宝登山、長瀞アルプスルート (2008.3.2)


☆期日/山行形式:
2008年3月2日   単独 日帰り、リハビリ目的軽ハイキング
☆地形図(2万5千分1):: 鬼石(宇都宮16号-3)

☆まえがき
     12年ぶりで腸閉塞になって入院し、2月の大半を病院で過ごすこととなった。
腸閉塞は胃の手術を受けると起こりやすくなる消化管の不具合だ。
術後10ヶ月の海外出張中になって、大変な目に遭ったのだが、そのあと12年間も無事だったため、もう心配ないと、油断したのは間違いだった。

  幸い手当てが早かったので順調に回復。  入院3週間のあと元気になって家に帰ったのだが、毎日ベッドでゴロゴロしていたため、もともと弱り気味になっていた足腰はガタガタになった。

  別段病巣が残るような病気ではないのだし、まだ数年の間は山を歩きたい。
退院後一週間ほどで体調が落ち着いてきたところで初のリハビリ山行に出かけてみた。

  行き先は長瀞の宝登山。  寒中に咲く蝋梅で有名だ。
元気なときにはいささか物足りない山のため、これまで足が向わかいままになっていたのだが、いまの体調では、目一杯かそれ以上かもしれない。
ロープウエイで登降することもできるがそこまで手抜きをしたらトレーニングにならないので、ひとつ手前の野上駅を起点とする、所謂、長瀞アルプスルートからの登頂をトライしてみることとした。
ルートのネーミングは "アルプス" などと大仰だが、頂上から東に派生してい緩やかな尾根を約2時間掛けて登ってゆく穏やかな尾根ルートだ。

  総登高差が360m のうち取付から奈良沢林道までが約200m、林道で山腹を巻いて北尾根に乗り移って頂上までが約160m。
最後の登りは一人前の傾斜があって割と急だから、ここで疲れてしまった時は、ロープウエイで下山する。
もっとコンディションが悪く、前半の尾根で苦しくなってしまった場合は、天狗山、氷池、野上峠、奈良沢林道と、4本あるエスケープルートのいずれかを下ればよい。


宝登山頂上の展望 
 (画像をクリックすると拡大、自動スクロールします)

  行程のあらましは、 東武東上線寄居駅を経て秩父鉄道野上駅(138)までアプローチして歩き出して万福寺(145)から尾根に取り付き、天狗山(304)肩、氷池分岐(265)を経て野上峠(265)へ。  さらに、奈良沢林道(300)を歩いて宝登山入口(340)から宝登山(497.1)に上がり、蝋梅園、梅花園を見たり、周囲の展望を楽しんだあと、下山。
山麓の不動寺(210)、もう一段下の宝登山神社(185)に参詣したあと、秩父鉄道長瀞駅(135)に出て往路を戻る、と言うものだった。

山行日は薄曇りながら穏やかな天気となった。
その蔭もあって、思ったよりも順調に歩け、まだ山歩きを続けられそうだという自信が得られた。


☆行動記録とルートの状況
<タイム記録>
    宮崎台[7:21]=渋谷=池袋[8:18]=(東上線)=小川町=寄居=(秩父鉄道)=[10:18]野上駅(10:35)-万福寺(10:45)-天狗山・御嶽山分岐(11:10/20)-氷池分岐(11:31)-野上峠(11:37)-奈良沢林道(11:47)-宝登山入口(11:55/12:00)-宝登山(12:22/55)-不動寺(13:35/14:00)-(14:15)長瀞駅[14:40]=寄居=小川町=[16:23]朝霞台/北朝霞[16:29]=府中本町=溝の口=[17:35]宮崎台

◆秩父の山は少々遠い。
家を出てから3時間あまりも掛かってようやく野上駅に着いた。
薄曇りで風もやや冷たいが穏やかな空模様だった。
駅前広場の片隅で身支度を整えて歩き出した。


  国道を横切って集落の裏側の田圃沿いの道に出るとこれから辿る尾根が見えてきた。(左)

  暫く歩くと万福寺の築地の塀があり、その角に "宝登山、長瀞アルプス" と記した道標が立っていた。

(画像をクリックすると拡大します)

  道標の角を左折して山に向かい、道なりに進んで行くと小沢の中に入る。
緩やかな登りだが病院ボケした身体には結構きつい。

  最初の登りでバテたのでは話にならない。
前後を歩いている人達のことは気にせず、マイペースで、ひたすら自分の身体と相談しながら歩いた。

  短い谷の奥から右手の斜面を登りあげると尾根の背で、左に進むと宝登山と記した道標が立っていた。

  尾根は大部分が落葉樹林に覆われていて、この季節は葉が落ち、明るくて気分が良い。

  ルートが山の右側に入ると霜解けで泥濘になっている所が多く、注意しないと滑りそうだった。

  山道に入って30分ほどの所に天狗山・御嶽山分岐があった。
ここが最初のエスケープルートの入口だが尾根に上がったあとは体調が落ち着き、割と楽に歩けている。

案外順調に登れるのかも知れないと思いながら先に進んだ。


  天狗山分岐から約15分ほどの所に小高い小ピークがあった。
地形図に304m と記されたピークと思われた。

  スローペースながら駅から歩き出して1時間以上休んでいないので頂上の丸太の上にザックを下ろした。

  小休止のあと、先に進んで行くと、前方に宝登山のモッソリした三角形が見えてきた。(左)

  少しの間桧の植林の中を歩いたあと、また自然林に出て緩く下っていった所に氷池分岐があった。

  分岐点の脇で老女がふたり休んでいた。
声を掛けて断り、分岐点付近の写真を撮らせてもらった。
両方とも曾孫がいてもおかしくなさそうなお年だ。
元気なものだ。


  氷池分岐から緩やかな登りを越して行ったところに野上峠の道標が立っていた。
野上から登ってきた道が山を乗越し、裏側の山形へ下っているのは分かったが、ごくささやかな尾根の窪みで、期待していたような明瞭な鞍部ではなかった。
道標がなかったら気が着かずに通り過ぎてしまうかも、と思うほどだった。

  野上峠から僅か進んだ所の道端に丸太を輪切りにした腰掛が幾つか並んでいた。
そのあたりが小鳥峠と呼ばれている所らしいと思ったが、そこから僅か歩いた所で舗装車道に出た。
長瀞から登ってきている奈良沢林道だ。

  車道はところどころの日陰に消え残りの雪が凍結していた。

  10分あまり歩いたところに宝登山への登り口があった。
毒キノコに注意と、絵入りで記された看板が珍しい。

  後から大パーティが来たのでやり過ごそうと道端の切り株に腰を下ろしたのだが先方もここで休憩する様子だったので仕方なく腰を上げ、最後の登りに取り掛かった。

  宝登山への最後の登りは一人前に急だった。

入口からひと登りした所でかなり急な丸太階段が始まり、30m 強の高度差を登って尾根の背に乗った。

  少しの間平坦な尾根が続くが、やがて急な階段が見えてきて50m あまりの高度差を2段に登る。(左)

  このあたりでバテるかもと、少々心配していたが、スローペースながら意外と順調に登って行けた。



  また平らな尾根を進んだあと短い階段を登り、露岩のある所を過ぎると前方に頂上広場が見えてきた。

遠くから見た山の形から想像していた通りのゆったりした頂上で、ハイカーだけでなく、山表の長瀞の方からロープウエイで登って蝋梅を見に来た家族連れや二人連れも大勢いて賑やかだった。
広場の西端に近いベンチが空いたのでザックを下ろして休憩。

  目の前に秩父盆地とその周辺の連山が連なり、ページ冒頭のパノラマのような大展望を楽しむことができた。

  頂上から下りかける所は一面蝋梅園になっていて、黄金色の花が盛りだった。

  ロープウエイ駅に下りかける角に宝登山神社の入口があった。
社殿は小さいながら風格があって、大山祇神はじめ三柱の神が祭られていた。

  参詣して賽銭を上げ、また山が歩ける見込みが立ったことを感謝した。




  社殿正面の鳥居の脇に出てみると荒川谷の向かい側に皇鈴山から大霧山への外秩父連山が綺麗に見えた。


  もとに戻ってロープウエイ駅の方に下った。



  蝋梅園の下は梅園になっていて紅梅白梅が色付き始めていた。
あと一週間も経てば見ごろになりそうに見えた。

  右下にロープウエイ駅を見下ろしながら山の左手に回り込んで行くところからは未舗装ながら中型4WD車が走れる位の道になった。

  すぐに神社の石段の下を通ったので見上げたらすぐ上にさっきいた鳥居が見えた。


  すぐ先の広場の奥に小動物園のゲートがあり、その手前から右手に下山路が続いていた。

  桧林の中を頻繁に折れ曲がりながら高度を下げて行く事が多かったが、途中に切り開きがあり、谷向かいの連山が良く見えた。

  ところどころにショートカットがあった。
適宜近道をしながら下って山裾に降り着くと、左側の木が伐り払われ、不動山から陣見山あたりの連なりが見える所があった。(下)

(画像をクリックすると拡大します)


   山を降りきった谷向かいに不動寺があった。
案外小さな寺だったが、下手にある大きな広場に大勢の人が集まっていた。

  広場の中央を四角に囲った中に山伏達が立ち並び、祈祷を始めていた。

  見物人の仲間に加わり、路肩の斜面に腰を下ろして見ていたら、やがて、囲みの真ん中に積み上げられた杉の枝の山に火が着けられた。

  すぐにあたり一面もうもうと煙に包まれ、その中から一段と高まった読経の声が聞こえてきた。
   暫ら経って煙が薄て来ると赤い炎が見えてきて、あとは時間とともに火勢がどんどん強まった。
斜面を下って囲いの近くに寄り、火が衰え始めるまで見物した。
山伏は大峰の奥駈道で何度か出遭っているので珍しくはなかったが、セレモニーを見るのははじめてだったので、非常に興味深くみた。

  駅に向かって長い参道歩いてゆくと、"柴灯大護摩 火渡荒行" と染め抜いた横断幕が掛かっていた。
たまたま、春の訪れを知らせる祭りの日に当たっていたようだった。

  長瀞駅でひと列車見送ったら次ぎの列車まで30分弱の待ち時間ができた。
駅の横手の店に入って、山菜蕎麦を蕎麦を食べていたら、駅前広場に獅子舞のグループが来た。
太鼓と笛の単調な調べに乗った素朴な舞いだった。
子供の頃、田舎の町の祭りで見た獅子舞と同じなように思った。

  タイミングよく蕎麦を食べ終えたので、駅への戻り掛けに隣の店で梅の甘露漬けを買った。
大野山から札所四番金昌寺に下山したあと、秩父駅の売店でたまたま買ったのが始まりで、この頃の好物になっている。
僅かな数分の待ち時間で予定の電車に乗り、皆野まわりで帰途に就いた。

                                                                                                          ページ先頭へ


☆おわりに
  思いがけない入院をしたので、その後のQOL(Qualty Of  Life)がガタンと低下してしまうのでは、と心配したが、意外と調子よく山が歩けることが分かった。
まだ数年は山を歩けそうな心証が得られたのは、嬉しい事だった。

  2、3月に予定していた山の計画は全面的に組みなおすこととなるが、体調に気を付け、食べ物と食べ方に注意しながらトレーニングを進め、体力の復活を図りたい。
当面の目標は、5月の連休明けに予定していた熊野古道グループ初回の伊勢路歩きを無事に歩き通せるようにすることだ。