宮城・山形県境 船形山域と笹谷峠付近(2009.8.24-29)


☆期日/山行形式: 2009年8月24-29日  単独 無人小屋1泊・市中ホテル2泊・山間ロッジ2泊
☆まえがき
    この数年、夏のメイン山行はみちのくの山巡りになっている。
岩木山、八甲田、白神から始めたのが逐次南下。 昨年は宮城・山形県境の船形山から南蔵王山域あたりを歩いた。
南蔵王ではすばらしい花の尾根伝いをしたが、船形山は天気が悪く、泉ヶ岳への縦走はおろか雨と霧の中をただ登って降りてきただけで終わった。
面白山と蔵王との間には、幾つもの魅力的なピークがあるのにそれらもスキップしているので今回は船形山に登り直したあと後白髪山へ縦走、仙台から泉ヶ岳への日帰り、笹谷峠の麓に泊まって峠の南の雁戸山と、北の神室岳とに登頂する計画を立てた。

  天気の悪い夏で、東北地方は梅雨明け宣言も出ないまま8月になった。
好天が続くようになるのを待っているうちに立秋を過ぎてしまったが、どうにか天気の予測に成功。
天気が悪くなって登り損ねた神室岳以外はほぼ計画通り歩いて北の山の花と展望とを楽しんだ。

穏やかな起伏の中に岩峰・絶壁が連立している船形山域山形側    (画像をクリックすると拡大スクロールします)

☆行動記録とルートの状況


☆8月24-25日 旗坂-升沢避難小屋-船形山-蛇ガ岳-後白髭山-定義
<2万5千分1地形図>:
升沢(仙台6号-1)、船形山(仙台6号-3)、定義(仙台6号-2)
<行動時間>
8月24日(曇時どき晴)
    宮崎台[6:52]=大手町=[7:40]東京[7:56]=(ハヤテ#5)=[9:37]仙台[10:02]=(宮城交通バス)=[11:12]大和町上町[11:25]=(タクシー\5820)=[11:50]升沢登山口(12:20)-一群平(13:05/10)-鳴清水(13:45/50)-三光ノ宮(14:25/40)-瓶石沢(15:12)-(15:30)升沢避難小屋{泊}
8月25日(晴時どき曇)
升沢避難小屋(7:00)-千畳敷(7:55/8:00)-船形山(8:25/45)-蛇ヶ岳(9:55/10:05)-泉ヶ岳分岐(10:20)-後白髭山(11:05/30)-横川ルート分岐(11:50)-下空沢(12:35/55)-小休止(13:40/45)-4Km地点林道入口(13:55)-(14:00)横川林道分岐点(14:10)=(飯坂カップルの車)=(14:30)定義如来堂-定義バス停[15:18]=(仙台市営バス\1110)=[16:40]仙台駅=(市営地下鉄)=広瀬通{ホテル泊}
<概要>
    船形山は最短ルートの色麻-大滝ルートを使えば初日の泊まりが山頂避難小屋になって2日目が楽になるのだが、雨続きで林道の補修が遅れているという情報があったので、昨年と同じ升沢・旗坂ルートからのアプローチとした。こちらなら舗装路の末端から登山道が始まるので間違いない。


  天気が良かったお蔭で楽勝気分の入山となり、前回は五里霧中で何も見えなかった三光の宮の岩峰で船形連峰や仙台平野の展望を楽しんだ。(左)

  ふたたび泊まることとなった升沢避難小屋は3年ほど前に再建されたばかりの新しい小屋だ。
綺麗に維持され、すぐ裏に水流があって快適な泊まり場である。
同宿者はなく、久し振りの静寂境で爆睡した。



  2日目の朝は窓から射しこんだ日の光でようやく目が覚める朝寝坊となって出発が遅れたが、そのお蔭で朝霧が消え、船形山頂上では360度の展望が得られた。
山形盆地越しの月山や朝日連峰は雲の中だったが、南方の蔵王へ連なる山並みを縦観し、岩峰・大絶壁を連ねて迫力ある周囲の山々の景観を楽しんだ。
後白髭山への尾根伝いのはじめの部分、蛇ガ岳あたりまでは風衝裸地と草原が多く、さまざまな花が咲いていた。
この山は花の名山のひとつだ、と思った。

  蛇ガ岳の先で三峰山・泉ヶ岳へのルートを分けたあとは結構な薮ルートになった。
両側の潅木が覆い被さって視界が閉ざされたが、道形は明瞭で危険な場所もなかった。
ピークをひとつ越すとまた視界が開け、もう一段緩やかに登りきると、石畳を敷き詰めた後白髭山頂上に着いた。
こちらも船形山に劣らぬ展望峰で、いくらか近くなった面白山・大東岳などがよく見え、仙台平野から仙台湾への眺めが良かった。
地味系の典型のような山で週日だったのにもかかわらず、飯坂から来た熟年夫婦と出会ったのでビックリした。
先方も驚いていたようだった。

後白髭山頂上の展望    (画像をクリックすると拡大スクロールします)


横川コースを下ると言う夫婦と別れて上空沢・下空沢ルートを下ったが、後白髭コース登山口(4Km地点)から林道歩きをはじめ、横川林道分岐点に差し掛かったら、角に停めてあった車の横に降りてきたばかりの飯坂のご夫婦に再会し、二度目のビックリとなった。

お蔭で、定義まで車に乗せてもらい、1時間半ほどもの林道歩きを省略、ユックリ定義如来に拝観したり、名物の揚げ豆腐を食べたりしたあと、早い時間に仙台市内の泊まり場へ向かうことができた。



  船形山-後白髭山ルートアルバム
  (EveryTrail: Geotagging Community)


Flickr のスライドショー
    [24-25Aug2009_Funagatayama]


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☆8月26日(曇) 仙台-泉中央-泉ヶ岳-仙台
<2万5千分1地形図>:
定義(仙台6号-2)
<行動時間>

    地下鉄広瀬通[6:38]=(市営地下鉄)=[7:53]泉中央駅/バスターミナル2番乗場[7:15]=(市営バス\780)=[7:55]泉岳青年の家(8:00)-リフト終点(8:50/8:55)-鞍部(9:05)-小休止(9:55/10:00)-泉ヶ岳(10:15/30)-水神(10:15/30)-水神平(11:10)-(12:10)泉岳ロッジ、泉岳青年の家[13:05]=(市営バス)=[13:55]泉中央駅=(市営地下鉄)=広瀬通{ホテル泊}

<概要>
    久し振りに中型ザックを背負って船形山から後白髭山への尾根伝いをした次の日は、仙台市内のホテルから泉ヶ岳への日帰り山行を行った。
この山は仙台平野に面して標高が1172m あって結構な高度差があるのだがアプローチは至って便利で、中心街から地下鉄16分の泉中央駅で市営バスに乗り継いで50分の泉ヶ岳ロッジから登れる。
市営の少年自然の家があり、スキー場などの設備も整っていて、仙台市民には四季を通じて親しまれているようだ。
(画像をクリックすると拡大します)

  週日だったせいか、早朝のバスで終点まで行ったのはひとりだけ、広い駐車場に数台の車が停まっていたものの、あたりに人影はなく、幾らかはあてにしていたスキーリフトも動いていなかった。

  スキー場の中を適当に登ってリフト終点から眺めると山麓高原の先に仙台市街が広がっていた。
北に偏った高気圧からの北東風のせいで低い雲が被さり、やや陰鬱な景色になっていたのが残念だった。
  頭のすぐ上は雲の層で、頂上がどちらにあるのか見当をつけ難い状態だったがスキー場上端のフェンスの脇に立っている指導標・地図看板と持ってきた地形図とを照合して鞍部に向かう歩道に入った。
  鞍部を乗越し、30m 近く下って行った所にかなり広い湿地があって色々な花が咲いていた。
早い時期にはここに池塘ができるようで "岡沼" と言う地名がある。
湿地の向かい側から尾根の裾に取りつき、ジグザグにひと登りすると尾根の背に乗り、頂上に向かう急登が始まった。大勢の人通りがありそうな感じの山道だが整備がよく、登り難い所はなかった。

  傾斜が緩むとともにまわりの樹高が低くなり、やがておわかれ峠から登ってきた道と出合う。
さらにひと登り、急登すると大石がゴロゴロしている直径30m ほどの平坦な頂上広場に出た。
低潅木に囲まれ、山名標柱と "熊野神社祈祷御守護" と墨書きした山開きのお札を納めた祠があった。

天気が良かったら隣の北泉ヶ岳まで足を延ばそうと思っていたが霧の中では意欲がわかず、西面の水神コースを下ることにした。
2、3度、火山性の裸地を横切って下ってゆくと雲の層の下にでた。
仙台平野の水源となっている七北田川源流の谷間が見えてきた。
谷向いは昨日登った後白髭山が立っている筈と思ったが、みな雲の陰で定かではない。
下降路の途中から登ってくる人と頻繁にすれ違うようになった。
大部分は健康ハイキングに来た御老人(ではなくてご同輩!)達のようだった。

  大きな石に "水神" と記した石碑の袂で谷底の道に合流するとそのあとは至って歩きやすい道になった。
尾根の端を回りこんで行って車道に出たところに少年自然の家の大きく立派な建物があった。
さらに500m ほど、園地の中を歩くと朝の出発点だったロッジに着いた。
スキー場の上空は沢山のパラパントが舞っていて賑やかだった。
ロッジも明かりが点き、窓が開け放たれていた。
2階の食堂で食べた牛丼の味はマァマァながら味噌汁の方は飛び切りだった。
  泉ヶ岳は、地形の変化と稙生の豊かさと展望に恵まれ、とてもよい山だと思った。

  この日の山は半日で終わり、午後早くホテルに戻ったが、ヤマセのお蔭で肌寒いくらい涼しかったのを幸い、夕方から仙台街中散歩をした。
後半の北蔵王山行に必要な食料などを調達してホテルに戻り、以降の山歩きには不要になった寝袋などを宅配便で家に送り返した。



泉ヶ岳のルートアルバム
  (EveryTrail: Geotagging Community)


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    [26Aug2009_Izumigatake]


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☆8月27日(晴れのち曇り) 笹谷峠-雁戸山-笹谷
<2万5千分1地形図>:
今宿(仙台7号-4)、笹谷峠(仙台11号-2)
<行動時間>

    広瀬通=(市営地下鉄)=仙台駅[8:00]=(宮城交通バス\1100)=[9:21]野上かみ=(宿舎送迎車)=[9:55]笹谷峠(10:05)-関谷ルート合流点(10:55/11:00)-滑川ルート合流点(12:00/10)-雁戸山(12:40/13:00)-笹雁新道1370m峰(13:50/14:00)-堰堤(14:50/15:00)-林道終点(15:30)-(16:00)笹谷{町営るぽぽかわさき泊}
<概要>
    仙台から笹谷に移動する日は大陸起源の移動性高気圧のお蔭で最高の登山日和になると予想された。
時間的には少々問題があるが、より難度の高い雁戸山の方を先に登ってしまうことにした。
仙台駅前8時発の朝一番のバスが笹谷峠入口の野上(ノジョウ)かみに着くのは9時21分だが、宿舎の送迎車に乗り継いで峠に直行すれば10時頃には登りだせるから、日のあるうちに宿舎のある笹谷に下山できると計算した。

奥州笹谷から羽州関沢へ、北蔵王の稜線を乗り越す笹谷峠道はもと国道なのだが下手なスーパー林道より厳しいのではと言うほど険しい道だった。
笹谷峠は広大な低潅木の原で広い駐車場があり、その向い側から南に向かう舗装路が雁戸山ルートの入口だった。
入口近くに立つ送電線鉄塔の脇から200m ほど進んだ右手に山形工高小屋があり、その脇から本式の登山道になった。
小屋の中を覗いてみたら床に畳が敷かれ、外観の古さとは対照的な清潔さだった。
水場もそれほど遠くなさそうだから泊まり場として利用価値があると思った。
緩々と1時間ほど登った所で関沢からのルートが合流し、さらに1時間ほど登って着いたカケスガ峰と前山の鞍部で滑川ルートが合流した。

  ここから先がこの山の登路の核心部で、ノンビリ景色を眺めながら歩くのは難しくなる。
まず前山の肩を巻いて行くのだが、かなりの急斜面を、木の根を乗り越しながら横切ってゆく踏跡だった。
無雪期でも雨に濡れれば滑りやすくて要注意だし、残雪期には相当危険な状態になるに違いない、と思った。

  トラバースを抜けて稜線の上に乗ると、正面に蟻の戸渡りと呼ばれている痩せ岩稜の起伏が立ちはだかる。
尾根の両側が切れ落ちていてかなり迫力のある景色だったが、実際に取り付いてみたら両側に薮が密生しているお蔭で高度感がなく、足許に注意してさえいれば問題なく進めた。
むしろ大変なのは最後の本峰への登りだった。
這松の間の長い岩場の急登では、固定ロープの助けが得られたものの、かなり扱かれた。

  息を切らせて登りついた頂上では、切り立った地形と好天のお蔭で広大な展望が得られた。
南の方には真近かに迫った蔵王連峰が巨大な山体を横たえていた。
北の方は流れる霧で見え隠れしている仙台神室の怪異な姿が印象的だった。
狭い頂上広場では地元現役勢4人が休んでいたので、飲み食いをしながら、暫くの間、話をした。

雁戸山頂上からは眺めた山形蔵王連峰    (画像をクリックすると拡大スクロールします)

最後の急登で心身がバテたので南峰への往復はギブアップし、直接笹谷に下降する笹雁新道から下山することにした。
下降点でトライしたら携帯が繋がったので、宿舎に到着予想時間を知らせたあと下降を始めたが、下り始めの100m ほどはかなりの急斜面で要注意だった。
最低鞍部から1410m 台の前衛峰へ約60m 登り返すと穏やかな這松尾根に乗って緊張から開放された。
振り返ると今下りてきた山のギザギザの頂稜がが霧に見え隠れしていた。
笹雁新道1410m ピーク付近からみた雁戸山と蟻の戸渡り    (画像をクリックすると拡大スクロールします)
2度ほど火山性のグズグズの裸地を横切って進んだあと尾根の右側斜面を急降下して谷に下りつくと穏やかな森の中の道になった。
2時間近くかかって降り着いた谷底の堰堤を乗り越し、さらに荒廃した林道を30分ほど歩いてようやく笹谷の国道に出て右折、500m ほど歩いた所にあるスキー場の建物の前で橋を渡ると、このあたりで唯一の泊まり場である "るぽぽかわさき" に着いた。
ここは川崎町営交流センターで、リーズナブルな料金ながら設備と食事が良く、快適な泊りができた。



雁戸山のルートアルバム
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    [27Aug2009_Gantoyama]


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8月28-29日(曇時々雨) 国立みちのく公園と支倉常長の墓
☆地形図(2万5千分1):
今宿(仙台7号-4)、陸前川崎(仙台7号-2)
<行動時間>

    8月28日(曇時どき雨)
笹谷=(宿舎送迎車)=国営みちのく杜の湖畔公園(10:00/12:00)-(12:10)川崎特産センター[13:06]=(川崎市民バス)=[13:33]富岡支所前-円福寺支倉常長の墓-富岡支所前[14:37]=(川崎市民バス)=[15:21]川崎町役場-(15:40)川崎駅=(宿舎送迎車)=笹谷{るぽぽかわさき泊}
8月29日(雨のち曇)
笹谷[9:30]=(宿舎送迎車)=[9:45]野上かみ[10:10]=(宮城交通バス\1100)=[11:29]仙台駅前/仙台駅[12:26]=(ハヤテ#4 \5780+E5010)=[14:08]東京[14:23]=(\400)=[14:24]大手町=宮崎台

<概要>
  笹谷の2日目は神室岳の予定だったが天気が崩れたため川崎町内を観光し、国立みちのく公園と支倉常長の墓を訪ねた。
神室岳は、最終日に登って帰ることもできるようなスケジュールを設定していたのだが三日目も天気が良くならず。
この山は次の機会の楽しみに残して仙台経由、帰宅した。
宿の人たちの話では、この地域は上越国境と同じように天気が悪い所で雲が発生しやすく、すぐ曇ったり降ったりになるのだそうだ。



国立みちのく公園と支倉常長の墓
  (EveryTrail: Geotagging Community)


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    [28Aug2009_MichinokuPark]


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☆おわりに
    7月下旬に行なうつもりだった夏山メイン山行が立秋過ぎてからとなったが、初日から4日目までは好天に恵まれ、最後の神室岳以外はほぼ計画通りに歩けた。
船形山は想像以上に素晴らしい山で登りなおした甲斐があった。
広大な展望と、多くの花と、ブナの森を楽しんだ。
泉ヶ岳は仙台市内から手軽に登れるにもかかわらず、自然林や湿原など変化に富んでいるのがよかった。
雁戸山は東北の山としては険阻で登り応えがあって展望も優れていて、そこらの百名山などふっ飛んでしまう、と思うほどの良い山だった。

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