三峰山から鉢伏山へ(2007.10.06)


☆期日/山行形式:
2007.10.6 単独、日帰り

☆地形図(2万5千分1): 霧ヶ峰(長野16号-1)、鉢伏山(長野16号-3)、
                                   山辺(長野15号-4)、松本(高山3号-2)
☆まえがき
    美ヶ原から霧が峰、蓼科、北八つを経て南八ヶ岳南端の編笠山までの尾根筋の地図は、長年の山通いの間に書き込んだ赤線が繋っている。
ただ、三峰山の頂上から西に派生し、鉢伏山へ連絡する尾根だけは空白で、この山域最長の未踏部になっていた。

  久し振りの日帰り山行で歩いてみたら、予定を1時間以上超過してどうにか踏破、と言う結果になった。
  かなりバテたのは、年寄りのくせに風邪気味を押して出かけたこともあったが、予想外に笹が繁茂し、2時間ほどの笹薮漕ぎを強いられたのが主な原因だった。

  笹が深かったのは二ッ山の登路から前二ッ山頂上付近まで。
深さは腿から胸位まで、笹原の上面の凹みを見当に掻き分けて行く所が多かった。
ただし、要所に道標と赤テープのコースサインがあるのでルートは明瞭、迷うような所はない。

三峰山頂上と、二ッ山頂上から鉢伏山への稜線は笹原になっていて広大な展望を楽しんだ。

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笹原に枯木が林立する二ッ山頂上    (画像をクリックすると拡大、自動スクロールします)

☆行動記録とルートの状況

<タイム記録>
    宮崎台=長津田=八王子[7:01]=(アズサ#7)=[9:11]下諏訪駅=[Taxi \6700]=三峰山展望台口(9:40/45)-三峰山(10:10/15)-悪沢分岐?(10:49)-鳥獣保護区標識(11:45/50)-二ッ山 (13:15/35)-横川山標識(13:47)-前二ッ山(14:20)-鉢伏山分岐(14:55)-鉢伏山肩(15:10/20)-造林小屋(16: 05)-扉温泉桧の湯(17:10/入浴¥300/17:45)=[Taxi \5000]=(18:10)松本駅[18:35]=(スーパーアズサ#34)=[20:36]八王子=長津田=宮崎台

◆朝、ソコソコの早起きをして八王子駅に行き、特急あずさで山に向かった。
秋の三連休の初日で、甲府と茅野で降りる登山者が多かった。

  下諏訪で下車し、駅前でタクシーに乗り継いだ。
旧中山道の国道を走り、和田峠でヴィーナスラインに入ってひと走りすると三峰山の下にある展望台に着く。
何台か、ドライブの車が来ていた。

  前夜のテレビの天気予報は晴れだったが、期待ほどとはならず、空一面を雲が覆っていた。
ただ、降ってきそうな気配はない。
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  足拵えを済ませ、道路の向かい側の山に上がった。
一帯は笹原で広大な展望が開けた。
左手に緩く下ってゆく尾根の先は和田峠で、その先に八島湿原の手前にある鷲ヶ峰から車山あたりまでが良く見える。

  このあたりに来たのはかれこれ15、6年前の春先で、鷲ヶ峰ヒュッテからスキーで長駆三峰山を目指したが、この下のコブあたりまで来たところで時間切れとなって引き返した。


  尾根の背に上がった所で右折して三峰山に向かうと左手にこれから歩く尾根続きが見えてきた。
奥手に僅か頭を出しているのが鉢伏山で、手前のモッコリした三角形が二ツ山だろうと思った。

  ピークをひとつ越えて行った先の高みが三峰山の頂上で、三角点標石と道標がある。
遠くの雲間に槍穂高のゴツゴツした稜線が見えた。
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  頂上の裏側の笹尾根は美ヶ原に繋がっている。
扉峠の切通しの崖が見え、その背後に茶臼山が高い。

  旧中仙道が通っている谷の先に諏訪湖が見えた。
晴れていればもっと見栄えのする景色だろうに。

  鉢伏山へのルートの入口には左のような道標が立っていた。

  山頂直下はかなり急な茅戸の斜面で、稲妻に下って行く踏跡がある。
この道標による入口の指示と、踏跡沿いに張られている目印のロープがなければかなり分かりにくいだろう。


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  斜面を下りきって尾根に乗り、少し進んだ所で前方の視界が開け、二ツ山へ繋がる尾根の様子が見えた。

  複雑に折れ曲がりつつかなり下って行ったあと、二ツ山へ登り返さなければならない。
あとの登りがきつそうだな、と思った。

  尾根上のコブに道標が立っていた。
このあたりが悪沢分岐らしかった。

  このあと、ルートは尾根筋を外れ、右下に悪沢源流部を見下ろしながら複雑な地形の中を曲がり降りて行く。

  周囲はカラマツとオオシラビソの密林で、現在位置の判断が難しくなる。
ときどき樹間に美ヶ原の鉄塔群が見え、それなりに前進していることはわかった。

  左山でほぼ等高のトラバースが続いた。
歩いているときは楽だと思ったが、道形が外傾しているため、左足を伸ばし切らずに歩き続ける状態が長く続き、左膝まわりに負担が掛かった。

  トラバースの途中に "鳥獣保護区" のプレートが立つ鞍部がある。
獣の住処の真っ只中という雰囲気の密生した林の中だったが久し振りに平坦地に出たのでザックを下ろして休憩した。


  またしばらく尾根の背を進んだり左山のトラバースをしたりしながら進んで二ツ山の登り口に着いた。

  尾根上を直登してゆくのと左右の斜面に入ってゆくのと、踏跡が三筋に分かれているが左手には通せんぼが置いてある。

  右手の山腹をジグザグに上がるのは本道のようだったが笹薮が深そうで直登ルートの方が楽そうに思えた。

  直登ルートは傾斜がかなり強く、笹を手掛かりにしなければ登り難いほどだった。


   最初の傾斜が強い所は踏跡が明瞭だったがひと登りして傾斜が緩むと笹が被さり、進み難くなった。
ジグザグ道が合流している所があったのでそちらに入ってみた。
斜面を丁寧に折れ登る踏跡で傾斜は緩いが笹を掻き分けるのが大変だった。
かえって時間が掛かりそうだったので、次の合流点でまた直登ルートに戻った。


  久し振りの藪漕ぎでかなり疲れが出てきた頃、ようやく開けた所に出た。

  いつの間にか雲が消え、青空が広がっていたのが嬉しかった。
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  さらに、100m あまり密藪を掻き分けて登り切ると二ツ山の頂上広場に着く。
長時間密林の中を彷徨ったあと、明るく開けた笹原に出て、ホッとした。

  笹原の中に三角点標石があった。
そのあたりから南の方を眺めていると、冒頭パノラマ写真のように枯れ木が林立し、まるで異次元に迷い込んだのではないかと錯覚するような雰囲気が漂っていた。


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  長休みをしていたらサァーッと霧が吹き上がってきてまわりの視界が閉ざされた。


  日が陰り、長休みで汗が冷えたのでまた歩き出した。
霧の中、笹尾根の藪を踏み分けてゆくと "横川山" と記したプレートがあった。
左に踏跡が分岐していたが先がどうなっているかは分からなかった。


  歩いているうちに霧が晴れてきた。
前方に笹薮の斜面が見えてきた。
ルートは左手のカラマツ林の縁を真っ直ぐに登って行くらしい。
笹が深く足許が見難いので笹原上面の僅かな窪みをルートと判断して進んだ。

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  斜面を登りきって尾根に上がると明瞭な道にとび出し、藪から開放された。

  霧が晴れ上がって広大な視界が開け、気分が良い。
後ろを振り返ると、今歩いてきた二ツ山からこちらへの尾根つながりが良く見えた。

  小ピークに上がるとすぐ先が前二ツ山。
鉢伏山はその先のピークの蔭で、まだかなり遠い。

  前二ツ山は目立たない高みだ。
目印の柱が立っていなければ気づかずに通り過ぎてしまうかもしれない。

  右手の谷向かいに美ヶ原から茶臼山、三峰山への連なりが綺麗なスカイラインを描いていた。

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  予想外の笹薮漕ぎで大分疲れた。
途中の長いトラバースで負担が掛かった左膝のまわりの筋が頚痙しそうになってきたが鉢伏山はまだ先だ。

  右下に窪地が見える二重山稜状の所から斜面を斜上し、尾根を乗越すとようやく鉢伏山の登りに掛かる。

  砂利の車道に入り、疲れた足を引きずってユックリ進んだ。
笹原の縁にウスユキソウが見えた。
健気に生きてきた小さな命がこの年の務めを終えようとしている。



  谷向かいに、美ヶ原から三峰山、そして二ツ山から前二ツ山を経てここまで、今日歩いてきた尾根続きが見えていた。

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  鉢伏山は一面の草紅葉で秋の終わりの風情だった。

  疲労が激しいので頂上に向かうのはやめ、肩を巻いて行くくと見覚えのある小屋が見えてきた。

  高ボッチ山の方から上がってきた車が2、3台停まり、あたりを何人かが歩いていた。

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  小屋の向かい側の萱戸の斜面で銀色の穂が揺れていた。

  扉温泉と前鉢伏山への道が交わる十字路の角にザックを下ろして休憩し、この後どうしようかと考えた。
  大分疲れたので小屋に立ち寄り、タクシーを呼ぶ手もある、と思ったが、しばらく休んでいるうちにいくらか元気が出てきた。
もうひと頑張りして計画通り扉温泉に下ることにした。

  このルートはガイドマップに素っ気ない破線が引かれているだけだが、以前通って意外に歩きやすく、1時間半あまりで下山できたことを憶えていた。
下山後、温泉に入って松本駅に出られる。

   山腹をトラバースして少し進むとワサビ沢から上がってきている小尾根に乗った。
カラマツに覆われた穏やかな尾根道で、傾いた日が当たって良いムードになっていた。

  少し下ったあたりから左膝まわりの筋肉が硬直してきた。
そちらを庇って歩いていたら、右足の向う脛の筋肉まで硬直してきた。

かなり厳しい状況になったので、もう少しで尾根の背を外れ、谷底に向かって急降下、という所でザックを下ろして休憩。
いくらかでもましな状態にと消炎鎮痛剤を服んだ。


  谷底への途中で伐採が行われていて切り倒された木を乗り越すのが辛かったが、次第に水音が近付き、小尾根の裏側から枝沢を渡ると、 "扉温泉へ45分" と記した道標があってヤレヤレ。

すぐ下に古い造林小屋があったが荒れ果ててオバケ屋敷のようになっていた。

  痛み止めもそれなりに効果があったようで、谷道をソロソロ歩きつづける事はできた。
道も穏やかで歩きやすいのに助けられた。

  山の上ではもう冬の兆しが見えていたが谷の中にはまだ秋が残っていて、道端でタカネニガナの群落が花を咲かせていた。

  道標の表示より10分ほど余計に掛かってようやく扉温泉に着いた。

下降路の最後の部分の選択を誤ったため、明神館の裏手の給湯タンクの上に出てしまった。
危うい足場を渡って鉄の階段を下り、ようやく車道に降り立った。
  旅館は連休の湯治客が次々に到着しているところで案内役が忙しげに動きまわっていた。

  車道を僅か下った所に駐車場があり、登山口まで300m と記した道標が立っていた。
道標の下手から右の山に上がると桧の湯の前に出る。
西の白骨、東の扉といわれる名湯だが、桧の湯は農村厚生施設として運営されている立ち寄り入浴場で、料金は僅か300円だ。

  石鹸やシャンプーの備え付けはなかったが身体を温め、こわばった筋をほぐし、汗を流すことはできた。
  用意していった着替えに替え、ザックのパッキングをやり直して玄関に出たら電話で呼んでいたタクシーが来た。
秋の日暮の闇が降りてきた谷間の道を走って松本駅に向った。
扉温泉からは意外に近く、30分足らずで着き、車代も予想を下回った。

下山に時間が掛かって遅くなったのでダメかと思った6時半過ぎの特急あずさに丁度良いくらいの時間だった。
売店に立ち寄り、弁当と土産の漬物を買ってホームに降りた。

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☆おわりに
     長い間気に掛かっていた未踏ルートのトレースができたが、久し振りの日帰り山行で、歩きでのあるルートを1日で上り下りし、かなり疲労した。

  2007年6月の新ハイキング 620号に、このルートを1年前に歩いた記録が出ている。
伐り払いは2004年に行なわれたと記されているが笹薮の状況についての記述はほとんどない。
3年で今回見た程度にまで笹が被るのだとすれば、あと2、3年も経てば二ッ山付近のルートのかなりの部分は笹に埋もれ、本格的な薮漕ぎルートに戻ってしまうだろう。

  前二ッ山から鉢伏山にかけての尾根筋の展望は秀逸で、これを見るだけでも出かけて来る価値があると思う。
車を使って高ボッチ山から鉢伏山に上がれば、薮漕ぎの労苦は解消する。
扉温泉を足溜まりに往復登山をすれば軽いハイキングだ。
鉢伏山から前二ッ山のあたりまで、緩やかにうねる笹尾根を辿りつつ、素晴らしい山上展望を楽しむことができるだろう。