梶原山・帆掛山-柏原峠-高山-吉原(2011.4.14-15)


☆期日/天気/山行形式: 2011年4月14-15日 市中ホテル利用一泊二日 単独行
☆地形図(2万5千分1): 清水(静岡号10号-2)、和田島(静岡号10号-1)

高山南尾根と竜爪山    
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☆まえがき

    昨年秋、東名高速道の工事で登山口が消滅していたのが原因で少々苦労して登った高山の頂上で出逢った地元の登山者から "柏尾峠から来た" と聞いた。
地形図をみると柏尾峠は高山頂上から南に派生している "南尾根" の中程にある。
この尾根は柏尾峠の先で徐々に高度を下げ、静岡市北東部の郊外で平野に没するまで全長7Km あまり。
南半部には帆立山(一本松)と、梶原山と、ふたつの展望峰があって地元ハイカーに親しまれているらしい。
  尾根の末端から高山まで、新幹線利用なら日帰り山行でカバーできるかも、と思ったが大震災のあと山行間隔があき、老化による脚力の衰えも感じていたので、柏尾峠でふたつに区切り、1泊2日で踏破することにした。

☆4月14日(晴) の行動記録
<行動時間>

    宮崎台[7:45]=あざみ野=新横浜[8:22]=(ヒカリ#463)=[9:06]静岡[9:15]=(静鉄バス 竜爪山線)=[9:39]瀬名リンク西奈前(9:55)-光鏡院(10:00/10:20)-梶原山(11:10/25)-帆掛山(11:45/50)-柏尾峠(12:30/40)-(13:25)柏尾バス停[13:24+7]=(静鉄バス 梅ケ谷市立病院線)=[13:23+5]押切(13:33)-大内(14:00)-霊山寺(14:25/40)-(15:20)大内観音入口[15:35+8]=(静鉄バス北街道線)=[15:50+5]清水駅前{ホテルクエスト清水}

<概要>
    毎時1本、新横浜と静岡に止まる新幹線ヒカリが運行されている。
アプローチに利用するバスの時刻表を睨んで程よい時間を設定した。
静岡駅前が工事中で、竜爪山線などの20番乗り場だけがほかと離れた場所に移動していたので面食らったが、どうにか間違いを免れ、予定の便に乗って山に向かうことができた。

梶原山-帆立山遊歩道案内   (クリックで拡大)
  常葉大学キャンパスの裏手から尾根末端に取付くことも考えたが、少し北にある光徳院に興味があったのでひとつ先の瀬名リンク西奈バス停で降りた。
"リンク西奈" とはスケート場か何かと思っていたがそうではなく、公民館や図書館などが入っている公共施設だった。
  バス停から僅か戻ってJAの角を左折すると行く手に寺の山門が見えた。
本堂のまわりでは桜が満開だった。
寺のトイレを借りたあと、横手の農道に出て山に向かった。
入り口の近くに左のように地域の歴史と遊歩道の案内図が記された大きな案内看板が立っていた。
  農道をひと登りすると視界が開け、下のような眺めが見えた。

梶原山中腹から静岡市街を望む。    
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  登路の大部分は車道だった。
地元で親しまれている山のようで大勢の高齢者が歩いていた。
あらかたは花見散歩に出てきた感じの軽装で、泊まり山行用のザックを背負っている姿を珍しそうに見る者が多かった。
やがて登りついた梶原山頂上は東屋形の展望台がある園地で、桜並木が満開になっていた。
眺めは最高で、西は静岡市街から井川の山並みと竜爪山、東の方は下のパノラマ画像のように富士山、浜石岳からサッタ山、清水の市街と港、日本平まで一望だった。

梶原山頂上 富士山、浜石岳、清水港の展望。    
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  一本松とも呼ばれている帆立山までのルートの大部分は茶畑の縁を通っていた。
大内から霊山寺を経て登ってきた道を合わせるとすぐ、修験道の山寺とおなじような形の門を潜って頂上広場に入った。
こちらも素晴らしい展望峰で、少し北に進んだ所ではページ冒頭のような山岳展望が得られた。
竜爪山と高山をつなぐ吊尾根の奥手に見えていたのは安倍川東山稜の富士見岳や真富士山か?

  帆立山の先は一転して山っぽくなったが、このあたりの山の常で、稜線直下まで茶畑になっているところが多く、小型車が通れる農道が通じている。
柏尾峠でお昼を食べて山を下ったら1時過ぎに柏尾バス停に着き、午後一番の清水行バスに間に合った。

霊山寺の本堂    (クリックで拡大)

このまま清水に直行すると時間が早すぎて暇を持て余すと思ったので途中の押切バス停で下車した。

  地図と磁石で方向を定めて大内へ向かい、2Km ほど歩いて霊山寺入り口に着いた。
正面は2時間あまり前に通り過ぎたばかりの稜線で、その直下に霊山寺の屋根が見えた。

  寺への石段道はかななか急で、仁王門に着くまでにひと汗かかされた。
この門は室町時代に建立されたもので重要文化財に指定されている。
本堂はその先の石段を登ったところにあり、満開の桜に囲まれていた。
 
霊山寺の絵額    (クリックで拡大)

  本堂の天井にいくつかの額が架かっていた。
昭和時代のは写真だが古いのは手描きの絵だった。
左はそのひとつで高部の村人5人の母親達が明治三十三年に西国三十三所順拝を行ったと記されている。

  お堂の欄干に据えられたベンチに腰掛け、清水の街と港の眺めを楽しんだあと山を下りた。

  大内観音入り口バス停から北街道線バスに乗って清水へ行き、駅のすぐ近くのホテルに泊まった。
旧東海道江尻宿の旅籠がルーツということで、雰囲気が良く、快適な泊まり場だった。

<高山南尾根 梶原山-帆立山-柏尾峠ルートの詳細>



GPS スライドショー(梶原山-柏尾峠)



Flickr の元画像スライドショー




☆4月15日(曇ときどき晴) の行動記録
<行動時間>

    清水駅前[7:18]=(静鉄バス梅ケ谷市立病院線)=[7:38-3]柏尾(7:40)-柏尾峠(8:20/30)-巻き道-尾根上(9:00)-農道(9:30/40)-PK486 山原分岐(9:47)-高山南峰(10:57/11:05)-高山(11:20/30)-峯山林道(11:45)-上伊佐部分岐(12:05)-一本杉(12:25/13:00)-(13:35) JA 吉原前[14:10]=(静鉄バス庵原線)=[14:42]清水駅[15:09]=[15:20]静岡[16:36]=(ヒカリ#476)=[17:21]新横浜=あざみ野=[18:03]宮崎台

<概要>
    旅籠がルーツのせいか、ホテルの朝食が始まる時間は早かった。
定時は6時45分ということだったが定刻前に食堂に行ってみたらもう老夫婦が食べ始めていた。
おかげで計画より2本早い7時18分の梅ケ谷線バスに余裕で乗れた。
柏尾から峠までの登り返しも1時間と思っていたのが40分で済み、予定より1時間早く縦走を再開できた。
遅い時間には雨が降るかも、という予報が出ていた日だったので気忙しく山を歩かずとも良くなって有難かった。

  柏原峠以北のルートは梶原山付近のような遊歩道ではなかった。
もとは竜爪山穂積神社の参詣道として大勢が歩いた時期もあったようだが、このごろは歩く者の数が激減、おもに地元の猟師が利用しているようだった。
前日と違って人影は見えず、動物の気配が濃厚な山道が続いたが、1時間ほど歩いたところで突然舗装農道に飛び出した。
事前に入手した情報では10分ほど先でまた山道に戻る事が分かっていたので注意しながら歩いて行ったら尾根の背を乗り越すカーブの先端に年寄りがいて、三脚の上に巨大な望遠レンズのデジカメを構えていた。

  "何が見えるんですか?" と声をかけてみると、"渡り鳥ですよ" と言う答。
静岡あたりのバードウオッチャの親玉をやっている人で、この時期に通るサシバを見ているのだという。
車の中からアルバムを持ち出してご自慢の写真を見せてくれた。
飛翔中の鳥の姿はどれも非常に美しかった。

  楽しい休憩のあと道端の道標に従って486m 峰へのルートに入った。
茶畑の脇を登って頂稜に上がり、僅か進んだ所に山原無線中継所分岐があった。
手製ながら明瞭な道標があって迷う恐れはないが、右に分岐して山原への道が良く踏まれているのに対して竜爪山・高山へ向かうルートの人通りは格段に少ない様に見えた。

  486m 峰から高山南峰への登路は緩やかな鞍部から始まった。
風の通り道になっているようで風倒木が多かった。
やがて檜林の中を急登に変わり、580m 圏まで登ると左下に地形図にも黒丸で描かれているほど大きな水槽が見えた。
そのあともなお緩急を繰り返しながら高度を稼ぎ続けているとようやく傾斜が緩み、檜林に覆われたピークに着いた。
山名標識はなく、丸太を3本並べた腰掛けと、古木を三脚に組んだ物とがあるばかりだったが、地形図とGPSとを照合して南峰頂上に間違いないことを確認した。

  高山北峰へは浅い鞍部を渡ったすぐ先に立っている道標から登った。
道標には "T" 字が描かれ、直進すると龍爪へ、高山へは右手の藪の中を直登、と記してあった。
すぐ上には巨大な送電線鉄塔が立ち、そのまわりが茅戸になっていた。
茅戸の中を適当に直上し、その先の杉林の中に入るとすぐ傾斜がゆるみ、三角点標石と山名標識などがある北峰頂上に着いた。

吉原茶畑上部の展望    (クリックすると拡大スクロール)
    ひんやりした風が吹き抜けている杉林の中でひと休みしたあと吉原に向かった。
昨年11月に通ったルートなのだが林道に出るまではこんなに藪っぽかったかな、と思うような踏み跡だった。
尾根の背から降りるところに半ば埋もれた黒樹脂階段の急降下があり、要注意だった。
一般的なルートだったら固定ロープくらいは取り付けてあるくらいの場所だな、と思った。

  林道に飛び出す直前、何とはなしの気配があったので先を見たら車止め広場に大きなカモシカが立っていた。
いかにも栄養が良さそうな体つきで恐れる風もなくこちらを見ている。
脅かさず緊張もさせずという加減の声をかけながら徐々に近づきながら写真を数駒撮ったあと、なおも近づくと身を翻して道下の藪の中に飛び込んだ。
安倍奥の山並みが見えたので写真を取ろうと藪の縁に近づいたのだが、下を見たらまだ藪の中にカモシカがいてこちらを見ていた。
もうひとコマ写真を撮って林道歩きに移った。

  吉原への下降路は半年足らず前に歩いたばかりだったので、ノンビリ歩いた。
安倍川東稜線と篠井山、高ドッキョウから平次の段あたり、浜石岳と吉原の綺麗な山村風景の眺めを楽しんだが、この前と違って雲が多く、大気が淀んでいて富士山が良く見えなかったのは残念だった。

  茶畑上部の一本杉で長い休憩をしたあと、ごくごくのんびり歩いて行ったのだが定刻の40分も前にJA吉原前のバス停に着いてしまった。
吉原はジュース自販機のほかは何のお店もないところだった。
缶ジュースを飲みながらあたりを歩きまわって時間を潰した。

  早い時間に清水に着いたので、駅前で手土産を仕入れた上で静岡に行き、駅ビルで恒例の蕎麦を食べたあとテイクアウトのカフェラテを持って上りのヒカリに乗って帰った。

<高山南尾根 柏尾峠-山原分岐-高山-吉原ルートの詳細>



GPSスライドショー(柏尾峠-高山)



Flickr の元画像スライドショー


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☆おわりに
    老化で体力が下がるにつれて登れる山の制限が強まり、大したところに行けなくなっているのだが、それと引き換えに、今回の梶原山から帆立山や、この前の南房総 大日山から御殿山のように、地元の年寄り達に愛されている "シニア系ローカル名山" との出逢いが増えた。
年寄りには年寄り専用の山があるようで、このような山では、山ガールをはじめ登する若者の姿はない。
今後、山旅を計画する際には、"シニア系ローカル名山" との遭遇を心がけようと思っている。