直線上に配置

箱根 神山、駒ヶ岳 (2001.1.24)

☆ 期日: 2001.1.24 日帰り 単独
☆ 地図: 箱根(横須賀13号−4)
☆ 行程: 宮崎台=中央林間=相模大野=小田原=強羅[9:10]=[9:20]早雲山(0:55)神山(0:35)十字路(0:35)駒ヶ岳(1356)=[ケーブルカー]=駒ヶ岳登り口(0:40)芦の湯[14:25]=[15:15]小田原[15:52]=[16:59]町田=長津田=宮崎台

☆ 行動記録
真近かに富士を望み、駿河湾を見下ろしながら頂稜を歩ける箱根は首都圏では最高の展望登山が楽しめる山域だ。
ここ数年の間、冬になると必ず一度か二度は出掛けて外輪山の主要部はほぼ全部トレースしたが、芦の湖の脇に聳えている中央火口丘のピーク: 神山、駒ヶ岳にはまだ登っていない。 特に神山は標高1437.9m で箱根火山の最高地点だ。 機会を見つけてぜひ登って置きたかったのだが、北側の中腹を横切ってゴンドラが通っていたり、駒ヶ岳の頂上直下へはロープウエイやケーブルカーが登ってきていたりして観光地化が著しく、もうひとつ足を向ける気になれなかった。
 1月19日にソウルで韓国初の IMS ワークショップが開かれ、先行している日本から2件の講演が招待された中で久し振りの英語プレゼンを行ったのだが事後のQ/Aも含めてなんとか無事に切り抜けた。 まさに案ずるより生むが易しだ。 雪の降りしきる週末の夕方に帰国、その後始末もひと通り片付いたので、仕事疲れを取るための山歩きに出掛ける事にした。
 毎日の出勤からはもう解放された訳だから山行日は週日、週末いずれでも構わない。 もっぱら天気の良し悪しによって期日を選定すればよい。 冬は適度の季節風が吹いている日の方が大気が清透になって展望が良くなるものだが、もうひとつ、黄海上の低気圧が日本列島に接近しつつあるシチュエーションでは、冬型気圧配置が緩んで季節風が弱まり、一時的ながら穏やかな好天日となる。 インターネットで気象情報をチェックしてみるとちょうど良いタイミングでそのような気圧配置が発生すると言う予報が出た。 急遽その日を山行日と定め、準備を整える。
 当日の朝、まだ真っ暗な5時過ぎに起き出して外を見る。 星が瞬いていて予測通りの好天日になろうとしている事を確認できた。 テルモスに熱い紅茶を詰め、目覚ましにコーヒーを飲んで6時過ぎに家を出る。 冬至からほぼ一ヶ月経ってかなり日が延びている筈なのだが、まだ東の空が明るみを帯びてきているだけだ。 それでも宮崎台で乗った電車には、遠くに出張する様子の会社員など、まだこの国に生き残っている働き者達が大勢乗っていて、遊び支度でいるのが些か憚られる。 中央林間で小田急線に乗り継ぐ頃にはそろそろラッシュが始まり掛けていてぼんやり通路を歩いていられない(6:41/46)。
 相模大野(6:51/53)で乗り継いだ小田原行きも座席は学生や通勤客で塞がっていて海老名までは通路に立つ。 以前見掛けた小田原駅構内の店で麺類を食べる心積もりにしていたので改札を通ってJR線改札の方へ行って見たのだが食堂はなくなってツーリストオフィスになっていた。 仕方なく小田急線のホームに戻る途中、通路の売店で小さ目の弁当を買う。 ホームに上がると箱根登山鉄道の電車が端の方から発車しようとしていたので急ぎ飛び乗る(7:55発)。
 こちらも通勤客が多くて空席がなかったが、大部分は湯本駅で降りてしまい、後には中国語で話し合っているカップルや初老の女性グループなどだけが残った。 車両の隅に移動して弁当を食べる。 8:48に強羅に着く。 ケーブルカーは出たばかりで9:10の次の便までかなり待たなければならない。 時間つぶしに駅前広場を歩く。 土産物屋がボツボツ店開きをしているが、冬の週日の朝で閑散としている。 屋並みの外れでビルの取り壊し工事が行われていた。 学校かなと思いながら近づいてよく見るとホテルだった。 職場の者が打ち揃って慰安旅行に出掛けるという習慣が廃れた所へ不況続きが重なって規模の大きな宿泊施設の経営が難しくなっているようだ。 長すぎる待時間を持て余してケーブルカー乗り場に行く。 誰も乗っていない車両の床の階段を登りつめた最前部の腰掛けに座って発車を待つ。 暫くすると中国語のカップルや熟女グループが三々五々乗り込んで来て、発車時間になったときには15、6人になっていた。
 10分足らずで早雲山駅に着く。 ひと息入れ、駅の出口の向こう側に立っている道標の横から登山道に入る(9:25)。 5cm 位の雪が積もっていてやや滑りやすい。 ストックは大きめのリングの付いた冬山用のを持って来たのだが、スパッツを忘れてきたのが気に掛かる。 観光地にふさわしくルートはよく整備されている。 4日前の週末に降った雪には明瞭なトレールが刻まれている。 今朝方も登って行った者がいるらしく新しい靴跡が記されている。 二種類のパターンがあるので先行しているのは二人組に違いない。 登るにつれて積雪量が次第に増えてきた。 昨日の夕方辺りにも幾らか降ったようで、まわりの潅木の枝に雪が乗っている。 久し振りに重い冬用革登山靴を履いているのと今シーズン初めての雪道のためピッチが上がらないのだが、時々立ち止まって後ろを振り返ると、その度に外輪山の背が低くなり、その裏側からまず富士山、ついで丹沢の山々が雪で装った姿を見せてきた。
 さらに登り続けているうちに尾根が痩せてきて傾斜が緩む。 潅木の隙間から右下に広がる仙石原が見えて来た。 ゴルフ場のフェアウエイが白いパッチ模様になっている。 尾根の幅が広がって来ると登りと下りの道が分かれる。 下り道は誰も通った痕跡がなく、雪の詰まった窪みになっているだけだが、シーズン中にはそうしなければならないほどの大勢が登降すると言う事なのだろう。 早雲山の平頂を越した所で駒ヶ岳へ直行するお中道ルートを左に見送って尾根の北側の窪に入る。 雪の深い山腹を5分あまり横切って行った所で大湧谷から登って来た道に突き当たる。 この辺りは30cm 近い積雪があり、大湧谷から登ってきたトレースも見えない。 平坦になった道を進み、冠ヶ岳への道を分けて左手にひと登りすると神山の頂上に着く(11:40)。


                                                             神山の頂上

 一面雪に覆われているが、幅3m 奥行き7、8m の切り開きの中に三角点標石と道標と説明看板とがある。 山腹に噴煙を纏った山塊の盟主は麓に住む人々の信仰の対象だったと記されているが、周りが潅木に囲まれていて期待していた展望は得られない。 隅の岩塊の上の雪を払って腰を下ろす。 発汗で失ったイオンを補うため、ポカリスエット入りレモンジュースを飲み、胃の負担が少ないカロリー源となるバナナを食べる。 ここまで登ってくるのに標準タイムの2倍を上回る長時間を要したが久し振りの静かな雪山はなかなか雰囲気が良くていい気分だ。 11:55に出発する。 下り口に潅木の隙間があって北方への展望が開け、仙石原、金時山、富士山などが美しく望まれた。


                                                          神山頂上からの展望

 神山からの下りは雪が深く、剥き出しの毛のズボンの裾が雪まみれになる。 潅木の間から駒ヶ岳ロープウエイの頂上駅の大きな建物と駒ヶ岳頂上の神社の屋根が見えた。 さらにかなり下ってようやく駒ヶ岳との間の最低コルに着く(12:25)。
 ここは広い雪原になっていて防ヶ沢から登ってきて早雲山の方へ行く乗越し道とふたつの山の頂上をつなぐルートとが交わる十字路になっている。 道標の先でふたたび潅木の間に入り、左手に緩く登ると沢状の岩っぽい溝に入る。 間もなく前方にロープウエイ駅の大きな建物が見えて来た。 左手に登って行けば駒ヶ岳の頂上だが踏み込んで見ると膝近くまでもぐるのでスパッツなしでは無理なようだ。 元の道に戻って直進し、建物の横手に出た。 建物の反対側に行って見ると遊歩道が除雪してあった。 敷石の上に出てヤレヤレとズボンの雪を払っていると後に人の気配を感じた。 振り返ると、建物のドアの前に熟年男二人が座っている。 「神山に登ってきたのはお宅さん達ですか?」と聞くと「そうですよ」という返事。 「雪が踏んであって助かりましたよ」と礼を言う。 こちらが先の方に行こうとしているのを見て「そっちの方に道はあるんですか?」と聞く。 こちらはケーブルカーを利用するつもりなので「ええ」とややあいまいな返事をしただけで別れる(12:50)。


                                                    駒ヶ岳から芦ノ湖と相模湾

 広場を縁取っている塀の脇まで行くと、足元の芦ノ湖から伊豆半島が縦観される。 伊豆半島の左側は相模湾、右側は駿河湾だ。 数駒の写真を写し、ケーブルカー駅に行く。 冬の間ロープウエイは運休になっているがケーブルカーの方は15分間隔で運行されている。 せっかく雪の中をここまで来たのだから駒ヶ岳神社に参詣して行く事にする。 だだっ広い感じの駒ヶ岳頂上に赤塗りの立派な社が立っている。 真冬だと言うのに戸が開かれ灯明さえ点されていたのに驚く。 賽銭をあげて今日の楽しい山歩きを感謝する。 社殿の横からは丹沢山塊が真近かに眺められた。 一番左の御正体山から、大室山、檜洞丸、蛭ヶ岳を経て丹沢山、塔ヶ岳、大山への頂稜の連なりはなかなか形がよい。 その右手、小田原の市街の向こう側から先の方へ延びている海岸線が綺麗な曲線を描いている。


                             駒ヶ岳から外輪山(早雲山など)越しに丹沢山塊を望む

 ブラブラ歩いてケーブルカー駅に戻り、切符を買おうとすると、雪のせいで今日は下の駅にバスが来てないから国道まで歩くかタクシーを呼ぶかしなければばらないと言う。 タクシーの電話番号も教えてもらったが、順調だったら箱根町から屏風山を越して帰ろうと思っていた位なのだから国道まで歩いてしまおうと考えながら13:30のケーブルカーに乗った。 他に乗客はなく、車両の最前部の運転台の横の座席に座り、オペレータの観光案内を聞きながら山を下る。 左の芦ノ湖に突き出した半島のこちら側の元箱根と向こう側の箱根町の集落が良く見える。 正面の下の方にモコモコと盛り上がっているのは二子山で、左下には湯の花の温泉の大きな建物とゴルフ場がある。 5分あまりで下り着いた登山口駅は、広い駐車場の中に立っているガランとした建物で何もなく、期待していた蕎麦どころでない。 極く僅かな人数でケーブルカーを運行しているようで、オペレータが降りてきて改札口を明けてくれた。 国道に出る道を教えてもらって歩き出す(13:40)。
 しっかり舗装されていた幅広の車道だが、日陰の路面は凍結した雪にビッシリ覆われていて走ってくる車もいない。 40分位掛かるでしょうと言われた通り、14:20に芦の湯のバス停に着いた。 ポストの時刻表を見ると箱根と湯元、小田原との間には頻繁なバスの便がある。 間もなくやってきた小田原行はかなり混雑していて何人かが通路に立っていたが、ひと走りした小涌谷でかなりの人数が降りて行き、その先は座っていられた。 15:10頃小田原駅前に着く。 駅前に地下街への階段があったので降りてみると、こじんまりした感じの良い地下街で、横手に美味しそうな蕎麦屋が見つかった。 注文して暫く経ってから出てきた "おかめとじ" は期待に背かぬ味で、美味しくカロリー分と塩分の補給をする。 15:52の新宿行き急行に乗り、いくつかの買い物をするため、久し振りに町田を回って夕食前に家に帰り着いた。

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