小白森山-大白森山-甲子峠-会津下郷(2011.9.27-28)


☆期日/山行形式: 2011年9月27-28日 旅館泊3日 単独
☆地形図(2万5千分1): 林中(日光1号-3)、湯野上(日光1号-1)、甲子山(日光1号-2)

☆まえがき

    那須連山と二岐山の間にある小白森山から大白森山への尾根伝いは十数年越しの懸案でした。

  二岐温泉から取り付き、ルート北端の尾根から、蟻の戸渡りを経て小白森山までは問題ないようですが、その先、一杯山、二杯山を経て大白森山までの間が疑問でした。
ここ数年笹藪の刈り払いが行われていないようで、少し前のガイドブックに出ていた案内記事も削除されてしまいました。
年甲斐もなく盲滅法で突っ込むのは良くないと思ったのでネットに出ている山行記録を検索してみました。
検索に引っかかった山行記録はごく少数でしたが、途中でバテかけた例はあるものの笹薮に跳ね返されて敗退した例はなさそうでした。

  もうひとつ問題だったのは、大白森山を越して甲子峠へ下ったあとの下山ルートでした。
市販の案内地図を見ると甲子温泉を経て新甲子温泉へ下降する実線ルートが描かれていますが正味2時間50分、休憩時間を含めれば3時間半ほど掛かる冗長な下山ルートです。
これを敬遠しているうちに年が経ってしまったのですが、今のうちに歩いておかないと永久に歩けずに終わりそう、と言う状況になりました。
何とかせねばと、あらためて地図を睨んでいるうち、会津側に下山すればもっと近いかも、と言うことに気が付きました。

会津田島駅から見えた二岐山と小白森山-大白森山の稜線

  3月11日に起きた大震災は震源から遠く離れた奥会津にも被害を与え、白河から二岐温泉へ通じている道路が途中で崩落し、会津の湯野上温泉からしか出入できない状態になっていました。
また9月に東日本を通過した台風15号の影響で登山道が崩れている部分があるかも知れない、と地元役場の係が懸念していたと宿の主人に聞きました。

  小白森山から大白森山を繋ぐ稜線の笹薮はかなり伸びていて通過に少々骨を折りましたがルートファインディングに苦労するほどにはなっていませんでした。
台風の影響による登山道の崩落や倒木などはありませんでしたが、甲子峠から下郷へ下る旧国道289号線の下部で大規模な崩壊が発生して道路を完全に塞ぎ、車で峠に上がるのは難しい状態になっていました。

  久し振りのロングルートに老体が耐えられるかどうか不安がありましたが、最後の部分でペース・ダウンしたものの無事に歩き通す事ができ、幾分かは自信を取り戻すことができました。
☆行動記録
9月27日 (晴)
<行動時間>
  宮崎台[7:55+8]=表参道=[9:16]北千住[9:21]=[12:46]会津田島[13:02]=[13:30]湯野上温泉(13:35)=[旅館送迎車 15.7Km]=(14:00)二岐温泉(14:15)-水場(14:55)-御鍋神社(15:15/20)-遊歩道ベンチ(15:25)-駐車広場(15:30/35)-(16:30)二岐温泉{柏屋泊}

<概要>

  小白森山-大白森山縦走の出発点となる二岐温泉は中通りと会津との境の山奥にある秘湯です。
温泉場の一番奥にある柏屋に予約の電話をかけてみたら春の大地震の被害で新白河駅から入るルートの道路が崩落して不通のため会津湯野上温泉駅からのみ客を送迎していると言う事でした。

  自宅の近くを通っている東急電鉄が地下鉄半蔵門線を介して東武鉄道と相互に乗り入れているので湯野上温泉へは、北千住と、会津田島と、わずか二回の乗り継ぎで行き着く事ができます。


  午後の早い時間に二岐温泉に着いたので足慣らしを兼ねて御鍋神社まで往復しました。

  御鍋神社への行き帰りに歩いた道の下の谷は灰白色スラブのナメ滝が連続する美しい谷でした。
ひと昔あまり前、二岐山から降りてきたときに通ったので、その時にも見た筈なのですが、記憶にありませんでした。
 
  足慣らしから戻って宿に入る前に温泉場の下手まで行き、小白森山への登路を観察しました。
右奥にもっこり盛り上がっているのが小白森山のようでしたが、取り付きの谷から尾根伝いの始まりの部分は至って穏やかなように思えました。

  夕食前と寝る前と二度温泉に入り、美味しい料理を腹いっぱい食べて早寝しました。
 

9月28日(快晴)
<行動時間>

    二岐温泉(7:25)-尾根上(8:00/05)-小休止(8:35/40)-蟻の戸渡(8:50/9:00)-固定ロープの急登(9:24)-標高約1500m地点(9:35/40)-小白森山(10:00/15)-一杯山(10:45/55)-二杯山(11:13)-大白森山(11:58/12:25)-下降点(12:27)-甲子峠(12:57)-小休止(13:50/14:00)-車止(14:42)-擁壁崩落(14:50)-新国道合流点(14:53)-道の駅しもごう(15:30/16:20)-(16:40)南倉沢[16:50+5]=(会津バス)=[17:10]旭田小学校下交差点{鈴木屋旅館泊}
<概要>
    翌朝は素晴らしい好天になりました。
台風15号の大雨で小白森山ルートの何処かが崩れたかも知れないと役場の人が心配していたと聞いていたのでもし通過できないほどになっていたときは二岐に戻る覚悟で登路に入りました。

  穏やかな谷から尾根に上がり、緩やかに登って高みを越え、僅か右手に下り気味に進むと蟻の戸渡りでした。
両側が切れ落ちた痩せ尾根で、左側に綺麗な姿をした二岐山が見えました。
両側に張ってあったトラロープの一部に老朽化して切れそうになっている所もありましたが特に歩き難い所もなく通過しました。

  穏やかな自然林の中に入った先でやや平になっている所があったので小休止し、さらに進んでゆくと徐々に傾斜が強まり、ロープが固定された非常な急登に掛かりました。
登りが厳しくなったのと裏腹に背後に視界が開け、羽鳥湖付近の高原が見えてきました。

小白森山の登路から見えた羽鳥湖付近の高原

  急登を抜けた所からさらにもう一段登ると徐々に傾斜が緩んできて、やがて小白森山の山名を記した標柱が立つ頂上に着きました。

小白森山の頂上から見えた大白森山
  前方左手にゆったり大きな大白森山が姿をみせました。
この山には山名標柱の近くと、20m 程先と、ふたつの三角点標石がありました。
後者には "山" と刻まれていたので林業関連で設置されたものかもと思いました。

  小白森山の先、一杯山へはいったん150m 近く下ったあと登り返しますが、下りに掛かるあたりで前方の視界が開け、那須の山並みを見渡せました。

小白森山頂上の南肩先から見た那須連峰    (クリックすると拡大)

  一杯山、二杯山から大白森山の肩にかけての尾根ルートはここ数年間、藪払いが行われていないようで腰ほどまで伸びた笹原の凹みを見当に薮を押し分けて進まなければならない所が頻繁に出てきました。
地形は穏やかで危険な所はありませんが笹に隠れている倒木は要注意で、うっかりすると思わぬ所で転倒を招く罠になります。
この部分のルートは点線で表わすべき状態になっていると思いました。

  このあたり、稜線の東側はブナ林が皆伐されて荒廃し、そのあとに笹が広がったようですが、山林もいくらかは回復しているようでした。

  一杯山はなかなか景色の良い所で、目の前に大きい小白森山とその左手に二岐山、右手には羽鳥湖付近の高原を眺めることができました。

一杯山頂上から見た小白森山、二岐山、羽鳥湖付近の高原地帯    (クリックすると拡大)

 二杯山は大白森山へ向かって高度を上げてゆく途中にあるコブ程度の目立たない高みで、そのすぐ先で中央分水嶺の稜線に合流します。
分水嶺に達したあと左に曲がってさらにひと登りすると大白森山の肩ですがその手前にあるハイマツの古木のあたりから先は笹が刈り払われています
グッと歩きやすくなった平坦な道を進んで甲子峠への下降点を示す道標を通過すると3分ほどで大白森山の頂上でした。
誰もいない山頂はグルリ360度の視界が開け、爽やかな秋天の下に南会津の山々が並び立っていました。

大白森山頂上の展望、小白森山と二岐山の後ろに会津の山々が並んでいた    (クリックすると拡大 スクロール)

南の方は那須で、馴染みの山々が連なっていました。

一杯山頂上から見た小白森山、二岐山、羽鳥湖付近の高原地帯    (クリックすると拡大)

   誰もいない山の頂上に広がる広大な山岳展望を独り占めした豪華な時間をたっぷり楽しんだあと下山に掛かりました。
分岐点に戻って左折し、潅木の間の下降路に入ると正面に那須の旭岳が見えました。
少し進むと傾斜が増し、洗掘で露出した岩溝の急降下になりました。
固定ロープが張ってありますが、足が悪く忍耐が必要な下降でした。

  やがて溝の左手に出るよう誘導するロープが張ってあり、西郷村の道標が立っている所で左脇の山腹に出るとすぐ穏やかな土道の下りに変わります。
穏やかに下って行き、わずか登り気味に左手にまわって赤土の峠の広場に飛び出しました。

  広場の向かい側に立っている甲子温泉入り口の道標の前から右手の谷へ下ってゆくのが旧国道289号線です。
車で越えられない国道のひとつとして知られていた所で、峠の下を貫通するトンネルができたあと廃道になったようですが、幅は林道程度であらかたは舗装されています。

  まわりの山を見ながらのんびり歩いていたら突然エンジン音が聞こえ、車が登ってきたので驚きました。
下部には車止め(脇を擦り抜けられる)があり、さらにその下手には擁壁が大規模に崩落して、土砂と倒木が完全に道を塞いでいて普通の車が入れる状態ではなかったので、この車は道路管理の巡回車だったに違いありません。
  甲子峠の下を貫通するトンネルで会津と中通りを繋ぐ幹線になった新国道289号線に合流した所から30分ほどで道の駅しもごうに着きました。

  会津の山々を見渡す丘の上の広い駐車場の奥手にこじんまりした建物があって蕎麦とジャージ種のアイスクリームが売り物のようでした。


  新そばを使った美味しいいキノコそばを食べたあと裏の展望デッキに出たら南会津の山々が見えました。
  横手の芝の築山に上がるとさらに視界が開け、南会津の山々がズラッと見えました。
一、二を除けば登ったことのある懐かしい山々で、何年ぶりかの再会を楽しみました。

道の駅しもごうの展望
 
  道の駅で長休みをしてロングルートの疲れを癒し、20分ほど下手の南倉沢まで最後の区間を歩きました。
南倉沢は懐かしい雰囲気が残っている山懐の集落で、週日の午後の後半は会津下郷駅行きのバスが3便運行されています。

  会津下郷駅に出てこの日のうちに帰宅することも可能でしたが、出発直前の天気図チェックで翌日も好天が続くと予想できたので急遽日程を一日延長。
下郷役場近くの旅館にもう一泊して、帰りがけにもうひとつ、おまけの山を登って帰ることにしていました。

  下郷の宿は料亭を兼業している畑の中の大きな新築の建物でした。
熱めの風呂でロングルートの疲れを癒し、食べ切れない大御馳走で栄養をつけ、ゆっくり休むことができました。
<ルートの詳細>



EveryTrail の GPS スライドショー




Flickr の元画像スライドショー



詳細ルートマップ
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☆おわりに
    長年の懸案だった二岐温泉-小白森山-大白森山一甲子峠ルートを無事に歩き切ることができました。
秋晴れに恵まれ、みちのくの無人の山の上に広がっている、広大な山岳展望を満喫しました。
中通りの白河からでなく、会津の小野上温泉からアプローチして会津下郷に下山する行程を設定したのは成功でした。

  小白森山から大白森山までの間は笹薮が深くなっていて、一般ルートとは言い難い状態でしたが危険な所はなく、山慣れた者ならあまり問題なく踏破できるのではないかと思いました。