小佐野峠-小寺山-大寺山-三森北峰 (2005.4.8)


☆期日/山行形式:
2005.4.8  単独、日帰り
☆地形図(2万5千分1): 七保(甲府号2-2)、大月(甲府3号-1)

☆まえがき
    春モードへの切り替え初山行で権現山から麻生山を繋ぐ稜線を歩いたので、引き続き小佐野峠から三ッ森北峰の間を歩きに行ってみた
下のルート図でも分かるように、三ッ森を挟んで北側に隣接している尾根続きで、奈良倉山以南では最後の未踏区間だった。

  計画のあらましは、葛野川谷の奥、上和田近くの中風呂(460)から小佐野峠(1045)へ、旧峠道を使って上がったあと南下、小寺山(1165)と大寺山(1226)の、ふたつの "地味ピーク" を経て三森北峰(1245)まで頂稜をトレースし、鋸尾根から小姓(420)に下山。  葛野川対岸の杉平入口(415)からバスで大月駅に戻ろうというものであった。


(クリックで拡大します)

  ただ、この一帯では最も歩かれていない部分で、ルート情報も乏しかったが、僅かに参照できた資料には、小佐野峠への登路と、峠から小寺山までの稜線部分で、かなり藪に悩まされたと記されていた。
地形図をもとに推定した時間で歩きぬけられない事態もありうる、と予想した。

  葛野川谷は、以前あった午後4時台の便が廃止されてバスが一段と不便になった。
上和田始発で14:33に杉平入口を通る便に間に合う時間に下山できなかった場合、その次は、17:24の最終バスということになる。

  ただし、約1.5Km 下手の浅川入口(385)まで歩けば、淺川始発の15:10の便、さらに1Km 下手の奈良子入口(360)まで行けば、奈良子始発の15:59の便を利用することは可能だ。
いざとなった猿橋駅のタクシーを呼ぶ選択肢もあるのだから、ルートの状況に柔軟に対応し、下山の時間にはこだわらないようにしようと割り切った。


  ここを実際に歩いてみて分かったのは、小佐野峠から小寺山までの間に幾らかは藪があり、一部踏跡が薄くてルート不明瞭な場所もあったりはするが、意外に骨の折れない、楽しい静寂コースだったと言うことだ。
  特に、中風呂から小佐野峠への旧峠道は、危険箇所や藪のない良道で、坪山や奈良倉山への登降ルートとしても利用価値があると思った。


☆行動記録とルートの状況
<タイムレコード>
    宮崎台[6:38]=長津田=八王子=高尾[7:47]=[8:26]大月[8:38]=(富士急山梨バス \590)=[9:15]中風呂下の佐野峠道標(9:20)-R(10:05/15)-小佐野峠(10:55)-坪山入り口(11:00/10)-小佐野峠(11:15)-小寺山(10:45)-大寺山(12:05/15)-三森北峰(12:45/13:00)-道標(13:30)-小姓(14:10)-(14:25)杉平入口バス停[14:33+5]=(富士急山梨バス \540)=[15:07]大月[15:23]=八王子=長津田=宮崎台

◆ 葛野川谷のバスともすっかりお馴染みになった。
この前来た時からまだ10日しか経っていないのだが谷沿いの山林が芽萌きで浅黄緑になっていた。

  佐野峠への登り口(左)は、何度か前を通って指導標が立っていることを知っていてもうそろそろだと見張っていたのだが、道路のカーブの具合で突然現れたのにビックリ。
自由乗降区間だったので慌ててバスを止めてもらって下車。

道路から道端の家に上がる入口で山支度を整えた。
"佐野峠入口" と記した道標の脇からセメント舗装の歩道を下り、鉄の歩道橋で葛野川を渡って対岸に上がると一軒家がある。

  家の左脇から裏手にまわると左のように古い石標と、"佐野峠" を指示する青ペンキ塗りの指導標があった。@

  右手の山腹を斜上してゆく旧峠道を今歩く人の数は極く少なくなっているようだが、かつては良く踏まれていたようで、しっかりした歩きやすい道だった(下左)。

  杉の植林の中に入ってしばらくするとまた青塗りの指導標があって左に折り返す。
やがて尾根の上に乗り、小刻みに蛇行しながら尾根の背を登るようになる。

林の中に明るい春の日が差し込んでいる。
快晴の予報を当て込んで出掛けてきた期待は裏切られなかった(左)。

  しばらく登るとジグザグ道が尾根の北斜面に出入りするようになる。
谷向かい真近かに大峰が見え、こちらの高さを推しはかる役に立つ。
A

  ジグザグ道が再び南斜面に出入りすようになって暫くの間高度稼ぎをすると、檜の植林に入り、傾斜が緩む。

 やがて、ルートは尾根の北面をトラバースするようになり、前方に佐野峠の鞍部が見えてくる(左)。

  谷窪の上部を回り込んで行くと前方に金属製道標が見えてきた。
頂稜を通っている林道への出口に立っている金属製道標には、腕板が直角に取り付けられ、一方には "七保(中風呂)"、もう一方には "松姫峠方面" と記されている(左下)。

  2、300m 北にある坪山入口の様子を見に行ってみた。
一昨年の5月にきた時、この一帯で林道工事をしていたのだが、山腹のか細いトラバースだった坪山ルートが赤土の林道に変わっていた。

  元に戻る途中、モッソリと盛り上がった小寺山と、その先にやや尖った姿で立っている大寺山の連なりが良く見えた(下)。B




  林道は山の東斜面を横切って大寺山付近まで伸びているようだ。

  小寺山への入口は中風呂から上がってきた道のすぐ脇だった。
入口には左のように小さな赤塗りの手作り道標がある。B


   尾根の背にある踏跡に入って進むと不明瞭ながらそれと分かる踏跡が姫笹の中に続いている。
所々に動物が土を掻きまわした形跡がある。
多分、猪だろう。
潅木の藪も幾らかはあるが予想していたほどではない。C

所々で踏跡が薄れてルート不明になるが頂稜を外しさえしなければ良い訳だから、尾根の背の歩きやすそうな所を選んで行くとまたすぐに踏跡に出遭う。

  1130m 圏の盛り上がりを越し、僅かな上下を繰り返しながら、緩やかに登って行くと檜の植林の上端を掠める。
  そこから先はパッと藪がなくなり、踏跡が明瞭になる。
すぐ、左のような切り開きに出た。
"火の用心" のプレート以外、何の目印もないのだが、どうもこのあたりが小寺山の頂上のようだ。
  4、50m ほど先にもう一箇所小さな切り開きがあって、同じ火の用心のプレートがあった。
ここからは、前方に近づいた鋸尾根のプロファイルが良く見える
ほぼ直角に左折して大寺山への尾根を辿る。

  ルートの様子は一変、藪はなくなって踏跡が明瞭になり、ゆったり上下する尾根道となった(左)。



心安らぐ深山の逍遥だ。





  一段上がって緩やかな尾根を進み、もう一段登った所が大寺山の頂上だった(下左)。
立ち木に山名を記したプレートが取り付けてある。

  思ったほどの苦労はせずに登りついた頂上だったが誰も居ない奥山の頂きの静寂に浸りながらひと時の休憩を楽しんだ。

  皮肉なことだが、大寺山頂上の方が小寺山の頂上より狭くて小さい。

  大寺山の先の下りは、、それまでと大分雰囲気が違って、潅木の少ないザレ気味の急な斜面になっていた。

  谷向かいの大峰の南面がこれと良く似た状態だったのを思い出した。
同じ地層がつながっているのかも知れない。

  標高差にして約80m ほど下った鞍部から三森北峰まで、急登が断続する。
こちら側は三ッ森の特徴とも言える露岩の多い急な痩せ尾根になっている所が多い。
潅木や木の根も利用し、3点支持で登り続ける。DとE
一段上がって傾斜が緩み、さらにもう一度急登して平らになったところに鋸尾根下降点を示す道標が立っていた(左)。

  道標から2、30m ほど先の高みが三森北峰の頂上だ(左)。
尖がって視野の広い展望ピークなのだが前回と同様、靄が濃くてまわりの景色がぼやけ、富士山などはまったく見えない。

   頂上の立ち木に、"郡内鋸岳" という文字が記されている白木の山名プレートが取り付けてあった。
前回来た時にはなかったものだ。

  小姓への下降路になっている尾根は鋸尾根と呼ばれているが、この付近の稜線の、ギザギザ上下している様子は、より以上に "鋸" という表現に相応しいから尤もな山名だと思った(左)。

  いち早く咲き出した馬酔木の花の先に慎ましやかな姿を見せている麻生山を眺めながらこの日最後の頂上の休息を楽しんだ(左下)。


   もともと来る人の少ない山である上にウイークデイでもあったため、辺りを深い静寂が支配している。

 鋸尾根ルートは昨年11月に通っている。

  急な斜面をひと下りすると尾根に乗るが、すぐに露岩の多い小ピークがある。
ルートはその南肩を巻いて行くが、かなりの急斜面のトラバースだ。
足場はしっかりしているが注意が必要だ。F

  その先にある1120m 峰も南肩をトラバースして通過する。
こちらは下に樹木が多く、道形もしっかりしているから全く問題ない。G

  ピークへの登りに掛かる所で左手を振り返って見上げると、今日歩いてきた稜線が林の向こうに緩い曲線を描いていた。

スカイラインの背後から三頭山が頭を出していた(下)。


  尾根が平に広くなってルートが分かりにくい所に道標が立っている。
小姓に下るには道標の先から左に下らなければならない。

この辺りが下降路のはぼ中点にあたる。

  この先緩急を繰り返しながら下降を続けてゆくが尾根の最後の部分には急坂が多い。
上から下ってきた疲れが溜まっている足の筋肉に負担が掛かり過ぎぬよう、気をつけたほうが良い。

  杉林の中の最後の下りから茶畑の上に飛び出した。
横手の斜面の桜が満開になっていた(上左)。
近くの林の中からは鳥のさえずりが聞こえている。
美しい啼き声は "ヒガラ" だったかもしれない。
小姓集落の最奥の民家の裏手に道標が立っている。
対岸に高く聳え立っている尾越山を見上げながら小姓の坂道を下り、葛野川を渡った所から、疲れた足を励ましながら車道に上がると杉平入口バス停のポストが立っていた。H


☆おわりに
    今回は午後中頃のバスは無理だと思っていたのだが、予想外に順調に歩けたため欲を出し、何とか間に合わせようと、ノンストップで下降した。
身体が温かいうちは何ともなかったのだが、バスに乗って暫くすると今にも頚痙が起こりそうな状態になった。

  前回の経験に懲りて、"バッファリン" を用意していたので、一錠服んで抑えたが、電車に乗って暫くしたころまた危なくなったため、もう一錠服んで何とかやり過ごした。
いい年をしているのだから、800m をノンストップで下降するような無理は止め、もっとゆっくり歩いて薬など使わなくても良いようにせねば、と思うのだが ...。