンの Windows XP (2002 SP2)をインストールする事にした。

これまででひとまず一段落と言う所に漕ぎ付けたし、ほかの予定もあったので一時休戦と言うことにし、あたりを片付けた。
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◆ でもやっぱり Mobile Athlon 機として組み上げたい!

   足腰の錆取りをするための "雨中山行" に出かけ、南会津の湿原で綺麗な花景色を見て帰ったあと、さて OS のインストールに取り掛かろうかと思ったのだが、もうひとつ気乗りしない。
  "冷静PC" を組み立てたかったのに Mobile Athlon がダメだったため、ノーマルタイプ Athlon に後退したのが面白くない。
  "楽しみ" でやっているパソコン自作なのだから、我慢する事もあるまいと思い、あらためて Mobile Athlon 2600+ に適合するマザーボードの入手に動いた。

  この CPU は本来ノート PC 用に製造された物の "横流し" であり、それをデスクトップ用マザーボードに搭載して使うのは一種の "不正使用" なため、各メーカのどのマザーボードの動作保証リストにも入っていない。
まさに Try at your own risk! の遊びである。

  どのマザーボードなら何とか起動してくれるのか、BIOS で適正な走行環境の設定ができるのか、また、Windows アプリケーションレベルでのコアクロック倍率制御はどうかなど、一部のマニアがインターネットに掲出している情報だけが頼りだ。
(例えば、http://fab51.com/cpu/ を参照)

  もうひとつ、ひと月余り前に見知らぬ人から届いたメールがあったのを思い出した。
ウエブサイトに出してある前回の試作記を見てのコメントで、トラブルも含めて経過が詳しく記されているので参考になった、と言う感想のほか、ABIT NF7 Ver.2 か MSI KT880 Delta-LSR を使ったならば、もっと楽によい結果が得られただろうという助言が書き添えられていた。

  これらの情報に基づいて、使用可能なマザーボードのリストを作り、それを持って秋葉原に出かけた。
やや旧型化している CPU のマザーボードだからどうかなと、一抹の不安を感じながら、行き付けの店に入ってみたらなんと、棚の上に ABIT NF7 Ver.2 の箱が積んであった!
このマザーボードの箱は、いかにもマニア向けっぽい、下のような派手派手デザインだった。


  Mobile Athlon は、腕にいくらかの憶えのある者にとって、最も低コストで最強クラスの "冷静パソコン" を組み立てられる基幹部品として稀少価値が出ているようで、この "マザー" の値札の数字も全盛期と全く変わっていないような感じだった。

  前の ノーマルタイプ CPU と、今度のマザーと、あわせて一泊2日の贅沢山行ができる程の小遣いを注ぎ込んでしまう羽目になってしまったが、思い通りのPCが組み立てられることになって幸せな気分になれた。
急いで家に持ち帰り、マニュアルと現物を詳しく照合した。
 GIGABYTE のより幅が45mm も広い大形の ATX マザーだが、外観は昨年末トライして使い物にならず返品した NF7-S2 と似たり寄ったりだ。(左)

  マニュアルでは、後ろの方にある BIOS メニューの説明の筆頭に記されている "SoftMenu Setup" が目を引いた。

  このメニューで "CPU Interface" をアクティブにすれば、MBによる自動認識に関わらず、FSBクロックとコアクロック倍率を強制的に設定できそうだ。

CPU ソケットの内側空間にサーミスタ温度センサーがつけてあるのも目についた。(下左)
  バックパネル側のコネクターは上のようになっている。
USB2 ポートがふたつしかないのが物足りないがボード上に4ポート分のピンヘッダーがあるので、付属のバックパネルコネクタとフロントパネルにつなぎ、全部で6ポート使える。


  まず念願の Mobile Athlon XP-M を CPU ソケットにマウントした。(左)


  コアの表面にシリコングリスを塗ったあとファンクーラを取り付けた。
ファンクーラは昨年末と同じ QuietFalcon EEA74B4-J だ。

  さらにメモリー(最終的には256MBX2)をスロットに差し込んで MB の基本的な組み付けは終了。
 
  ビデオカードも差込んでディスプレイにつなぎ、テスト用スイッチ/LED を取り付けたあと、前回と同様に逆立ちさせたケースの電源ラインをつないで最小規模起動検証の準備を終わる。

  今度は無事に起動し、最初の関門はアッサリ突破できたが、CPU タイプの認識は誤っていて、 "Unknown CPU Type, 600MHz(100MHzX6)" と表示される。

  CPU コア電圧も過大で1.575V も掛かっている。
このままでは高発熱低速 CPU と言うことになってしまうので、とりあえずコア電圧を定格の1.45V に下げた。
速さの方の面倒見はあとでする事にした。


あとはケースに組み込むだけになったのだが、今度のボードは大きいため、ディスクドライブやバックパネルファンと干渉し、ケースの中に入れるのが大変だった。
  いろいろ取り外したり、ずらしたりして何とか納めたが、狭苦しい所でフロントパネルリード線の接続を間違えるのが心配だったので、前もって仮つなぎぎを行い、嵌め込みができた状態でブロックごとにセロテープで結束固定して、即席コネクターにした。(左)
  ケースへの組み込みが終わった所で起動。
スイッチ ON 直後の "del" キーで BIOS メニューに入り、 "SoftMenu Setup" メニューで "CPU Interface" をアクティブにしたら FSB クロックと、CPU クロック倍率の組み合わせメニューが現われた。
  メニューをスクロールアップして一番下にあった 133MHzX13.5=1800MHz を選択して Mobile Athlon XP-M 2600+ 本来の速度設定にした。

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  再起動時の CPU 認識はできたりできなかったりで、"Unknown CPU Type, 600MHz(100MHzX6)" と表示される事もあるが、FSB、CPU クロック、およびコア電圧の三者はいずれも正しい値に保持されている。(左)


  ハードの組み付けと設定が終了したのでソフトのインストールに移った。
OSはいろいろなテストに便利なよう、 Windows XP Professional (SP2) を選んだ。

 
  パネル面の5インチラックには2台のリム-バブルユニットが取り付けられ、一方がシステム用としてIDEプライマリチャンネルのマスターに、もう一方がデータ用としてスレーブに接続されている。

  マスター側に入っていたハードディスクはかつて Windows 98SE のシステムディスクだったのであらかじめクリーンアップを行った。
  新品のハードディスクだったら不必要な作業だが、古いドライブを再生する場合の参考になるよう、あえて詳細を記す。
  一旦新作機からドライブを取り外し、ほかのPCに IDE-USB 変換アダプター経由で接続して全てのファイルを削除したあと scandisk を掛けた。
  清掃ができたドライブをまた新作機に戻し、 Windows のインストールを始めた。

  まずディスクの容量チェックが行われ、左のような画面表示が表示された。
ディスクスペースの殆んどを占領している旧パーティションを除去。
未使用の MBR エリア一本に纏めてインストールスペースを確保した。
  これ以降は順調にインストールが進行し、一度か二度 "Enter" キーを叩いたかも知れないが特段の事もなく、殆んど自動で物事が進んで終了した。
(下左→下右)

  Windows XP のインストールが終了したところですぐに Windows Update サイトに接続し、インストール CD リリース後に出たセキュリティーパッチを当てたのだが、この段階がセキュリティー上最も危険な状態である。
ウイルスはインターネットから入ってくるのに、それを防げる能力を Windows に付与するためにはインターネットにつながねばならないと言う、"缶詰の中に缶切りが入っている" 状態になっているからである。
NATルータのファイヤーウオールによる保護がない環境では事前にアンチウイルスソフトをインストールしてから取り掛かるべきと思う。

  ヒヤヒヤしながらもパッチ当てを終え、左のように最新状態の Windows 環境ができた。
  Windows が XP になってもっとも進歩したのはネットワーク接続支援機能だと思う。

  ネットワークタスクメニューの "ホーム/小規模オフイスのネットワークをセットアップする" ウイザードを起動し、"接続する LAN の "ワークグループ名" と、サーバ認証のある "ユーザID" を入力するだけで左の様に LAN 上のほかの PC が見えるようになる。

  ホーム LAN への接続ができてしまえば共有プリンターのをはじめモロモロのデバイスドライバー、各種のファームウエア/アプリケーションを親機のライブラリーから引っ張り出し、楽々インストールができるようになる。
  Windows が動き出した所でまずマザーボード付属の CD からチップセットドライバーをインストールした。
その CD には、"ABIT EQ" と言うハードウエアモニターが同梱されていたのでそれもインストールした。

  "ABIT EQ" は簡素なハードウエアモニターで、左の様に、各部の印加電圧、冷却ファンの回転数、および CPU ほかの温度のリアルタイム値を表示してくれる。
CPU コア電圧が1.45V 設定のところ、1.47V でやや高めだが CPU 温度は38℃ と表示され、周囲環境より13℃高いだけになっている。


  次にディスプレイアダプターカード ドライバーのインストールを行った。
経費節減のため秋葉原のリサイクルショップで購入した ATi Radion 9200 (DDR128MB AGPX4) カードだった。
マニュアルはなかったが CD は付いて来たのでメーカのサポートサイトにアクセスする手間は省けた。
   以上で、2台目の "冷静パソコン" 製作ができた。
インターネットからの情報では、今度のマザーボードに搭載されているチップセット: nForce2 Ultra400 は、一台目 "CoolPC" の "冷静化" に役立った "Crystal CPUID" によるコアクロックと印加電圧の動的な制御はできないことが分かった。
アイドル時に "クロックダウン" せず、フルパワー走行のままに保ったとき CPU 温度がどうなるか、暫くの間点けっ放しにして推移を観察した。
大体室温プラス13〜16℃ 程度に落ち着くようでCPU ヒートシンクに触ってもホンノリ暖かい程度に納まっており、狙いどおりのクールな PC が作れたことを確認できた。

  ただひとつ、バックパネルの8cm ファンが煩るさいと思った。
パソコンが煩るさいなどと言う話はなかった、PentiumV 時代のケースに付いてきたファンなのにそのように感じたのは静かなパソコンに慣れたせいかも知れない。
近所のショップに行き、スピードコントロール付きの静粛ファンを買って来て交換し、大人しくさせることができた。

  なお、"Crystal CPUID" の代わりにはならないが、チップセットメーカの VIA から "nTune" と言う強力なハード設定・監視プログラムが提供されている事が分かった。
PDF 形式で50ページあまりの英文マニュアルを読みこなした上で使わないと危険なプログラムなのだがかなり色々なことができそうだ。



◆ おわりに

  以上のような経緯で、少少トラぶったが、期待通りの性能を持った "冷静パソコン" の組み立てに成功した。
  フリーのアンチウイルスと APOP ジャンクメールフィルター、Windows 版 GIMP、大幅な改善が期待されている Ver.2.0 OpenOffice.org などを時間が空いたときに随時 "味見" してみようと思っている。
あとで落ち着いたら、自宅サーバ公開の予察に Apache も試してみようと思っているが、物騒な Windows ベースのサーバはやりたくない。
Linux のどれかのディストロをインストールし、マルチブートにした上で Linux 版の Apache をテストすべきだろう。

  ひと通り終わった今、ひとつ気になっている事は CPU とマザーボード (Athlon XP 2400+/GIGABYTE 7VT600P-RZ) が余り物として残ってしまったことだ。
このまま持ち腐れにするのはもったいないし、そうかと言ってこれを材料にもう一台組んでも使い道/置き場所がない。
こう言う風にして余り部品ができることが、一度パソコン自作を始めると抜けられなくなる、最大の理由なのだが本当に悩ましい事だ。


◇ もうひとつ

  数年前に購入した 30GB、40GB ハードディスクを IDE-USB アダプターに繋いだときにわかったのは、パソコンの世界は平家物語と同じ "諸行無常" の世界で、すべてが移り変わって行くという事だった。

  最近購入した新しいアダプターは相性が悪くてつながらないので、困ったなぁと、思案しているうちに昔ジャンクショップで購入した古いアダプターが棚に置いてあるのを思い出した。
それを引っ張り出してつないで見たら何ら問題なくドライブが認識され、上で説明したようなクリーンアップができた。
古いパーツを使いまわすにはそれと同時代のモロモロを廃棄しないで保管していなければならない。

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