笹谷峠-神室岳-仙人沢-笹谷(2010.8.22-24)


☆期日/山行形式: 2010年8月22-24日/無人小屋、公設宿泊施設利用2泊3日
☆地形図(2万5千分1): 笹谷峠(仙台11号-2)、今宿(仙台7号-4)
☆まえがき
    裏磐梯・吾妻山行で、春以来悩まされていた下肢痙攣から脱出できたので近年の夏の恒例になっているみちのく山巡りに出かけることにした。
目標は宮城・山形県鏡の笹谷峠から二口峠にかけての山々。 大物は神室岳と大東岳で、ほかに糸岳や小東岳などがある。
これらを5泊6日で登り歩く計画を立て、準備に着手していたところ予定期間の後半は天気が悪くなりそう、と言う週間予報が出た。
急遽計画を変更して後半の二口山域を延期。 神室岳登頂一本に的を絞った山行に変更した。
この山は、去年の夏、雁戸山に登ったつぎの日に登る予定だったのが雨のため登り損ねて帰り、それ以来ずっと気に懸っていた。

笹谷峠北のハマグリ山から 左から右へトンガリ山、山形神室、神室岳(仙台神室)

  神室岳へのアプローチ・ルートは、山形から県境稜線山麓の関沢を経て笹谷峠に上がるのが最も容易だ。
峠の近くにある山形工業高校小屋に泊まれば次の日の朝のうちに登頂できる。
神室岳に登ったあと二口峠まで行くことも可能と思ったが、だんご平から宮城側に下る仙人沢ルートに興味があったのでそちらを通って笹谷に下山、ルポポかわさきに泊まることにした。
ルポポは去年の夏に2泊しているが、リーズナブルな料金なのに食事が豪華で温泉にも入れ、とても快適な宿泊施設だ。
三日目は仙台を経て帰るだけのため時間的な余裕がある。
途中路線バスを乗り継いで秋保温泉にまわり、ビジターセンターなどで二口峠エリアの情報を入手して帰ることにした。

  山がひとつなら天気図を睨んで日程を調整し、確実に好天日を選ぶことができる。
はじめの計画より1日繰り上げたところ、素晴らしい夏晴れの日を引き当てた。
美しい起伏を描いている国境の尾根路を辿りつつ、ここ2、3年の間に馴染みになったみちのくの山々への展望を楽しんだ。
また、下降路の仙人沢ルートは期待通りの好ルートで変化に富み、手応えもあった。

  異常気象のためか、例年この時期になれば涼しくなる筈のみちのくの山の上が異常に暑く、下降路の後半で身体がオーバーヒートして熱中症気味になった。
幸い、谷底まで降りていたため手じかに流水があり、随所で十分に水を飲め、どうにか無事に切り抜けることができた。
☆行動記録とルートの状況
8月22日
<行動時間>

    宮崎台[8:02]=大手町=東京[9:00]=(ツバサ#107)=[11:45]山形駅-山交ビル(12:30)=[Taxi \5890]=(13:00)笹谷峠-山工高小屋(13:05/15:25)-尼寺跡-有耶無耶関跡(15:50/55)-笹谷峠(16:05/10)-宮城側ヘヤピンカーブ(16:25)-笹谷峠(16:40)-(16:45)山形工高校小屋
<概要>
    笹谷峠へは、週日なら山形から関沢まで路線バスの便があり、そこから旧道を歩いても1時間半足らずで峠に登りつけるのだが入山日がたまたま日曜日になったためバスがなかった。
炎暑の時季でもあったので、年不相応の無理はせず、峠までタクシーで上がってしまうことにした。

  朝ゆっくり家を出ても昼前に山形駅に着くから、午後の早い時間に峠に上がれ、かねてより気になっていた有耶無耶の関跡をゆっくり見てまわる時間を確保できる。

  山形駅から5分足らずの山交ビルには、バスターミナルとタクシー乗り場だけでなくショッピングセンターもあるので、晩飯にする弁当と、朝飯用のカップ麺と、水場なしの小屋泊まりに必要な水 2リットル入り PET ボトルなど、ひととおり現地で調達した上でタクシー乗り場に行った。
山交ビルから笹谷峠までのタクシー代金は6000円でお釣りが貰える程度だった。
小屋では維持協力金箱に些少な寄付を投入したが、これを合わせても市中のビジネスホテルに泊まって翌朝のバスで入山するのと同じくらいだった。
何よりも、静かで涼しい山上の小屋でただ一人、一夜を過ごせるのが何にも代えがたいことだった。

  峠に上がってみたらかなり暑かったので驚いた。
みちのくの山は、8月半ばを過ぎれば秋の気配を感じさせる涼しい風が吹き始めている筈なのに、こんな状態は異常だ。
日曜日のためか峠の広い駐車場が一杯になるほど車が来ていて、ハマグリ山の斜面にも幾つかの人影が見えた。

  早速小屋に行き、入り口の戸を開けてみたら、建物全体が焼けていてムッとするほど暑かった。
急いで窓と入り口の戸を開けて風を通し、小屋の内部を冷やしながら床を掃き清めた。
  古い小屋で内部が煤けていたが山工山岳部 OB や地元有志が維持に努めているようで茣蓙敷きの床を備え、備え付けの銀マットと毛布を広げて寝場所を作るとかなり居心地が良くなった。
  日が傾いて涼しくなるまで小屋の中でゴロゴロしていたら、雁戸山から降りてきたらしい人が入り口から覗き込んだりした。
  午後3時を過ぎるとみな居なくなって、あたりがシンとしてきたのでそろそろ潮時と思い、デジカメとハンディーGPSを持って史跡探訪に出た。
有耶無耶の関の遺物は八丁平の広大な笹原の中に散在し、それらを細い道が繋いでいる。
要所に立っている道標を頼りに遺跡を訪ね歩いて分のは、箱根の関所などに代表される関所とはかなり違うものだったと言うことだ。

  笹谷峠は平安時代から奥州と出羽の物資輸送と出羽三山参詣の通路として利用されていたが、強風と地吹雪による遭難が多発する自然障壁だったため、そこを無事に通過できるようにするお助け小屋が設置され、六地蔵など多数の道標が設置されたらしい。
現在、有耶無耶関跡の標柱が立っているのは奥州側の笹谷から谷道を登り上げたところだが、そのすぐ下に仙住寺と称するお助け小屋があったらしい。
そこから数基の石地蔵や石碑を辿ってゆくと山形工業高校小屋のすぐ下手にある尼寺跡に達し、関沢への下降が始まる。 この尼寺も、寺と言うよりむしろ羽州側のお助け小屋だったらしい。

有耶無耶の関遺跡探訪の詳しい状況は、GPS 軌跡アルバム に纏めてあるのでそちらを見ていただきたい。

  遺跡探訪がひととおり終わったので水場の確認に行った。
小屋の入口のドアに、宮城側の車道を下って最初の送電線の下を過ぎたあたりの車道の下に水場があることを示す略図が描かれていた。
最低限必要な量の水は運び上げていたのだが水場が見つかれば身体を拭けるし、売っているのより美味しい水が汲めるかも知れないと期待していたのだが結果的には探索に失敗した。
宮城側最初のヘヤピンカーブまで行ったのだが水流は見えず、回れ右してもとに戻ることにした。

  ヘヤピンカーブ付近からは下の写真のように格好の良い神室岳が見えた。
尾根の上に大きな岩の塊が乗っているような形をしている山で丸い頭の下に岩壁を廻らせ、なかなか迫力がある。
峠への帰り道の途中、そのあたりかなぁ、と思われる所のガードレールにオレンジ色のビニールテープが巻きつけられいるのを見つけたが数日前に路肩の籔の伐り払いが行われ、その伐採物に埋もれて水場への踏跡がまったく見えない状態になっていた。

笹谷峠宮城側ヘヤピンカーブ付近から見た神室岳

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8月23日
<行動時間>
   山形工高小屋(7:00)-笹谷峠(7:05)-ハマグリ山(8:05/15)-トンガリ山(9:47/55)-山形神室岳(9:30/45)-ダンゴ平(10:10)-仙台神室岳(10:50/11:00)-ダンゴ平(11:25/30)-本谷源流横断(11:45/50)-尾根東側小尾根下降点(12:20/25)-本谷尾根乗越(12:55)-本谷渡渉点1(13:02/07)-本谷渡渉点2(13:22)-本谷渡渉点3(13:35)- (13:45)仙人大滝登山口=[送迎車]=(14:00)ルポポかわさき

<概要と主要スポットの展望>
    山形工高小屋の泊まりはいたって静かだった。
ただ、夜中に鼠(?)が出てきて弁当の食べカスを入れたレジ袋を引っ掻く音が煩く、目が覚めた。
"それ" を追い払ったあと食べ物の袋とごみ袋とを天井に吊るしたら静かになり、明け方まで熟睡した。。
  翌朝は気温が高い以外、まるで秋のように澄み切った青空になった。
楽勝気分でのんびりコーヒを淹れて飲み、ゆっくりカップ麺を食べたあと支度をして出発した。

    前日満車状態だった峠の駐車場は、車中泊らしいのが1台と下から上がってきて山に入る準備を始めた二人組のがもう1台いるだけでガランとしていた。
  関沢への下り口から山形側を見ると下のパノラマ写真のように、中央分水嶺に相応しく山深いところに来ていることが分かった。

笹谷峠から山形側を見る    
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  峠から見上げたハマグリ山の登りはかなり急で少々気後れを感じるほどだったが実際に取付いてみると程よい傾斜のジグザグ道になっていて、おだやかに高度を稼いで行けた。
  高みに上がにつれて山形盆地方面への視界が広がってきた。
盆地の向かい側には飯豊や朝日の山並みが連なっている筈だが雲間に紛れて良く分からなかった。
急斜面が終わったところで後ろを振り返ると八丁平とカケスガ峰の先に雁戸山が立ち、その背後に蔵王本峰の特徴のあるスカイラインが見えていた。

ハマグリ山肩から南方 蔵王方面を見る    
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  ハマグリ山に上がると行く手にトンガリ山、山形神室、神室岳とその東尾根の連なりが一望できた。
美しい起伏の頂稜はなんとなく朝日連峰の縦走路に似ているような気がした。

ハマグリ山から見た県境稜線と神室岳    
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  平坦な尾根からやや急にひと登りしてトンガリ山に上がった。
幅広く緩やかな尾根の先に立っている山形神室が優美だった。
その右手に神室岳がモソッと頭を出していた。

県境稜線からみたトンガリ山・山形神室と特異な形の神室岳    
(画像をクリックすると拡大)
  山形神室に向かって草原状の広い尾根をゆっくり進んだ。
時季を選んで来れば一面のお花畑になっているのでは、と思った。
山の右手は宮城県の川崎町で、谷底を笹谷街道の道路が通り、右端には雁戸山など、北蔵王縦走路の山並み、その背後には南蔵王の烏帽子岳あたり思われる山影が見えた。

トンガリ山から山形神室に向かう所から見た宮城側の山と谷    
(画像をクリックすると拡大)
  緩やかに登って山形神室の頂上に着いた。
灌木に囲まれた小広場で、展望は僅かに西寄りの茂みの隙間から山形側が見えただけであまり良くなかった。
  思ったより順調にここまで進んで来られたので今日は楽勝と思いながらのんびり休んでいたら地元の熟年登山者がやって来た。
  神奈川から登りに来たと言ったら、この前は九州から来た人が居た。 "北" あたりに行けばよいのに、なんでわざわざ遠くからこんな山に来るんですか?、と聞かれた。
静かで山が荒れていないみちのくの山が好きだからです、と答えたたらフゥーンと言う風な顔をした。
  宮城側に入ると山陰になって携帯が圏外で繋がらなくなる恐れがあったので、歩きだす前に泊まり場のルポポに電話し、下山予想時間を知らせた。

  山形神室の先100m あまりの所に三叉路があり、縦走路から神室岳に向かう道が分かれてた。
分岐から暫らく平らに進んだあと高度差で100m ほど急降下して降り着いた鞍部がダンゴ平だ。
右手に仙人沢ルートが分岐していたが道標はなく、切り開かれた下降点の両側の笹に赤テープが結びつけられているだけだった。
  分岐の先からひと登りして小ピークを越し、中木の間を進んでゆくと頂上直下の急登になった。
低灌木の間の狭い切り開きを、灌木頼りに強引に直登して行くと傾斜が緩み、やがて平らな頂上の広場に着いた。
 
  西の正面は山形神室で右手へ徐々に高度を下げてゆく尾根が二口峠へ繋がっていた。
左手の南方、遠くには雁戸山から蔵王連峰が重なっていた。 

トンガリ山から山形神室に向かう所から見た宮城側の山と谷    
(画像をクリックすると拡大)
  北方は二口山域で真中に大東岳がどっしり聳え、そのまわりを糸岳、小東岳、面白山などが囲んでいた。
大東岳の背後には船形山から後白髭山、泉ヶ岳など、ここ数年で知り合った山々が並んでいた。
さらにその先には栗駒山や焼石岳がある筈だが雲間に紛れて分からなかった。

トンガリ山から山形神室に向かう所から見た宮城側の山と谷    
(画像をクリックすると拡大)
  静かな北の山の頂上の展望ををひとり占めして存分に楽しんだあと、灌木を頼りに急降下してだんご平に戻った。
頂上でのんびりし過ぎたのと急な登降に時間が掛り、下山が遅れそうなことを知らそうと仙人沢入り口で携帯を試したらうまく繋がった。
下山が30分ほど遅れることを知らせた上で仙人沢ルートの下降を始めたが、上部は至って穏やかで、中間部はかなり険阻、そして下部は滑滝の連なる美しい沢だった。


<笹谷峠-神室岳-仙人沢ルートの詳細>
 ルートの詳細は状況は下のリンクから GPS アルバム、あるいは元画像スライドショーで見ていただきたい。



神室岳ルートの GPS アルバム



Flickr の元画像スライドショー
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8月24日
<行動時間>
   
ルポポかわさき(9:30)=[送迎車]=(9:45)宮城交通川崎案内所[10:11+5]=(宮交バス \780)=[10:37+3]北赤石バス停[10:42+10]=(宮交バス \190)=[10:49+2]秋保温泉・里センター[12:00]=(宮交バス \780)=[12:53+]仙台駅[15:26]=(ハヤテ/コマチ#18)=[17:08]東京=大手町=[18:03]宮崎台
<概要>
    仙台行きのバスで帰途に就くため、宿の車で笹谷街道筋の谷の下手10Km あまりの川崎の町外れにある宮城交通川崎案内所まで送ってもらった。 
  案内所はレールのない駅舎のようなもので、広場の中に乗車券売り場兼待合室の建物がある。
今運行されている路線バスは仙台駅行きと大河原駅行きと合わせて1日10便たらずしかないのだがかつては各方面への路線バスが頻発していたようだ。
  なお、そのほかに町内各地を繋ぐ川崎町民バスが毎日30便ほど運行されている。

  宮交バス案内所の前の道路に出ると笹谷峠の山並みが見えた。
山の形から正面がトンガリ山と山形神室、その右にモッコリ高いのが仙台神室か、と思った。(左)

  川崎から仙台までは直行すれば1時間あまりなのだが、途中の北赤石で下車し、仙台発秋保温泉行きのバスに乗り継いだ。

  仙台・秋保間は比較的便数が多く、時刻表上の乗り継ぎ時間は5分ほどの筈だったが実際には大幅に遅れ、炎暑のバス停で15分以上も待つこととなった。
秋保の街の入口にビジターセンターとバスターミナルを兼ねた秋保の里センターがあり、仙台と秋保大滝を繋ぐ宮城交通と二口温泉と愛子との間に運行されている仙台市バスが発着している。

  まずセンターの展示室を見た。
かつて運行されていた茂庭鉄道の写真や模型鉄道のレイアウトがあった。
秋保の谷では良質な石材が産出し、それを運び出すために敷かれた鉄道が秋保温泉への客も運んでいたようだ。
  秋保の町や磊磊峡も見たいと思っていたが暑くてとてもその気になれないので、二口山域の案内地図を貰ったあと展示室の隣にある蕎麦屋に行ってざる蕎麦を食べただけで、午後1時のバスに乗って仙台に出て新幹線で帰路に就いた。
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☆おわりに
    遥々遠出して3日も掛けたのに神室岳だけではもったいないではないか、と言われそうだが、一年前に登った雁戸山頂上から怪異な姿を見て強く印象付けられたのに登り損ねたみちのくの名山に登れて広大な展望を楽しみ、変化に富んだ好ルートを元気に歩き切れたので大いに満足した。
さらに、春以来悩まされていた向脛下部の痙攣頻発トラブルからの脱出を確認できたのが嬉しかった。
標高900m 程の笹谷峠の小屋に泊まったのも良かったが、この位の高度でもごく軽度な類高山病の兆候が出るようになったことに気がついた。
年とともに徐々に生理能力が低下し、行動範囲が制限されてくるのは避けられないが、ちょっとしたケヤーで修復できた下肢痙攣トラブルのような例もある訳だから、色々工夫をしてできるだけ長く山登りを楽めるよう努めたい。
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