丹那-氷ヶ池-玄岳-熱海(2009.1.28)


☆期日/山行形式: 2009年1月28日 単独日帰り
☆地形図(2万5千分1): 熱海(横須賀13号-3)、網代(横須賀13号-4)

☆まえがき
    熱海の裏山 玄岳は、伊豆半島の根元のくびれた部分の最高所になるため展望が優れている。
ただ、山頂のすぐ下を伊豆スカイラインが通過しているので、車で行けばアッと言う間に登れてしまい、まともな山登りの対象にはならない、とも言われているようだ。
  つむじ曲がりの年寄りの発想で、JR函南駅から丹那へアプローチして頂上に上がり、山の裏側を降りて熱海に下山すれば幾らかは面白い山歩きにできるのではないかと考えた。

  出かけたのが、やや雲が多くて冷たい風が吹く日だったため、富士山は雲間に隠れがちだったが、稜線真近かの氷ヶ池では思いがけない美景にめぐり遭えた。
頂上では360度の展望を楽しみ、美しい森の中を歩いて熱海に下山した。

  玄岳への登降ルートはガイドマップに実線で表示されているが、出かける前に見た数年前の記録に、丹那側ルートは登山道の真ん中に笹が生えていて道標もほとんどない、と書いてあった。
最悪薮漕ぎもありうるのでは、と想定していたが、実際にはそのようなことはなく、終始まともな登山道を歩いて登降できた。
ただし、丹那側にはごく少数の目立ち難い道標があるだけで、これらを見落とさないためには、かなりの注意が必要と思った。
電子国土ウエブからプリントして行った 15000分1 の詳細な地形図が大いに役立った。

玄岳頂上の展望  
(画像をクリックすると拡大します)
☆行動記録とルートの状況
<タイム記録>
    宮崎台[6:55]=中央林間=相模大野=小田原=熱海=[9:14]函南(9:25)-[Taxi \2590]=(9:45)丹那水道記念碑(9:55)-熱函道路(10:30)-登山道入口(10:45/50)-氷ヶ池(11:20/25)-伊豆スカイライン(11:30/35)-玄岳(12:00/15)-熱海新道(12:40)-車道出口(13:00)-玄岳入口バス停(13:15)-(13:25)紅葉ヶ丘バス停[13:32]=(東海バス)=熱海駅[13:53]=藤沢=中央林間=[16:01]宮崎台


◆小田原から熱海を経て函南駅まで行き、タクシーで丹那までアプローチした。
熱函道路から丹那盆地に下り着いたところに大石碑が数基立っている。
何かの記念碑と言うことしか分っていなかったのだが、碑文を読んでみたら、湧水が減少したのを補う水道が完成したのを記念するものということが分った。

  子供時代に、困難を極めた東海道線丹那トンネル開鑿工事の記録の本を読んだことを思い出した。
何かそのようなことが書いてあったような気がする。
  平坦な盆地の向かい側のスカイラインの高みが玄岳のようだった。
  特段、道標などは見当たらなかったので、地形図とまわりの景色を見比べて方向を定め、農道を進んだ。

  盆地を横切ってその向かい側の斜面にまばらに人家が散らばる集落の中をうねり登って行く途中に "丹那断層" がある筈だった。
注意しながら歩いていったのだが、その所在を示す目印を見つける前に、熱函道路に突き当たった。

  手前の角にあまり神社っぽくない最勝不動がある。
車に気をつけて道路を渡ると、向かい側の角に左のような目立たない道標が立っていた。
玄岳登山道、スカイラインまで2.1Km と記されている。

  地図読みがうまく行き、正しい入口を探り当てられたのを確認でき、ホッとした。
やや急な舗装路の坂道をうねり登ってゆくと牧場があった。
右側の柵の中には優に50頭を越す黒白斑の牛がいて、こちらを見ている。

  道の左側は牧草地になっていて、先の方に箱根山の西側斜面が見えていた。
数年前、旧友とふたりで函南原生林から山中城址へ歩いたあと、長い旧道を三島まで下った。

  牧場の先で右手に回りこみ、ひと登りした所に登山道の入口があった。
ここにも目立たない保護色の道標が立っていた。
地形図に実線で表されている舗装路から直角に分岐している破線路の分岐点だ。
"玄岳登山道 スカイラインまで 1.4Km"  と記されていた。

  はじめのうちはコンクリートで簡易舗装されていたが少し先から土道に変わった。

  杉林の中を左に僅かトラバースして小尾根の背に上がった。
幅広の道で、かつては人通りが多かったようだが、やや荒れ気味で大きな浮石がゴロゴロしている。

  尾根上をひと登りしたあとまた左手にトラバース気味に斜上してゆくと杉林が終わって箱根笹の間に入った。
密生した笹薮は、人はおろか獣でも通れないだろうと思うほどだったが、道形の部分は定期的に伐り払われているようで、まばらに若笹が出ているだけだった。



  左下の笹の間を登ってきた道を合わせたあと、ひと登りの所にある曲がり角で視界が広がった。
富士山と愛鷹山が見えた。

  右手に回り込んでもうひと登りすると徐々に傾斜が緩み、前方の笹の間に稜線が見えてきた。
平坦で穏やかになった笹原の道を進んでゆくと、右手の玄岳頂上へ直登するルートの分岐があった。
先の方から車のエンジン音が聞こえてきた。

  古びて白骨化した道標を通り過ぎた先で、右手へ曲がり降りてゆくと突然目の前が開け、広い水面が見えてきた。
氷ヶ池はたっぷり水をたたえた大きな池だった。
まわりが庭園のように綺麗で、このルートを登って良かった、と思った。

 伊豆スカイライン 氷ヶ池    (画像をクリックすると拡大します)

  池の脇から僅かで伊豆スカイラインに上がった。
何度か車で通っている道路だ。

  車に気をつけて道路を横切り、向かい側に渡ると、大きくカーブしている道路の向かい側に玄岳の高みが見えた。



  路肩に上がって僅か進んだ所で玄岳頂上への山道に入り、来し方を振り返ると、氷ヶ池が目の下に広がっていた。
少し北の方に何かの展示館と思われる建物があった。





  霜解けで滑り易い急坂にロープが固定してあった。
ひと登りすると山の裏側に広がる駿河湾、そして熱海の市街が見えてきた。(下)
 
伊豆スカイラインと熱海・駿河湾     (画像をクリックすると拡大します)


  急登が終わって潅木と笹の台地に上がった。
雲が多くて風も冷たいが明るい高原状の山の上は気分が良い。

  間もなく熱海から登ってきたルートが合流した。
合流点に立っている道標に熱海市街まで約2時間と記してあった。

  笹原の中を良い気分で進んでゆくと玄岳の頂上が近づいてきた。

  頂上は広い笹の切り開きになっていた。
その片隅で3人組の熟女が休んでいた。
切れ切れに聞こえてくる話し振りは、まるで少女のようだった。

  雲が増えて富士山が見え難くなってしまったのが残念だったが、南西から北の方にかけて広大な視界が開け、伊豆の金冠山から沼津アルプス、愛鷹山、富士を経て箱根山まで、冒頭パノラマ写真のように広大な展望が得られた。

空気の澄んだ日に是非とも再訪したいと思った。
 (画像をクリックすると拡大します)

  笹を風除けに座り込んで休みながら、僅かな飲み食いをしていると3人組がスカイラインの方に降りていった。
暫くすると汗ばんだ着物が風にあたって冷たくなってきたので腰を上げた。

  熱海ルートへの分岐付近には "リンドウ平" と記したサインがあった。
平坦な笹原の中の切り開きで、花の咲く時季に来れば最高の休み場になるに違いない。

  熱海の奥の谷に向かって下降を始めようとする所では、和田山へ流れ下る谷間が見えた。

  やや急な斜面を右手に向かって斜めに下降し、谷底まで降りついた所で左折する。
曲がり角に、"緑のシャワーでリフレッシュ、身も心も元気じるし、帰るとき 私は新品です!" と言う名文句の道標が立っていた。

  谷底を緩やかに下ってゆく道の両側は綺麗な潅木林だった。

  まもなく熱海新道の上を跨ぐ橋に着いた。
橋を渡った所で振り返ると、いま下りてきた山がずいぶん高く見えた。

  橋を渡って暫くすると孟宗の竹林が現れ、人里が近付いていることが感じられる。
やがて、建設会社の倉庫が見えてきて、その横手を過ぎたところで舗装路に飛び出した。

  出口の脇に"玄岳ハイクコース入口"、"美しい展望360度" と記した道標が置いてあった。

  舗装路の急坂を15分ほど下ると広い道路に出た。
出口のすぐ近くに "玄岳登山口" バス停のポストが立っていた。
熱海駅行きのバスは、30分ごとくらいの頻度で運行されていたが、タイミングが悪くて20分以上待たなければならなかった。

  蕎麦屋でも見つかれば食べたいと思ったので駅のほうへ歩いて行ったら10分足らずで東海バスのターミナルに着いた。

  入口に "紅葉ヶ丘" と記したバス停ポストが立っていて、あと6、7分ほどもすれば熱海駅行きのバスが出ることが分ったので立ち止まった。
急いで山支度を解いていたところへ、車庫からバスが出てきたので、身の回りのものをかき集めて乗り込んだ。

  走り出したときはほかに客がいなかったが、熱海の居間や寝室にあたる住宅街の中を走って行くと三々五々乗り込んできた。
繁華街に入りかけた所に寒桜が咲いていた。
海岸沿いの道路まで下ったあと、お宮の松の公園の脇を過ぎ、左に回って坂を登ると駅だった。

  上りの電車にはジャストインタイムで、ほとんど待ち時間なしの乗り継ぎとなった。
帰り道は乗り換え回数を減らすため、藤沢-中央林間ルートにした。
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☆おわりに
  熱海の玄岳は、昔はポピュラーなハイキングコースだったようだが今はなかば忘れらているようで、県別ガイド本などにも紹介されていない。
ガイドマップには赤実線が引かれてはいるものの、丹那側ルートの状態に不安があったのだが、案外スンナリ歩いて頂稜に到達できた。
頂上の展望もさることながら、伊豆スカイライン真近かの氷ヶ池のまわりと、下降路の谷間の林がとても綺麗だった。
思いがけずよい山歩きができ、割といい気分だった。

〔参考のためルート図を作った。 手書きのため綺麗ではないが、GPS トラックのようなノイズ跳びはない。〕