三浦、仙元山-馬頭観音-森戸川南沢-乳頭山(2005.3.7)


☆期日/山行形式:
2005.3.7 日帰り単独

☆地形図(2万5千分1): 横須賀(横須賀1号-3、5号-1)、鎌倉(横須賀5号-3)

☆まえがき
    2月は毎週連続で四回、三浦半島に行った。
塵も積もれば何とやらで、鷹取山から畠山へ繋がる主脈と、その西側を流下している森戸川谷の南北を劃している尾根筋のあらかたのトレースができた。
  桃の節句も過ぎ、そろそろ厳冬の低山モードを締めくくる時期となったが、その前にこの山域にひと区切りをつけたいと、残り少なくなった未踏部分を繋ぎ歩く、今冬五度目の三浦山行を計画した。

  風早橋(13)から主脈西南部の仙元山(118)に上がり、189m峰、馬頭観音峰(167)から176m 峰の肩をかすめて東進し、連絡尾根から森戸川二俣(65)に下降。
引き続き、森戸川南沢を上流部まで遡って枝沢(100)から中尾根の六把峠(145)を経て尾根の詰めにある乳頭山(211) に登頂しようという、"一回で二度美味しい" 行動プランを組み立てた。
田浦側の外尾根を周って東逗子(20)に下山すれば、また駅前の鴨セイロにありつけることになり、"全部で三度も美味しい" 贅沢山行となる!

  幸い好天に恵まれたのと、南沢の中での地形の判断で "山勘" が正解を与え続けてくれたことのお蔭で、ほとんど迷わず手際よく歩き切ることができた。


仙元山から逗子市街、江ノ島の展望、富士山は霞に隠れて残念!(クリックで拡大します

☆行動記録とルートの状況

<タイムレコード>

    宮崎台[7:34]=あざみ野=横浜[8:26]=[8:55]JR逗子駅[9:01]=(路線バス \190)=[9:08]風早橋(9:10)-仙元山(9:35/45)-189m峰分岐点(10:10)-焼却場裏-葉山小学校分岐(10:20/25)-馬頭観音峰(10:40)-測量基準点/ポール(10:50)-pk176ジャンクション-新沢バス停分岐(11:00)-二俣下降点(11:15)-森戸川二俣(11:30/50)-ロープがある枝沢(12:15)-尾根への沢溝(12:18)-中尾根上の十字路、六把峠(12:30)-鉄塔ピークふたつ-乳頭山(12:45/55)-東逗子分岐(13:25)-いこいの丘(13:35/45)-(14:10)東逗子駅[14:43]=逗子=横浜=自由が丘=二子玉川=[16:20]宮崎台

  日曜日に出かける計画にしていたのだが天気がよくなかったので一日繰り下げ、月曜にした。
早出のサラリーマンや中高生が出てくる時間に掛かってはいたが方向が逆のため、大した混雑にも遭わずに逗子に着いた。
駅前のバス乗り場もすっかりお馴染みになり、迷わずに乗り場に直行。
  風早橋でバスを降りて信号を渡り、海の方に向って200m ほど歩いた所で鋭角に折り返して山に上がる。
入り口にはハイキングコースの看板が立っているので迷う恐れははない。

  ひと登りで葉山教会の前の駐車場に着いた(左)。
  生垣の土台にザックを置いて山支度を整え、建物の左脇から山道に入った。
暖地林に覆われた緩やかな尾根の背を進んでゆくと桜の木が散在している開けた茅戸に出る。
  階段道をひと登りで仙元山頂上の公園に着いた。
海側の柵際からは相模湾の眺めがよい。
葉山の市街の先にヨットの浮かぶ海、右手の奥の方には江ノ島が見える(タイトルパノラマ)。
この前来たときは富士山も見えていたのだが今日は霞に隠されて見えず、残念だ。
  園地の後ろ側からやや急な階段を下りて行くとまた気分の良い尾根道になる。
前の方にこの付近の最高点である、189m 峰が高い(左)。
  尾根の右下に住宅地の屋根を見て進んでゆくと葉山中学校の校舎と運動場が見えてくる。
  小刻みながら結構急な登降が続く。
最後は鎖の手摺のついた長い階段を登って189m 峰の肩に上がる。
  登り切った時には息が弾んでいたが、それを先読みしていたかのように、道端にベンチが置いてあった。
まだ先が長いので立ち止まらずに先へ進む。
  もうすぐ頂上と言うあたりで道が分かれている(左)。
左に行くと頂上に立っているアンテナ鉄柱のの脇から左に曲がり、森戸川谷が山間から平地に流れ出す所にある大山集落に下る。
  右の道に入って行くとすぐに学生風の若い男に遭った。
ワンゲル部員か何かで、トレーニングに歩いている様だった。
  このあたりの道はハイキングルートとして整備され、幅広で良く踏まれているので至って歩きやすい。枝道も多いが太さと踏まれ具合が違うので間違える恐れはない。
葉山小バス停への分岐を示す道標を過ぎるとすぐに右下の方からゴミ処理場の機械音が聞こえてくるようになる。
  間もなく左のような分岐点に着いた。@
幅広の道はまっすぐ伸びているが折り返すような感じで細い道が左に分かれている。
角に "10番" の山火事防火看板が立っていてその左横の立木に、"三浦アルプスを経て田浦梅園へ3時間" と記した黄色いプレートが取り付けてある。

"三浦アルプス縦走路" は、これまでに比べてグッと狭い笹薮の間の道だ(左)。

  暖かい土地の山の特徴である常緑樹の多い密生林と笹薮とが視界が妨げているが、時々、右側の下山川谷の向かい側に横たわる大楠山の山並が見えたりする。

  少し進んで山の北側に入った所に林の隙間があって、二子山の下ノ山とその向うにアンテナ鉄塔を乗せた上の山が見えた(左)。
  一箇所左に分かれる分岐が紛らわしくて、首を傾げながらも誘い込まれかかったがすぐ先の倒木に "倒木で通行不能" と記してあったのでもとに戻る。
誘い込まれて入る人が多いと行き帰りで二度踏まれることとなり、入口の部分が本道よりかえって明瞭になることがある。

  ひと登りして着いた高みに、ニ体の石碑が立っていた。A
右の大きい方には馬頭観音像が刻んであって、かつての交通路であったことを示している。

楠か、枝張り雄大な大木が二本立っていた。

  観音像のピークから10分近く進んだ所に、左のような測量基準点があった。B
手前の林の隙間からは、近づいて来た畠山周辺の稜線が望見できる。
ここは東走してきた尾根筋が東北方に向きを変える160m 圏のピークだったと思われる。


  両側の笹薮が濃密になって周りが見えず、やや単調になった所を進んで行くと約10分で左のような標柱の立つ分岐点がある。C

  標柱のマジックインキの文字が書いたり消したりしてあって判りにくいのだが、どうやら右手の道は、"新沢バス停" への下降路らしかった。

   直進して小さな上下を繰り返し、まだかまだかと言う感じで進みつづけ、約15分で森戸川二俣への下降点に着いた(左)。D

  この標柱は2週間前に通った時に見たばかりだからはっきり見憶えがあって間違える恐れはない。

迷うことなく標柱の前で左折して、笹の間を急降下した。

ルートはすぐに尾根に乗って緩やかになり、3分ほどで中間ピークに着いた(左)。E
"連絡尾根" で要注意な場所のひとつで、樫(?)の大木の脇から右に下って行かなければ二俣に着けない。
  標柱が立っていて、"右森戸川林道" と記しあるから余程ウッカリしていないかぎりミスはしないだろう。



  しばらく下ったあたりから急降下が始まる。
周りの藪が濃密で高度感がなく、手掛りにもなるので緊張する事はないのだが、一部が非常に急な岩混じりの細尾根になっているので注意が必要だ。

  左下から水音が聞こえてくると傾斜が緩み、すぐに二俣の小広場に飛び出した。F
  熟年三人組が休んでいた。
茅ヶ崎ハイキングクラブの人達で、春の行事の下見にきたのだと言う。
ミニパンやゆで卵を食べながら駄弁った。
  逗子駅から歩き出して桜山を越し、森戸川林道を歩いてここに着いたところだそうで、これから中尾根を通って主脈に出たあと、鷹取山まで行くのだと言う。

  一般ルートとはいえない部分も含むロングルートを大勢の人達を連れて歩くのかと、疑問に思ったが余計な事は言わず、私も中尾根に行くので途中までは一緒ですね、とだけ言った。

  軽食の後、食休みをしているうちに三人組は歩いていった。

  暫く間合いを計ってから出発した。

  二子山への入口に入って流れを渡った所で右に分かれた道の始まりに、左のような "十" 字に六把峠と書き添えた標柱が立っていた。

  南沢の右岸を進んで行く道は予想していたようなか細い踏跡ではなく、ごく普通の山道で、広まったところには左のような丸太の腰掛けまであった。
  二俣から15分ほどで沢が分かれ、そちらに入ってゆく道が分岐していた。
分岐から少し入った所で三人組が進路の相談をしている。
時間的にまだ全然手前だと判断したので支流の流れを渡って直進した。
  道が大分細まって踏跡程度になり、所々崩れかかって注意が必要な場所も出てきた。
三人組があとに随いてきているようで、時々話し声が伝わってくる。

  分岐から10分足らずの所で左のようなロープを張り渡した沢溝を横切った。G
狭い岩溝だがひと跨ぎで越すにはちょっと幅が広すぎるので溝の中に足を置こうとしたら滑りやすそうな濡れたスラブになっていた。
的確な安全処置に感心した。

  ロープを過ぎて3分ほどの所に左から出合うゴーロ状の沢溝があった(左)。H

  谷沿いの踏跡はさらに奥へ延びているが、どうやらここが尾根への上がり口らしい。
シダや笹が被さっていて一見それらしくない雰囲気ではあるのだが、なんとなく人が登り降りしている形跡がある。

"山勘" が命じるまま、このゴーロに入った。
しばらくすると三人組が入り口に来て何か話し合っている声が伝わってきた。

  登るにつれて傾斜が強くなったがそれと裏腹に踏跡がはっきりしてきた。
三人組はどうしたのか、全く声が聞こえず、あとから来る気配はない。

  10分足らずで、ポンと言う感じで六把峠の十字路に飛びだした(左)。I

谷から登ってきて乗越している道と、尾根上の道とが十字に交わり、右に行けば田浦・畠山へ、尾根の岩溝を通って裏側に降りて行けば沢道からハイキングコースへ行けると記してある。

  外尾根にも良く似た特徴の場所があり、その記憶とゴッチャになって山勘が混乱し、左手に進みかかったが、僅か行った所で見えた景色の送電線の位置から、前回中尾根に迷い込んだ時に来た所だということを思い出した。

  反転して進む中尾根上部は左のように明るい疎林の間の道で非常に気分が良い。
  鉄塔の立つピークを越し、さらに金網製の階段を登ってふたつ目の鉄塔を過ぎると乳頭山は近い。

  田浦から登ってきた道を合わせ、金網の階段を登ると乳頭山頂上の北端だった。
ひと月の間に三度も来てすっかりお馴染みになった頂上だが今日は誰もいない。
  横須賀港(下)を眺めながら三人組が来るのを待ってみたが、一向に気配がないので出発した。


  この先は何度か通って勝手知ったルートだ。
フィックスドロープのある岩場を二ヶ所、慎重に下ったあとはノンビリ稜線漫歩になる。
  20分足らずで沼間坂上分岐、さらに10分程で馬頭観音のある三又路に着いた。J
中尾根の六把峠を乗越していた沢道はどうやらここで一般ルートに合流しているらしい。
  馬頭観音からさらに十分ほどで東逗子駅への下降路分岐点に着いた。
  偶然二子山の方から歩いてきた三人組と再会した(左)。K
「あの後、どうされましたか?」、と聞いてみたら、ゴーロの入口から元に戻って双子山の方に行き、尾根伝いにここまで来たという返事だった。
ハイキングクラブの世話役のルートの下見なのに地形図を持たず、逗子市観光協会の案内図だけだった。

  それなのにバリエーションルートの中尾根に大勢の一般人を連れ込むとはどうした事なのか、疑問に思ったのだが、どうやら自分達にとってさえ大変だと感じてギブアップしたようだ。

  分岐から東逗子の方に歩き始めたら後を随いて来たので、「アレッ、鷹取山の方には行かないんですか?」、と聞いてみたら、そちらも止めることにしたという。
沼間坂上の前後のルートがゴチャゴチャしていて大勢で歩くには向いていないから、結論的には良い方向で纏まったようで、なにはともあれ結構だと思った。

  分岐点から10分あまり歩いた所に "双子山いこいの丘" と記した看板の立つ見晴らしの良いこぶがある。
この前は薮原だったが今度は綺麗に伐り払われてサッパリした休み場になっていた。
  コブ上に設けられた丸太ベンチにザックを下ろし、これから一年ほどの間はお別れになるだろう景色に別れを惜しんだ。
鷹取山から沼間坂上を経てこちらに繋がっている部分の複雑な起伏は、ひと通り歩いて細かな様子が分かった上で眺めても、混み入っていてルートの所在が判然としない。


いこいの丘から眺めた鷹取山から沼間坂上への連なり(クリックで拡大します)

  憩いの岡から先の道はすっかり里山ムードになる。
幅広の道をノンビリ気分で歩いて新興住宅街の中の登山口に着いた。
小学校の脇から通りに出て交差点の信号を渡ると東逗子駅だ。
  この山行の "三つ目の美味しい" のため、帰りをひと電車遅らせ、駅前の "長寿庵" に入った。
若い女将さんはシッカリ憶えていて、いつもの注文に納得顔で、「鴨セイロォー」と、調理場に声を掛けた。

☆おわりに
    2月初旬から始まって5回に及んだ三浦への山行は、山域の尾根の幹と太枝のあらかたのトレースを完成して一段落となった。
温暖で雪がない上に、近くて交通が便利なため、厳冬期にも手軽に楽しめる低山だから、年取って厳冬期の高山に行き難くなった年寄り山屋の無聊を解消するのに最適だ。

標高200m 内外の超低山だが、阿武隈と似て、細かく起伏している複雑な地形であるため、変化に富んでいる。
さらに、市街地に近いのに自然な森林が残されていることがこの山域を、"低さを越えて" 面白くしていると思う。

  あらかたは歩き切ったとは言え、南沢の最上流部の詰め上げと北沢の遡行、中尾根の末端からのトレース、双子山下ノ山から阿部倉山など、細かいく見れば、まだ幾多の未踏部分が残っている。
これらは、来シーズン以降の楽しみだ。

☆ルート図
    今回のルートはやや複雑で、バリエーション的な要素もあるので、篤志家向けにルートマップを作成した。
サムネイルなのでクリックすると拡大する。
下図として地理調査所の "電子国土" 地形図画像を利用した。
縮尺は、右下の800m スケールによって判断していただきたい。


  図上の○数字は、本文に挿入したそれとが対応している。

  地形が複雑で迷いやすく、局部には急峻な地形があるから山慣れた方が自己責任で利用されるようお願いしたい。