北奥羽[白神岳、登山口-蟶山分岐-頂上] (2005.8.27-28)


☆地形図(2万5千分1): 十二湖(深浦1号-2・4)、白神岳(弘前13号-4)、二ッ森(弘前14号-3)

☆まえがき
  弘前駅から五能線のリゾートしらかみ2号に乗り、沿線を観光しながら移動して白神山麓の十二湖駅に行った。
宿舎は6、7Km 離れた陸奥岩崎駅付近の白神温泉静観荘。
そこに二泊し、サブザックの軽装で白神岳頂上へピストンするプランにした。
本当は頂上の小屋に泊まって大峰経由十二湖へ縦走したかったのだが、長途の後半で避難小屋に泊まるための食料などの準備に自信が持てなかった。

白神岳頂稜、石祠付近から津軽の海岸線  (クリックすると拡大します)

☆行動記録とルートの状況


月27日
<タイムレコード>

    弘前駅[14:33]=(リゾートしらかみ2号)=[17:05]十二湖駅=(旅館送迎車)=陸奥岩崎白神温泉{静観荘}

弘前から十二湖までの移動に利用したリゾートしらかみ2号は、季節運行の観光列車で、2時間半掛るスローな旅だった。
ディーゼル列車だが特大サイズの窓になっていて、鯵ヶ沢から先の海岸沿いの線路を走る所では津軽の海岸の景色を楽しんだ


  泊まり場は十二湖駅から6、7Km も離れた陸奥岩崎駅の近くの宿の白神温泉静観荘だった。
温泉とは言え、白神岳登山口から10Km 以上も離れている所に泊まる事になったのは次のようないきさつがあった。

  十二湖駅の近くに適当な宿はないかと、役場に問い合わせたら "網元静観荘" を紹介してくれた。
早速、予約の電話を掛けたら、"網元" の方は休業中だから親戚(?)の "白神温泉静観荘" に泊めてあげる、十二湖駅へは車で迎えに出るから心配ないからと、かなり強引にたらい回しされてしまった。


  岩崎にはタクシーがあるようだし、登山口まで行く路線バスも通るようだからマァいいかと二晩の宿泊を予約してしたものの、ちょっぴり不安だった。
結果はオーライで、アプローチにはバスが使えたし、山から離れているお蔭で前の道路から白神岳が良く見えるという、思わざる利点もあった。(左)

  時期的な理由もあったのだろうが、空いていてわがままが利き、特にありがたかったのは女湯の脱衣場に置いてある洗濯機の脱水槽を自由に使わせてもらえた事だった。

月28日
<タイムレコード>

    白神温泉-岩崎支所役場前[6:16]=(弘南バス)=[6:45]登山口(6:50)-山道入口(6:55)-二股分岐(7:30)-蟶山分岐(8:55)-推定875m 地点(9:25/30)-森林限界の笹原(10:25/30)-白神岳(10:55/12:00)-大峰十走路からの分岐点(12:20)-尾根上展望点(12:35/40)-小休止(13:20/25)-蟶山分岐(13:30)-二股分岐(14:10)-(14:45)登山口休憩小屋[15:40]=(タクシー \2980)=[16:00]十二湖-青池-(17:00)ビジターセンター[17:08]=(弘南バス)=[17:30]岩崎支所前-白神温泉{静観荘}

◆ すぐ近くの役場前にバスの乗り場があって、朝早く一本だけ運行されている白神岳登山口行きの便に乗れた
朝食は握り飯にしてもらったがこれはデイパックに納めて昼飯にまわし、朝食は出発前に目覚ましのコーヒでミニパンとチーズを食べた。
好天の日曜日だったが客は少なく、山登りは十二湖から乗って来た若者ふたりだけだった。

  バスの終点は以前は林道末端だったようだが、今は一段下に戻っていて3、40台停められそうな駐車場に面した大きな休憩舎の前だった。(下)
休憩舎の内部には広広とした板張りの床があって、給水設備やトイレも完備し、食料と寝袋を持ち込めば快適に泊まれそうな感じだった。
地元の宿屋の客が減らぬよう配慮してか、休憩だけで宿泊は禁止だと記した掲示が出ていたが、実際には、車で前夜遅く着いてここを仮眠所に利用する人は多いようで、 駐車場には10台ほどの車が停めてあった。

  
休憩舎の左脇から車道に上り、折り返していった一段上が元の(?)駐車場で、その横手に山道の入口があった。(下右)
登山道の整備は行き届き、まるで首都圏のポピュラーなハイキングコースのようだった。
二俣分岐から左の斜面に上がって行くと尾根の斜面を斜上して行くようになる。

  二、三度水流を横切って行った先に "最後の水場" と記したプレートがあった。
分岐からひと歩きしているのでザックを下ろした。
喉を潤し、顔を濯いだあと、テルモスに給水した。

  十分休めたのでそろそろ出かけようとしていたところへ熟年夫婦が登ってきた。
立ち止まるかと思ったがそうはせずそのまま歩き過ぎた。
どうしてかなぁ、と不審に思ったが、ともかくそのあとに随いてみた。
すぐに分かったのは、物も言わずに一生懸命のハイペースでとても随いて行けない事だった。
自前のペースに戻す。
  ゴーロ状の所を過ぎ、数度折り返して高度を稼いでゆくと、ブナの大木が林立する平坦地に出た。
100m あまり平らに進んだところからもうひと登りすると蟶山分岐を示す道標の立つ尾根の上に出た。(左)
  尾根は長く、所々に僅かな下りを交えて緩やかに登って行く。
多雪地域の常で泥濘った所があるのは当然なのだが、腰を下ろして休める場所が見つかり難いのは困る。

  緩やかに登って977m ピーク上の道端の苔に腰を下ろして休憩。

  もうひとつ、1000m 内外のピークを越した所に小さな鞍部があって、左のように "この先歩行注意" と記した道標が立っていた。

  主稜へのやや急な登りが、ここから始まった。
注意喚起の道標が立っていたのでどこか危険個所があるかと思いながら進んでいったが木道やロープでしっかり整備された登りやすい道で、別段どうと言うこともない。
強いて言えば積雪期に登降する際には注意しないと滑落する危険もあるかなぁ、と言う程度だった。

  登って行くにつれて周りの木が低くなり、這松の多い低潅木と笹のミックスになった。
一挙に視界が広がり、ゆったりした起伏を描いている頂稜が見えるようになった。

  笹の斜面に出た所で下を見下ろすと登ってきた尾根から霧が棚引き、その下の方に海岸線が見えていた。

  やがて頂稜にある小屋(実はトイレ)が見えてきた。(左)

  頂稜まであとひと登りだと、頑張っていると木道が出てきてその先に立っている道標が見えた。

これは頂稜に立っている道標で右は白神岳頂上、左に行けば大峰から崩山を経て十二湖に行ける縦走路だということを示している。



  右に折れ、ほとんど平らな道を頂上に向かって進んだが、思ったより距離が長く、時間が掛かった。


  道の右側のトイレと、すぐ先左横にある避難小屋を過ぎた所から僅か下って登るとようやく頂上広場に出た。

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  7、8人休んでいた中に水場で遭った熟年夫婦がいた。
3時間で登ったと聞いてびっくりした。
ただ、すぐあとで思ったことは、ろくに話もしないハイペースで急ぎ登って楽しい山登りだったのかなぁ、ということだった。

  熟年者の山登りはレースではない。
各自、自分にとって最も快感が得られる歩き方をすればよい。

  近在からの6人パーティ、途中で追い越してきた世田谷の女性二人組、前日、岩木山の頂上で遭った鳥取の中年男など、居合わせた者で楽しい頂上パーティになった。
  インスタントコーヒ、胡瓜と味噌をご馳走になったが、とても美味しかった。
  1時間あまりもの間、油を売ったあと、ようやく下山に掛かったが、歩き出した所でまず小屋の様子をチェックした。
小さな小屋だが内部が三層に区切られ、空間を立体的に利用できるようになっていて、大きさの割に多人数を収容できそうだと思った。
下右の写真は下段の右半分だけを示している。
内部が綺麗に清掃されていたのも良かった。
水場は50m 程の近くだと言う。
僻遠の山の小屋で手軽ではないが、機会があったら泊まりに来てみたいなぁ、と思った。

  下降点を左折し、急な部分を下りきって尾根に乗るとブナ林の中の穏やかな道になる。
途中にある小ピークの登り返しが気になっていたが案外楽に乗り切り、蟶山分岐に着いた。
そこでは立ち止まらず下り続けて "最後の水場" についた。

  すぐあとから "岩木山男" が来たので一緒に喉を潤したり顔を漱いだりして小休止。
あとは駄弁りながら登山口まで歩いた。
鳥取から延々、ひとりで車を走らせてきて、あちこち登り歩いているのだと言う。
長途をよく一人でドライブしてきた物だと感心。
車を使う山登りは、行きは問題ないとしても、山で疲れた状態での帰り道が大変だろう。
山中の遭難より帰りの道路での交通事故の方がよほど心配だ。

  海岸近くから1,250m 近くの頂上まで登高差があるだけでなく、距離も結構長い山だったが、その割には疲れず登山口に降り着いた。

  夕方の帰りのバスまで2時間もあるので、十二湖に立ち寄って帰ろうと考えた。
タクシーを呼ぼうとしたが携帯が繋がらない。
休憩舎の中に衛星電話があったのでそれを使ったが何とか連絡をつけるのに百円硬貨を何枚も使う必要があった。

  車を待つ間、濡れタオルで身体を拭い、朝から担ぎまわっていた握り飯を食べて、"観光" に備えた。
  少し待ったあとで来た車は4時前に十二湖に着いた。

  谷間に並んでいる沢山の池は江戸時代の地震の山崩れで谷が堰き止められてできたのだそうだ。
  車から降りて少し歩いた所に大町桂月の歌碑が立ち、その横に大峰、崩山からの出口を示す道標が立っていた(上左)。

  石碑の所から一段登ると青池がある。
これが最上流に当る池なのだそうだが名の通り神秘的な青色をしている。
なぜこのような色に見えるのか理由はよく分かっていないらしい。

  5時過ぎに来る帰りのバスの時間を見計らって池沿いの道路を歩いた。
  ビジターセンターへの途中、観音像が立つ水場があった。
長寿清水と言う名に違わず、非常に美味しい水だった。

  5時半過ぎに宿に戻った。
まずテレビのスイッチを入れて天気予報をチェックした。
明日は乗り物を乗り継いで南八幡平の藤七温泉まで行けばよいのだからあまり問題にはならない。
むしろその翌日の縦走のときに天気がどうなるかがポイントだ
パッとはしないがそこそこの天気になることを確認したあとで風呂に入った。

  ここは地熱で暖められた海水が出てきていると言った感じの塩辛い温泉で、身体が温まる感じのする湯だがこの季節に、長く入っている気にはなれない。
早々に出て身体を洗い、汗まみれのシャツを濯いだ。
昨日と同様、女湯の脱衣場の洗濯機で脱水機を使わせてもらい、半乾きにして部屋に持ち帰った。
ふた晩続けてこれができ、"悪臭予防" にとても有効だった。


☆おわりに
     白神岳はこの山行の主要目的のひとつだった。
遠くて行き難いが良い山だった。
落ち着いた空模様に恵まれ、ゆったりした気持ちで登ってこられ、大いに満足した。
帰りに十二湖に立ち寄れたのも良かった。
機会があったら残雪・新緑の時期を選んで再訪し、頂上の小屋に泊まってみたい。

  タクシードライバーに聞いたところでは、登山口休憩舎の上の林道に上がれば携帯が繋がるそうだ。