高原山、剣ヶ峰-大入道 (2006.8.14)


☆期日/山行形式:
2006.8.14  単独、日帰り

☆地形図(2万5千分1): 那須岳(日光2号-1)、板室(日光2号-2)

☆まえがき
    高原山は、鶏頂山(スキーで登降)と、釈迦ヶ岳から西平岳(無雪期)と、2度の山行で主峰部をカバーしているのだがその東側にある大間々台、小間々台、学校平などの高原状の地形と、それを取り囲んでいる尾根続きの剣ヶ峰から大入道が未踏になっていた。

  交通が不便で山としてはややマイナーなため、気に懸けながらも足を向けずにいたが暑中の軽い足慣らし・錆取り山行の対象として好適なように思い、出かけてみた。

  組み立てた行程はかなりのものぐさプランで、新幹線那須塩原経由、西那須野へ行ってバスに乗り継ぎ、塩原温泉(550)からはタクシーで山に上がり、学校平(1050)から小間々台(1180)、大間々台(1278)、八海山神社(1539)を経て剣ヶ峰(1590)に登頂。  尾根伝いに大入道(1402.4)に登頂したあと小間々台(1170)へ下って学校平(1050)へ。
タクシーを呼んで塩原温泉(550)に戻ったら市営バスで上三依塩原温泉口駅に抜け、会津鉄道・東武・東急線経由で帰ることとした。

  これでは山登りではなく、タクシードライブだ、と冷やかされそうな計画だが車代と引き換えに中腹以下の炎暑の歩行を省き、熱中症のリスクを避けようというアイデアだ。

Shakadake_from_Hakkaisan_Jinja

矢板市最高峰(右奥)への登路から望む釈迦が岳、鶏頭山   
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☆行動記録とルートの状況

<タイム記録>

    宮崎台[5:39]=大手町=[6:22]東京[6:44]=(Maxヤマビコ203)=[8:02]那須塩原[8:05]=[8:11]西那須野[8:35]=(JRバス)=[9:17]塩原温泉[9:20]=(Taxi \6420)=[9:50]大間々台(10:05)-ミツモチ分岐(10:40)-八海山神社(11:00/05)-1590m 矢板市最高峰(11:17)-剣ヶ峰(11:30/45)-大入道(12:40/50)-小間々台キャンプ場(13:35/40)-(14:00)学校平[14:30]=(Taxi \5920)=(15:01)塩原温泉[15:25]=(JRバス)=[15:44]アグリパル[16:05+30]=(JR 高速バス \2600)=[18:59+1:40]新宿BT/新宿駅=渋谷=[21:19]宮崎台


◆ 5時前に起き出さなければならないのは辛かったが目覚まし時計で何とか起きだし、寝ぼけ眼で支度を整えて家をでた。
空模様はパッとしない。
前後の数日のうちでは唯一天気予報に雨マークがない日だったが、殆んど本曇りといってよい位だった。
那須塩原で予定よりひとつ早い列車に乗り継げたため、その分、西那須野駅の待ち時間が長くなった。
あたりをブラブラしながらバスを待ったが山の方はもやっていて真っ白。
高原山がどちらにあるのか見当も付かない。

この状態で山に上がれば、一日中霧の中、と言うことになるかも知れないが下旬に予定している北奥羽縦走に耐えられる身体を作るための山行だから、歩かずに帰るわけには行かない。
景色が見えない位なら陽も当らないだろうから、かえって涼しくて助かるかもしれない。

  お盆休みで出てきたマイカーで道が混んでいたがほぼ定刻に塩原温泉ターミナルに着いた。
タクシーは予約してあったので待つほどもなくやってきた。
山上へのルートは、福渡から学校平に上がる八方ヶ原観光道路と思っていたがそうではなく、中腹にある富士山と大沼の間を通る林道下塩原新潟線だった。
最近拡幅整備され、走りやすい良い道になっていた。
かなりの大回りだったたため、学校平でメーターが5000円オーバーになってしまったが、 道が良かったお蔭で時間的には早く、ほぼ予想通りの30分だった。
西那須野駅でブラブラしていた時、15時に塩原から新宿に直行する高速バスがあることを
見つけたので、それに間に合うように歩けると良いな、と思った。
大分予算オーバになるが毒食わば皿まで、車で入れる最奥の大間々台まで走ってもらう事にした。

  幸い天気は上向きで時間とともに雲高が上がり、大間々台に着いたときには所々に青空が覗くほどとなり、近くの山も見えて来た。

  大間々台は螺旋階段で登る見晴展望台が立ち、その奥手に広い駐車場、公衆便所が設けられていた。
6、7台の車が停まっていた。
標高1200m あまり、爽やかな涼風が吹いている。
広場に面して立つ地図看板の前で山支度をしていると熟年登山者がひとり、その数分後にもうひとり、若い人が山から戻って来たのが見えた。

  駐車場の奥手の公衆便所の横に道標が立っていて、右の森林コース、左のパノラマコースを示していた。
パノラマコースに入った。
始めの10分あまりは車が走れるくらい幅の広い砂利道だ。(左)



  道標が立っているところ(左下)で右手の林に入ると何歩も行かない所に鳥居があり(右下)、この山が信仰登山の対象になっている事を示していた。

  密生している中木の林の中の歩道は良く踏まれている。
結構来る人は多いようだ。
釈迦ヶ岳もこちらから登る方が楽なのかもしれない。

  ひと登りで尾根の背と言うか台地状尾根の縁に上がった。
左側の谷からヒンヤリした風が吹き上げ、長袖だったらと思ったほど、左腕が冷えた。
  やがてミツモチ経由、県民の森へのルートの分岐点に着いた。
ちょっとした広場で良い休憩場所だと思ったが、まだ休みたくなる程にはなっていなかったのでそのまま歩きすぎた。

  一時的に道が平らになった。
身体が慣れて来たせいもあって調子良く歩いた。
前回の錆取り山行から10日しか経っていないせいか、足腰はスムースに動いている。


   気分よく登って行くと左手に視界が開け、西平岳の尾根とその末端に広がっている放牧場が見えてきた。(下)


  平坦な露地に案内地図盤があった。
歩いてきた方への視界が広がり、小間々台から大間々台への平坦な地形が見渡せた。(左)
高原山と言う山の名に相応しい地形だ。

 行く手には今登ろうとしている剣ヶ峰への尾根が高い。
その背後に釈迦ヶ岳、鶏頂山などの主峰が立ち並んでいる。
(冒頭パノラマ写真を見る)


  やや岩っぽくなった尾根を登って祠のある高みに着いた。
見晴らしの良い所で、大間々台から谷筋を登ってくる森林コースの合流を示す道標が立っている。

  ザックを下ろし、まわりの展望を楽しみながらしばらく休憩。
青空の部分が増え、薄日が射すくらいになっているが爽やかな冷風が吹き、暑さは感じない。

  祠のピークからひと登りで1590m 峰に登りついた。
"矢板市最高点" と記した表示板が立っている。
今日のルートの最高地点だが尾根上のちょっとした盛り上がりという感じで山の頂の雰囲気はない


  ひと下りし、さらにもう一段急降下した所から登り返してゆくと釈迦ヶ岳への登路と大入道へのルートの分岐点がある。


  右の道に入り、僅か登って剣ヶ峰に着いた。(下左)
標識が立っていなければそのまま通り過ぎてしまいそうな地味なピークだ。
まわりは唐桧が目立つ密林で、展望はない。(下右)
  時間的には半端だったがひと区切りなので長目の休憩をし、テルモスのポカリスエットで水分を補給しながら、和菓子を1個食べた。


  大入道へのルートは、姫笹の林床の緩やかな下りからジグザグを繰り返す急降下になる。

  下り切って乗った尾根は左がスッカン沢へ急峻に切れ落ちているが、右側は八方ヶ原に向けて緩やかな斜面になっていていかにも動物の棲家のような雰囲気だ。
時々皮を剥がされた木を見た。
鹿の仕業だろう。

  ルートが崖縁を通っているため、所どころで左方の視界が開け、谷向かいに釈迦ヶ岳が大きく高い。


  小さく上下を繰り返しながら進んで行くと前方の樹間に大入道が見えてきた。

駐車場にいた車の数から何人かと出遭うだろうと予想していたが、登り始めに熟年夫婦とすれ違ったあと誰とも遭っていない。
皆かなり先行して降りてしまったか、釈迦ヶ岳の方に行っているか、のようだ。


  3、4度折れ曲がる尾根筋を辿りながら幾つかの少ピークを越して行くと穏やかな登りが始まる。
しばらく登りつづけ、やがて傾斜が緩むと木立の間に大入道の頂上を示す標識が見えてきた。

  三角点標石を腰掛の代わりにして休憩。
この山は遠目には小振りで目立たないが、頂上の裏側に広い平坦地があって意外に広広した大きな山だった。



  下山路は始め笹の間の緩い道だが、次第に傾斜が強まり、何度もジグザグを繰り返して高度を下げて行くようになる。
下りきった所から沢溝沿いの道になり、暫く直進。(左)


  周りが見えないためどの辺を歩いているのか判断が難しくなるが、木の幹に描かれた赤ペンキの丸印や要所に取り付けられた道標プレートが的確に進路を示している。

  左から下ってきた谷に入り、右岸の小尾根を乗り越した所で右から来た本谷を渡り、その右岸の小尾根に乗るあたりは地形が錯綜している。
桟道や標識が整備されているおかげで問題なく通過し、急登して対岸の台地状の尾根に上がった。(左)
  台地状の平坦な尾根を横切ると、大石がゴロゴロしている涸れ沢がある。
対岸の斜面を緩やかに登って行くと小間々キャンプ場だった。
林間の広場に協同炊事棟、テント台と野外ベンチが整備された素晴らしいキャンプ場だ。
お盆休みの最盛期だと言うのに人の姿がないのが不思議だった。
今時のキャンパーは電気・水道など完備のオートキャンプ場にしか寄り付かないのだろうか?

  キャンプ場の端の東屋で一服し、スパッツを脱いだ。
  この先は車道歩きになってズボンが汚れる心配がないし、右の向う脛が突っ張り気味なのが気になっていたからだった。
  学校平まで車道を歩いた。
車はあまり走ってこないし、歩道を覗き込んでみたが歩く人が少ないようでやや藪っぽく見えたため思い止まった。
車道のふたつ目のヘヤピンの先がT字路になっていた。
右は矢板、左は塩原と記した道標が立っていた。
左に僅か進むと右手に広場があり、その奥手に "やまの駅" の建物があった。

  2時半に来るようタクシーに頼んであった。
30分近くの時間があるので "駅" のカフェテリアで山菜蕎麦を食べた。
蕎麦は美味しかったが、食休みをしているうちに左足に頚痙の兆しが出てきた。
いつもの胃薬とともに消炎鎮痛剤を一粒服んだ。
  歩き自体は快調だったがイオン飲料を氷と一緒にテルモスに詰めて来たため、胃が冷えて具合が悪くならぬよう、チョッピリずつしか飲めなかった。
冷たくて美味しいのは良いが、タップリ飲んで脱水の予防と、イオン補給をするには不都合だったかもしれない。

  車は正確に上がってきた。
チョッと待ってもらってトイレに入り、用を足したあと顔・腕の汗を濯ぎ、濡れタオルを作った。
車が走り出すと間もなく脚の頚痙が起きた。
10日前の錆取り山行の効果は明瞭で、何も問題なく快調に歩き切ったあとだったが、あとで体が冷えてくると頚痙が起きるこの頃の悪い傾向は解消できなかった。
消炎剤をもう一粒服んで痛みをこらえた。

  暫くするとフロントガラスに大粒の雨粒がポツポツと当りだし、間もなく土砂降りになった。
車は大幅な減速を余儀なくされ、このままでは3時のバスには間に合いそうもなくなった。
塩原の温泉街を見下ろすあたりでようやく雨から抜け出したがすでに手遅れで、あと僅かでバスターミナルという所で走り出した高速バスを見送ることとなった。

  タッチの差でバスを逃がしたので時間が半端になった。
サテどのように帰ろうかと迷ったので、ターミナルの売店のオバサンに相談した。
3時25分の西那須野原バスに乗って谷の出口のアグリパルに行けば16:05に通る西那須野始発の新宿行きバスに乗り継げる筈と言う事だったので、教わった番号に携帯を掛けて座席を予約。
新宿到着時刻は18:59と言うから、元の計画の上三依塩原温泉口経由、電車で帰るより2時間近く早まると喜んだのだが、これは大間違いだった。

  アグリパルでの待ち時間が20分ほどあった。
ここにしかないと言うキューイフルーツのソフトクリームを食べながらノンビリ待ったが定刻を過ぎても一向にバスが来ない。
少し遅れるかも知れませんよ、と路線バスのドライバーから聞いていたのだが20分経っても30分経っても来ない。
年中でもっとも道路が混雑するこの時期に高速バスを利用するのは、非常にマズイ選択だったという事に漸く気が着いた。
バスは40分も遅れて来た。
乗り込んだ時にはスッカリ諦め気分になっていたが、幸い空いていて二人分の席が使えた。
飲み物・食べ物を並べて長期戦の構えをした。
高速道は渋滞、また渋滞という、覚悟した通りの走り方で、なんと1時間40分も遅れて新宿ターミナルに着いた。
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☆おわりに
    行きそびれていた高原山の未踏ルートのトレースを兼ねた足慣らし錆取りトレーニングができた。
歩くこと自体は順調だったがあとで身体が冷えてきた時の頚痙が気に掛かった。
病気ではないし一時的な現象ではあるが痛くて不快なので何とかしたい。

  はじめに服んだ消炎鎮痛剤は効いたのだが、バスターミナルの自販機のコーヒを飲んだらぶり返した。
カフェインはどうも良くないらしい。
以前、首筋の頚痙が起きたとき、かかりつけ医に相談したら芍薬甘草湯エキスを処方してくれた。
戸棚に入れっぱなしになっていたのを思い出したので、帰宅したあとで服んでみた。
何となく効き目があったように感じたが、現場でどうなるかは試してみないと分からない。
次回の山行に持って行ってみよう。

  頚痙に関するさらに詳しい情報を求め、インターネット検索を行ってみた。
頚痙は、筋肉への血流の不足、血中カリューム濃度の低下、利尿剤の投与、脱水などが原因となって起こる症状で、これと言う特効薬はないが、軽いストレッチングをすることで予防できるといわれている。

  この頃止めていた日常のストレッチングを復活し、山行時のイオン水はテルモスに入れずタップリ目に飲むようにしてみよう。

  次回は夏山のメイン山行で、北奥羽の秋田岩手県境稜線の縦走を目指す。
数日にわたって無人小屋宿泊を重ねる長期縦走となるからある程度の荷物を担がざるを得ない。
スローペースは当然だが、さらに体力的な負担を軽減するため、各日の行動時間を短く設定し、半日程度歩いて次の小屋に到着したらそこでストップし、余った時間は休息に励みながら、北の山の "滞空時間" を楽しむ行動プランを設定しようと考えている。