北信 カヤの平から高標山 (2015.8.11-13)


☆期日/山行形式: 2015年8月11日-13日 ペンション2泊、ガイデッドツアー+自由行動
☆地図 (2万5千分1地形図)
    往郷(高田11号-2)、鳥甲山(高田7号-4)、夜間瀬(高田12号-1)、切明(高田8号-3)
☆まえがき
    北信 カヤの平は、鳥甲山の西、志賀高原の裏側にあるブナの森と湿原の山です。
夏山の混雑を避けて静かな山歩きができそうと思ったものの、公共交通機関利用のアプローチが難かしいのが問題でした。
最近開通した北陸新幹線を利用すれば玄関口の飯山まで行くのは簡単なのですが、そこからカヤの平まで、23Km ほどのアプローチに使える公共交通機関がありません。

  この「難ルート」をどうやって突破するか?
あれ調べたり考えたりしているうちに、山麓の木島平村に「足」付きガイドツアーを提供しているペンションがあるのを見つけました。
  問い合わせてみたら一人客でも受け入れるという返事だったのでとりあえず宿泊日を設定。 その翌日にカヤの平へのツアーをしてもらうことにしました。

  さらに思いついたので老友に誘いをかけてみたところ、カヤの平の北ドブに行ったことはあるが、天気が悪くてよく見れなかった。 高標山にも登れるのなら同行しても良いという返事。
昼前にカヤの平から北ドブ湿原へのツアーが終わったらそのあとは自由行動にしてもらい、高標山へ往復することにして予約を確定しました。

写真の説明    (画像をクリックすると拡大スクロール)

☆8月11日(曇):
高速バス-しなの鉄道・JR飯山線飯山駅から送迎車で宿舎へ

<行動時間>
    宮崎台[9:19]=渋谷=池袋[10:30]=(高速バス)=[14:25+30]長野BT/JR長野駅[16:31]=(しなの鉄道)=[16:45]豊野[16:46]=(JR飯山線)=[17:17]飯山=(送迎車)=上木島ペンションアウラ{泊}

<アプローチの概況>
    8月初旬から中旬の繁忙期はJR運賃の3割引が適用されないので困るのですが、初日は上木島の宿舎まで行って泊まるだけにすればタップリ時間の余裕がありますから久しぶりに池袋から長野まで高速バスで行く事にしました。
長野から先はしなの鉄道/JR飯山線でゆくので程よい加減の乗り継ぎ時間を設定した積りで居ましたが、都内と長野市内の渋滞のため40分近くも遅延。 数分違いで予定の列車に乗り損ねてしまいました。

  次の列車が出るまで駅ビルの中のカフェで1時間半もの時間潰しをすることとなり、飯山駅に着くのが予定より大幅に遅れました。
宿の迎えの車に乗って上木島のペンションに着いたのは5時半頃になりました。
上木島集落の奥手にあるパンションのオーナーは山が好きな元半導体技術者のマルチタレント人間で、カヤの平のネイチャーガイドをしているだけでなく、地元名産の木島米と地物野菜を使った料理の名人でした。


 (画像をクリック→ペンション・アウラHP)

  夕食の主菜は、魚か肉かいずれかを選択できるコース料理でした。
肉料理を選んだところとても美味しかったので思わず全部平らげてしまったら、年寄りの「ハーフサイズ胃袋」は完全にオーバーイーティング状態になりました。
  奥さんの手作りというデザートのスイーツも綺麗で美味しかったのでこちらも全部食べたら、このままでは腹が壊れていしまいそう、というほどの状態になりました。

薬の力を借りてどうにか無事に切り抜けましたが、山歩きの宿でこれほど美味しい料理に出合ったのは八島湿原の鷲ヶ峰ヒュッテ以来です。
鷲ヶ峰は山スキーの定宿にしていた小屋でしたが最後に泊まってからかれこれ20年あまりも経っています。




  全体ルートマップ
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☆8月12日(曇): カヤの平から北ドブ湿原ネイチャーツアーのあと高標山に往復
<行動時間>
    宿舎[9:30]=(宿舎の車 約18Km)=[10:05]かやの平高原案内所(10:10)-北ドブ湿原/八剣山分岐(10:49/55)-北ドブ湿原入口(11:05)-北ドブ湿原木道終点(11:12/15)-八剣山分岐(11:24)-学習林入口(11:50)-案内所(11:55/12:25)-車止め(12:29)-高標山登山口(12:39)-水源かん養林標柱(13:04)-小休止(13:08/17)-頂稜歩道出合(13:28)-高標山(13:54/14:24)-歩道出合(14:47)-水源涵養林標柱(15:01)-登山口(15:16)-案内所前三叉路(15:32)-(15:35)信州大学学習林(15:42)-(15:55)案内所[16:20]=(宿舎の車 約18Km)=[17:05]上木島ペンション{連泊}
<ルートの概況>
    この日は、午前中はカヤの平から北ドブへのネイチュアーツアー、午後は自由行動でカヤの平から高標山へ往復、と言う予定になっていました。
朝食のあとゆっくり休んだあと、家族連れ3人と一緒に車に乗ってカヤの平に向かいました。

  一旦村のメインストリート(403号線)に降りて右折。
樽川の男滝女滝が懸かっているゴルジュを通り抜けた先から左手の尾根に上がりました。
尾根の背を曲がり登ってゆく舗装車道の両側は、かなり上部まで杉の人工林ですが所々で梢越しに妙高山やその周りの北信の山が見えました。

  上部に達すると次第に地形が緩やかになってゆき、まわりが自然林にかわるとまもなく、パッと開けて山上の草原に出ました。
小高い所に立っている案内所の前に車を止めてネイチャーツアーを開始。

  森の縁の流れの手前にあるカヤの平ロッジの横を通り過ぎた所が北ドブの入口で、ルート図を描いた看板が立っていました。

  城蔵山から派生している尾根の背を登ってゆく東コースとその西の浅い沢窪の斜面を登ってゆくのと、2本のルートがありますが、西ルートを進みました。(このルートは地形図に破線が書き込まれていません。)

  ルートの両側は綺麗な森で、ブナ、ダケカンバ、シラカバの群生が住み分けています。
オーナーの解説を聞きながら進みました。

  色々な物があったうちに左のような根上りのブナがありました。
倒れた大木の上に根を下ろした彦生えが成長してゆくに連れて倒木の方は徐々に朽ちて崩壊し、このような形になったのだそうです。

  あれこれ説明を聞きながら進んで十字路に着きました。
西ルートから北ドブへの道と尾根の背を登ってきて八剣山に往く道との交差点の広場で、落ち着いた雰囲気の良ましい休憩場所でした。

  ひと休みしたあと尾根の裏側をゆるやかに下って行く道を進みました。

  十字路の広場から10分ほどで北ドブ湿原入口に着きました。
  ダケカンバの森に囲まれたこじんまりした湿原は、8月中旬になったばかりなのにかすかに黄色味を帯び、すでに秋の気配です。

 (画像をクリックすると拡大)

  湿原の対岸には東屋らしい建物の屋根が見えましたが木道はそこまでは繋がっていません。
地形図に描かれているように谷地奥の詰めまでへも延びていず。
湿原の真ん中近くで左折して20m ほどの所で終わっていました。

木道の突端まで行ってまわりの景色を眺めながらオーナーの説明を聞いたあと、もときた道を戻りました。
  十字路で左折し、今度は尾根の背を通っている東ルートを下りました。
こちらは林床に密生しているクマザサの間を通って行く道で、登ってきた道とは雰囲気が違います。
  幅広くゆるやかな坂を下って僅かな時間で案内所に帰りつきました。

  案内所の右脇の高みにある東屋に入って昼食。
魚沼産より美味しいと言われる木島産コシヒカリで作った握り飯は絶品でした。
  行動中の食べ過ぎは禁物なのでふたつ目に手を着けず、家族連れのオニーちゃんに上げました。

  家族連れのオトーさんはオーナーの元同僚ということでした。
同じ川崎市内で隣の多摩区に住んでいるとのことで、半日の山行を共にしたのも何かの縁だったのかも知れません。

  食事をして暫く休んだあと、オーナー、家族連れと分かれて高標山に向かいました。 
  案内所の脇から南に僅か進んで山裾に突き当たった所にあるT字路を右折するとすぐ先に車止めがあり、ゲートの支柱に「高標山登山口まで800m」と記したプレートがかけられていました。

  砂利林道を10分ほどで左側に登山口があり、入口の両側に道標が立っていて、左側には「Mt.Takappyou」、右側のには「Mt.Kouhyouzan」と書いてありました。

  「シロウマ」が「ハクバ」にすり変わってしまったのと似て、地元の人達が「タカッピョウ」と呼んでいた山を、あとから来るようになった余所者が「コウヒョウ」と呼ぶようになり、今はどちらともつかない状態になっていようでした。

  山道に入った僅か先のところかやや急な登りになりましたがそれもすぐに終わり、あとは一様になだらかな登りが続きました。

  広く平らな緩斜面の中をまっすぐ登って行きましたがまわりが密生した自然林なので視界が遮られ、やや単調に感じます。
現在位置の確認も難しい感じになりましたが、登降差の中程の標高1600m あたりに左のような水源かん養林の標柱が立っているのが良い目印になりました。

 標柱のすぐ先にブナ林が綺麗なところがあったので中休み。
そこからひと登りで頂稜の一角に登りつきました。
頂稜とは言ってもごく緩やかな幅広の尾根のためはっきりしませんが藪の切り開きに縁に高標山へのルートを示す道標が立ち、左側の藪の中から尾根の背を登ってきた踏跡が出合っていました。


  右手へヌタ場を渡って進んでゆくと、わずかに頭の上が開け、明るくなってきました。
まわりを密生した灌木に囲まれているので遠望は利きません。

  道が右手に曲がり、少し岩っぽい高みを越えた小さな鞍部から短い急登を抜けると頂上でした。

 (画像をクリックすると拡大)

  高標山の頂上は後立山や北信五岳が見える展望スポットと聞いていたので楽しみにしていたのですが、雲と霧が多くて遠望は利かず、ページ冒頭のパノラマ写真のような眺めでした。

  遠くの山は見えなかったものの、左手の谷奥に岩菅山から秋山切明へ連なる長大な尾根。
正面には竜王山から焼額山への山並みを見ることはできました。


  石積みの上に大きな角石を組み合わせた祠、その脇に山名標柱と三角点標石がありました。

  切り開きの縁にはアキノキリンソウが咲き、頭の上にはトンボが出てきて、山はもう秋になっていることを教えていました。

  下降路は至って穏やかで、のんびり話をしながら歩きました。
ノンストップでカヤの平に戻ってみたら頂上に往復した2時間あまりの間にオートキャンプのテントが何十張りか増えていて賑やかになっていたので驚きました。

  テント村の先の草原に放牧の牛が出てきていて、のんびり草を食べたり寝そべったりしています。

  迎えの車が来るまで時間があったので信州大学学習ブナ林に行ってみました。

  大学の学習林といえば農学部の演習林と決まっていますが、ここのは珍しいとに教育学部の学習林と言うことでした。

  北ドブ入口の脇から右手に入ってゆくとブナ林の中をぐるっとひと回りする遊歩道があり、所々に解説盤が置いてありました。
  ブナ林の見学を終えて案内所に戻り、ひと息入れていたところへ迎えの車が来ました。

  山を降りたあと上木島のペンションに連泊しました。
夏山シーズンに運行されている竜王山のロープウエイを利用して山に上がり、隣の焼額山まで湿地性の尾根を伝ったあと山の裏側の志賀高原へ降る山越えをしたいと思っていたからです。

  2日目の夜は他に客がなく、少々寂しい感じになりましたがもう一度美味しい夕食を楽しみ、静かな宿で熟睡することができました。

<ルートの詳細>




  ヤマレコの山行報告





  フォトストーリー

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☆8月13日(小雨のち曇): 小雨模様のため竜王山-焼額山山行を中止し、善光寺参詣
<行動時間>
    宿舎[8:30]=(送迎車)=[8:45]飯山駅[8:51]=(飯山線/しなの鉄道線)=[9:43]長野=(シャトルバス)=善光寺・東山魁夷美術館(13:45)-(14:30)長野駅前ターミナル[15:30]=(高速バス)=[19:28+30]池袋=渋谷=宮崎台
<ルートの概況>
    朝起きてみたら小雨模様で山の高い所は雲の中でした。
竜王から焼額までは花を見る尾根ですから霧がかかっていても構わないのですが雨の中の湿地性の尾根を歩くのは嬉しくありません。
夏山ゴンドラが利用できる山ならまだ数年は歩けるでしょうから条件が悪い日に無理に歩くのは止め、次の機会を待て出直すことができます。
今回は割愛することにして朝の列車で長野に移動。 善光寺詣でをして帰ることにしました。

  長野に着くとまず駅前の高速バス乗車券売り場に行って帰りのバスを午後の早い便に変更。
駅前からシャトルバスに乗ってお寺に行きました。

  山を背に立っている本堂は立派で、お盆で里帰りしたと思われる家族連れが大勢来ていました。

  寺に参詣したあと隣にある東山魁夷記念美術館に行ってみました。
自然派とでも言える東山魁夷とそれに類似した画風の作家の常設展示を見たあと、特別展示のドラッカー収集品を見ました。

  経営の神様として著名な人ですが早い時期から日本文化に関心を持っていて、日本で売れた経営学書の印税はすべて古美術品の収集に注ぎ込んだのでは、と思ったほどの名作が集められていました。
  思わぬ所で意外な人の素晴らしいコレクションに巡りあって目の保養をしたあと、館内のレストランでお昼を食べながらゆったりした時間を楽しみました。

  門前町をぶらぶら歩いて駅に戻る途中、苅萱山西光寺の門前を通りかかりました。
「苅萱道心石童丸御親子御絵伝」など、仏の教えを絵解きで説明するので有名な寺でした。

  帰りのバスも途中の高速道で盆休みの渋滞に巻き込まれ、40分ほども遅れて池袋に着きました。
久しく利用しないでいたので忘れていたのですが、高速バスは結構な時間遅れる乗り物なのだ、と言う事を思い出させてくれました。
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☆おわりに

   アプローチが不便なため行き難い山上湿原 カヤの平を、地元のペンションが宿泊客に提供しているガイデッド・ツアーを利用して訪ね、北ドブ湿原を見たあと高標山に登頂しました。

  2週間前の山行で傷めた右脛はほぼ治っていたものの、修復された組織のすり合わせがどんな具合か心配していましたが、下りで力が掛かるとわずかに痛む程度になっていることが分かり、安心しました

  3日目に予定していた竜王山から焼額山へのゴンドラ利用ミニ縦走は天気が良くなかったので中止しましたが、次の機会を狙ってリベンジしたいと思っています。

  時間的な余裕のある計画だったのと、宿舎が静かで食事がとても美味しかったのとで、ゆったりした気分の良い山旅となりました。
また、千曲川谷の向かい側に立っている斑尾山から始まる信越トレイルの山並みを見る事ができました。
これにより信越トレイルをトレースする山行計画を、実感を持って組み立てられるようになりました。
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